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世界最大級のメタン排出抑制に向け、米国がトルクメニスタンと交渉中

  • 気候変動との戦いでの突破口か、米大統領の外交成果になる可能性も
  • 米高官ら、11月に始まるCOP28に先立つ発表を目指す

米高官らは、中央アジアのトルクメニスタンによる膨大なメタン排出の抑制を促す取り決めについて交渉中だ。これは気候変動との戦いで大きな突破口になるとともにバイデン大統領の外交成果になる可能性もある。

  米国務省高官や事情に詳しい複数の関係者によると、両国の高官は、取り決めについて真剣に議論している。老朽化した化石燃料インフラからの地球温暖化ガス排出を抑えるトルクメニスタンの取り組みを後押しするため、米国による経済面での支援や知見の提供が、この取り決めに加わる可能性もあるという。

  交渉は機密事項であることから、国務省高官らは匿名を条件に明かした。

  同高官らは数カ月以内に合意に至るとの楽観的な見方を示しており、11月に始まる国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に先立つ発表を目指している。また年内には試験地域で作業が実施される可能性もあるという。

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米航空宇宙局(NASA)のセンサーによりトルクメニスタン上空で観測されたメタン
 

  足元ではトルクメニスタンのガスの約7%が無駄になっていると、国務省高官は国際エネルギー機関(IEA)や世界銀行による試算を引用し、指摘した。

  誤って漏れるケースもあるが、市場にガスを供給するインフラが不十分な場合、故意の大気中への放出や燃焼も行われ得る。これは、米国はじめ他国でも依然として珍しくはないことだ。交渉の担当者は、そうしたガスをできるだけ多く回収することにつながる取り決めの締結を目指す。

  メタンは天然ガスの主成分で、大気中で当初20年間は二酸化炭素(CO2)に比べ80倍以上熱を吸収する。手早く比較的容易に対応できる対象として、多くの国で気候関連の課題のトップに掲げられている。

  トルクメニスタンのガスの回収を増やしても、エネルギーを得るための燃焼の際にCO2はなお排出される。それでも全体で見れば地球温暖化への影響はかなり小さくなる。

  ブルームバーグ・グリーンによると、トルクメニスタンのエネルギー業界から漏出・放出されるガスを全て回収し燃焼させた場合、毎年約9200万トン分のCO2を取り除くのとほぼ同じ効果がある。

重点は現場での行動へ

  2021年のCOP26を前に米国と欧州連合(EU)がメタンを最重要課題に据え、世界の排出量を30年までに30%削減する取り組みに最終的に約150カ国が加わった。公表から2年近くがたち、重点は参加国の拡大から、現場での行動へと移っている。

  環境団体クリーンエア・タスクフォースのメタン汚染防止グローバルディレクター、ジョナサン・バンクス氏は「掲げる数字では、もはや響かない」とコメント。「実際の金額、プロジェクトが必要だ。それが、われわれの前進を示す材料になる」と話した。

  トルクメニスタンは、地政学的に難しい面があるとしても理にかなったターゲットだ。世界第4位の天然ガス埋蔵量を誇り、主要な石油・ガス産出国の中では、単位産出量当たりのメタン排出量が最も多い。

  ケイロスSASが衛星データを分析したところ、19年以降、世界の石油・ガスセクターに起因するメタンの激しい排出の上位500件の大半は、トルクメニスタンにおけるものだった。

原題:Deal in Works to Halt Some of World’s Biggest Methane Leaks (1)(抜粋)

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