【日本市況】円全面安、雨宮氏に総裁打診報道-株高、長期金利は上昇
上野英治郎-
円下落、早急な金融緩和策転換への警戒感和らぐ-円安好感で株高
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長期金利上昇、雨宮副総裁の総裁就任は多くの人が想定、驚きない
6日の金融・証券市場は円相場が下落している。日本銀行の黒田東彦総裁の後任として政府が雨宮正佳副総裁に就任を打診したと伝わり、大規模金融緩和政策の急激な修正観測が後退した。円安を好感して株価は上昇、債券相場は下落(金利は上昇)した。
日銀次期総裁、政府・与党が雨宮副総裁に打診する案で調整-報道
6日の金融・証券市場の動き-午後3時過ぎ |
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為替
東京外国為替市場では円が全面安。雨宮氏に打診との報道を受け、早急に金融緩和策を転換するとの警戒感が和らぎ、売りが先行した。対ドルでは一時3週間半ぶりの水準となり132円台半ばまで円安が進行。
ただ、総裁人事にかかわらず政策修正の方向は変わらないとの見方は根強く、売り一巡後は下げ渋る展開となった。
クレディ・アグリコル銀行資本市場本部の斎藤裕司シニア・アドバイザーは「候補者の中では雨宮氏が一番ハト派との位置付けなので、初期反応は円売りになったが、まだ確定ではないし、ハト派とはいえ金融政策の正常化の道筋は変わらないとの見方が多く、時間の経過とともに円売りも収まってきた」と説明。
さらに欧州市場に向けては米雇用統計などの強い経済指標の消化がポイントになるとした上で、先週末から大幅に円安が進んだため「さすがに円買いも出ると思う」と話した。
【視点】ドル・円相場、見るべきは雨宮氏への総裁打診よりも米CPI
株式
東京株式相場は上昇。日銀人事を巡る報道で金融政策の不透明感が払しょくされ為替の円安が進行し、買い安心感が広がった。自動車や商社といった輸出関連企業を中心に値を上げた。先週末の米雇用統計や米供給管理協会(ISM)非製造業総合景況指数が改善したことから、素材やゴム製品など景気敏感株も買われた。半面、銀行株は安かった。米金利上昇が嫌気され、半導体関連などグロース(成長)株は弱かった。
SMBC信託銀行の山口真弘シニアマーケットアナリストは、雨宮氏が黒田総裁の金融緩和を続けるかは現時点で見極められないとした上で、急速な政策修正による円高を懸念していた向きからすると安心感はあったと指摘。人事を巡る金融政策の不透明感が緩和され上昇しているが、長続きはしないだろうと述べた。
銀行株が下落、雨宮氏に次期総裁打診報道-材料出尽くし感意識との声
債券
債券市場では新発10年国債利回りが一時0.495%と日銀の許容上限0.5%に接近した。前週末の夜間取引で米長期金利上昇を受けて下落した流れを引き継ぎ、売りが先行。その後も米長期金利が6日の時間外取引で上昇したことや、7日の30年国債入札に向けた売りが重しとなった。
次期日銀総裁就任を雨宮氏に打診したとの報道で金融緩和策の急激な出口戦略への警戒感が薄まっているが、相場を押し上げる動きにはならなかった。
SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは、債券市場では雨宮氏の総裁就任を想定していた参加者が多く驚きはない上、黒田総裁から交代すれば何らかの政策修正があるとの見方に変わりはないと指摘した。
雇用統計など米経済指標が強く、あすに30年債入札も控えて、債券市場には金利上昇圧力となったが「雨宮氏報道を受けて買いやすくなっている面もあるかもしれない」との見方も示した。
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