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主要閣僚続投で日銀緩和継続との見方、首脳人事もバランス重視か

更新日時
  • 黒田総裁の下では現状維持、急速な円安は望まずとの姿勢も不変
  • 日銀人事は前倒しの思惑も、出口急ぐ顔触れにならないとの見方

岸田文雄首相が実施した内閣改造では、鈴木俊一財務相や松野博一官房長官ら主要閣僚が留任となり、当面は金融緩和の継続で経済を支える日本銀行の政策運営に大きな影響はないとみられている。

  第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、主要閣僚の続投は「現状維持のフォーメーション」とし、経済政策に変化はないとみている。少なくとも黒田東彦総裁の下では現行の緩和策が維持され、為替について「急速な」円安は望ましくないとの認識が引き続き共有されるとの見立てだ。

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  与党が大勝した7月の参院選で、岸田首相は物価高対策と金融緩和継続の重要性を訴えた。投開票日の直前には、自民党最大派閥の長として首相を支えた安倍晋三元首相が演説中に銃撃を受けて死去。盤石とは言えない党内基盤も考えれば、大胆な金融緩和を掲げたアベノミクス路線からの急激な変更は難しい状況にある。

Bank of Japan Headquarters
日本銀行本店
Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは、注目していた政権と安倍派との距離感を含め、派閥のバランスを意識した人事と評価。事前報道通りなら金融政策への影響は想定されず、緩和政策の修正などについて「深読みする必要はない」という。日銀の正副総裁人事もバランスを重視した人選になる可能性が大きく、「金融緩和からの出口を急ぐような顔触れにはならないだろう」とみる。

  黒田総裁は来年4月、雨宮正佳、若田部昌澄の両副総裁は同3月に5年間の任期満了を迎える。正副総裁ら日銀の政策委員会メンバーは、政府が衆参両院の同意を得た上で任命する。

年末提示も  

  SMBC日興証券の丸山義正チーフエコノミストはリポートで、8月下旬から9月上旬と考えられていた内閣改造・自民党役員人事が前倒しとなり、岸田-鈴木ラインの継続が早いタイミングで決まることで、日銀人事は早期提示の可能性が高まると指摘。7月に就任した審議委員2人の人事が3月に提示された点も踏まえると「年末提示は十分に考えられるシナリオだ」としている。

  6月に閣議決定した2022年度の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」に2%の物価安定目標の堅持が盛り込まれ、かつ岸田首相は金融緩和の維持を掲げて参院選を戦っているとし、「政策スタンスでもめる可能性は低い」との見方も示した。

  ブルームバーグが7月のエコノミスト調査で最も有力な次期日銀総裁候補を尋ねたところ、41人からの回答(複数回答可)は雨宮副総裁が37で最多となり、前副総裁の中曽宏大和総研理事長が31、元財務官の浅川雅嗣アジア開発銀行(ADB)総裁が7で続いた。

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(閣僚名簿の発表を受けて更新しました)
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