【サッカー日本代表】ダンヒルのスーツに学ぶ、一流の勝負服の作り方とは?

11月20日に2022サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会が開幕する。オフィシャルスーツサプライヤーとして日本代表を支えるのがダンヒルだ。戦う一流の集団であることを印象づけるスーツ=「勝負服」の魅力に迫る。
【サッカー日本代表】ダンヒルのスーツに学ぶ、一流の勝負服の作り方とは?

ダンヒルのスーツと日本代表の特別な関係

11月20日から2022サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会がはじまる。試合用の公式ユニフォーム同様に、『GQ JAPAN』が注目するのは日本代表選手が着用するスーツだ。選手たちが揃いのスーツを着て羽田空港や成田空港から開催国へ乗り込む姿は、まさに“戦う一流の集団”といった印象で、帰国時にたくさんのサポーターやマスコミがスーツ姿の選手たちを出迎える凱旋シーンはおなじみの光景となった。

ところが、カタール大会は欧州各国のリーグ戦が開幕1週間前まで行われる変則日程となっており、代表選手が揃いのスーツで一堂に会するお披露目の舞台は大会終了後、つまり凱旋帰国を待つしかなさそうである。

さて、サッカー日本代表のオフィシャルスーツサプライヤーをつとめているのが、英国のダンヒルだ。はじまりは2000年。2年後に日韓共催のワールドカップを控え、日本サッカー全体が大きく成長しようとしていた時期と重なる。

イタリアやイングランドが好例だが、揃いのスーツに身を固めた各国の代表チームの集合写真をご覧になったことはないだろうか。統率された力強い集団の佇まいがそこにはあり、スーツには「このチームを倒すのは一筋縄ではいかない」とライバルたちに思わせるパワーがあるのだ。2000年当時、日本代表にもそういった集団になることが求められていたタイミングだった。

日本代表を支える一流のスーツ「勝負服」

「一般的なスーツと違うのは、集団で着用することを前提にデザインされたものだという点です」

そう語るのは、野球の「侍JAPAN」など、アスリートのスタイリングも多く手がけてきた、ファッションディレクターの森岡弘さんだ。

「キャラクターや年齢に関係なく、誰でも逞しく、力強く見えるデザインだと思います。さらに、チームで着ることを考えてデザインされているので、数が揃えば揃うほどかっこいいスーツ、とも言えますね」

ダンヒルからも、次のような回答が返ってきた。
「『SAMURAI BLUE COLLECTION』は、「勝負服」というコンセプトのもと、男性が勝負に挑む場面をイメージしてデザインしています」

そう、キーワードは「勝負」である。ダンヒルはこのオフィシャルスーツを「勝負服」というキーワードを使って表現している。欧州の強豪国にも引けを取らない「世界基準で戦える、洗練された集団になること」を一流の「勝負服」でアピールするのだ。

ところで「SAMURAI BLUE COLLECTION」は、日本代表選手専用のスーツというわけではない。一般にも発売されるこのコレクションは、たとえば、大事な取引を決めたい、絶対にプレゼンを通したいなど、ビジネスシーンでも強い味方になってくれるに違いない。なにせ冨安健洋や鎌田大地など、世界で戦う一流選手と同じユニフォームを身に付けるのだ。日本代表のパワーをエンハンスするスーツである、と言ったら過ぎるだろうか。

ダンヒルのスーツ「勝負服」の歴史をおさらい

ダンヒルは2000年以降、毎年「勝負服」をリリースしてきた。歴代で通底するのは、ブランドが長年培ったテーラリングの技術をベースにした、力強くクラシックなスーツというところだ。

「そもそもスーツは補正要素が強く、誰でもかっこよく見せることができる洋服。まして、アスリートは体が出来上がっていますから、スーツが似合わないわけがないんです。ダンヒルの『勝負服』は、歴代のコレクションでも構築的な感じを通底しています。シャープながらも、タイトな感じはありません。着る人を選ぶわけではありませんが、(アスリートのように)筋肉質な方が着ることを意識したスーツという印象を受けます」(森岡さん)

伝統を重んじるダンヒルではあるが、この英国ブランドは快適性や耐久性の向上など、進化にも積極的だ。2002年の日韓大会当時のモデルと、2022年の最新モデルとを並べてみると、当然ながら違いは一目瞭然である。

初期はチェンジポケットがつき、Vゾーンの狭い3つボタン。2004年のモデルから2つボタンになってVゾーンが広くなり、以降は基本的に2Bである。2008年のようにメタルボタンのブレザーだったり、2014年は大きなウインドウ・ペンが配されていたり、さらに2018年はスリーピースだったり、といった具合で、ファッションのトレンドを程よく取り入れながら、デザイン面、機能面において大きく進化してきたことがわかる。

日本代表選手のスーツ姿を押さえた過去の空港スナップを見てみると、若いころは首もとからシャツのボタンが覗いていたり、ネクタイの長さが中途半端だったり、着こなしが洗練されていない選手も少なくない。だが、ワールドカップを重ねるたびにスーツの着こなしが磨き上げられていっていることがわかる。世界のトップリーグの厳しい環境で選手として、そして人として成長するなかで、正しい装いをも身につけてきたようだ。ダンヒルのスーツとともに、日本代表チームのファッション意識もまた進化しているのである。

日本代表もスーツも進化

2022年の最新モデルはナチュラルショルダーの「ベルグレイヴィアフィット」をベースに、イタリア製のヘリンボーンライトウール生地を使用した。力強さはそのままに、よりモダンで軽やかな1着となっている。伸縮性と強度にもすぐれ、移動の際の負担もより軽減されそうな作りだ。

森岡さんは「意志の強さとともに、優しさやリラックスした雰囲気も感じさせる。余裕も感じるスーツ」と評した。日本代表も、がむしゃらにW杯出場を目指していた頃とは違う。もはやワールドカップの常連国となり、欧州のリーグなど海外で活躍する選手も多い。憧れでなく対等の目線で世界を見られるようになった、というところだろうか。

「自己プロデュースをしっかりする選手が増えてきて、ネクタイの結び方やスーツの着こなし、ファンへの見せ方など、細かいところまで気を配っていらっしゃるようです」と、ダンヒルの担当者も語る。

代表選手たちのスーツ姿が洗練されるにつれ、彼らからは余裕さえ感じられるようになった。ワールドカップカタール大会イヤーのモデルは、そんな日本代表にふさわしいスーツというわけだ。

カスタムテーラリングプログラムとして展開されるダンヒルのスーツは、選手一人一人にフィットする美しいシルエットが特徴であり、サッカー日本代表の「勝負服」は、毎年ダンヒルブティックにて注文を受け付けている。

「勝負服」は現在、メイド トゥ メジャー(パターンオーダー)でのみ購入が可能だ。これは最良の着心地とフィッティングを得るための工程であり、最高の「勝負服」を誂えるのに欠かせない工程でもある。通常2~3回のフィッティングを行い、仕上げには最短でも2カ月ほどかかる。

代表選手たちのスーツも、綿密な採寸と選手との対話によってベストなフィットをつくっている。空港での凜とした立ち姿は、そうやって生み出されているのだ。カタール大会を終えて凱旋帰国する日本代表の選手たちがまとう勝負服にも注目してほしい。

スーツ35万2000円、シャツ4万4000円、ネクタイ2万5300円、タイバー3万6300円、ベルト4万700円、靴13万900円

DUNHILL
ダンヒル
TEL:0800-000-0835
dunhill.com

STYLED BY HIROSHI MORIOKA@GLOBE
HAIR STYLED & MAKE-UP BY KEN
WORDS BY FACTORIES
PHOTOGRAPHS BY  SHINSUKE KOJIMA


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