先日開催されたアカデミー賞授賞式のレッドカーペットに、ウエストの下から大きく開いたヴァレンティノの大胆な脚見せドレスを纏って現れたフローレンス・ピュー。彼女はこれまでも、ファッションのためにリスクを取ることを、恐れたことがない。というよりは、むしろ、彼女のドレスについて人々が論議することを求めているように見える。
フローレンスはボディ・ポジティブの推進者として、様々な場で女性が身体を見せる自由について発言して来た。2019年に映画『ファイティング・ファミリー』でWWEの女性プロレスラーを演じたときには、『The Evening Standard』のレビューに「プロレスラーよりも腿が太い」と書かれたことにTwitterで反撃。
「あらあら。私の分厚い太ももについて書くことは、ハリウッドのサイズと体型の問題を解決しません。実際、それも問題の一部です。人々が、この映画から、私の太ももよりも多くのものを学んでくれることを願います」
そして2022年7月には、ヴァレンティノのオートクチュールのショーのレッドカーペットにピンクのシースルードレスで登場。ノーブラでバストトップが見えるこのドレスに、SNSでは「胸が小さい」などと、批判の声が。それに対してインスタグラムで、「あなたたちはなぜそんなに胸を怖がっているの?」と反論。さらに「見ていて興味深いのは、男性はいとも簡単に女性の肉体を公共の場で、誇らしげに完璧に破壊することができるということです。もしかしてあなたたちの肩書きやEメールの自己紹介にも、それが書いてあるのでは? 女性が見ず知らずの他人から身体について欠点を聞かされるのは、これが始まったことではない。問題は、男性の何人かがこうまでも下品になれるということです」
ヘイターたちに「大人になりなさい。人を、ボディを、女性をリスペクトしなさい」と諭した彼女の姿に溜飲が下がる思いをした女性は多かったはずだ。私たち女性は物心ついたときから、常に「やせすぎだ」「太った」「胸が小さい」など、体型を評価され続けて来たのだから。その経験がない人なんて恐らく、ひとりもいないだろう。
その後もフローレンスは去年10月にはパリコレで再び、ヴァレンティノのシースルートップスでバストトップを披露し、今月開催されたガバナーズ・アワード授賞式では、シースルースカートでショーツが丸見えのルックに挑戦。ボディ・シェイマーに挑むかのように、センセーショナルな肌見せスタイルを選び続けている。
米VOGUE誌のインタビューで彼女はこう語っている。「もし着ていてハッピーな気持ちになれるならそれを着ます。もちろん、人々を攻撃したいわけではありません。でも私が考えるポイントはこうです。私の乳首は、あなたをそこまで嫌な気持ちにさせるものなのですか?」
女性たちが好きなときに自分たちの身体を見せる自由と見せない自由を獲得するため、今日もフローレンスは戦い続ける。女性だからという理由だけで外見を批判され、体型で優劣をつけられる——そんな世界を、もう終わらせるために。
Text: Moyuru Sakai Editor: Toru Mitani