最旬トラベルディスティネーションを専門家らに聞いたところ、彼らの答えは文字通り、あらゆる世界に広がっていった。コロナ禍の閉鎖後、国境が再び開かれたアジアやオーストラリアへの旅行人気は再燃し、特に日本やシンガポールのような国々がリードして大復活を遂げようとしている。
アメリカの旅行会社ヴァーチュオーゾのマネージング・ディレクター、ミスティ・ベレスは旅行を「意図的な隔離」と呼ぶ。人里離れた場所に行き、すべてから距離をとるというものだ。さあ、カナダのユーコン、チリのパタゴニア、世界最大の島グリーンランドなどへ向けて、荷物をまとめよう。また、たくさんのホテルもオープンし始めている。とあるヨーロッパのクラシックな都市では、ラグジュアリーホテルが新たにいくつも登場し、人気の目的地に新たな魅力が加わり活気づいている。
7人のスペシャリストが提案する、2023年のトレンドとなっている12の場所を一挙大紹介しよう。
グアテマラ──最も文化的に豊かなラテンアメリカのデスティネーション
グアテマラは、かねてから旅先として人気を博しているラテンアメリカの国々の影に長い間隠れていた ──というのは大きな間違いです。グアテマラは大衆の目を気にすることなく、正真正銘の“ベスト・オブ”を提供し続けてきました。最も文化的に豊かなラテンアメリカのデスティネーションのひとつであり、スポットライトを浴びるときがきています。
壮大な自然の美しさを堪能するだけでなく、その土地の人々と深くつながるのも、旅の目的の魅力。新しくオープンした豪華で親しみやすいヴィラ・ボケは、都市アンティグアにおける画期的な存在で、これまでにないラグジュアリーホテルのひとつです。(by トム・マーチャント/ブラック・トマトの共同設立者)
カナダ・ユーコン準州──歴史的な名所と、まばゆいばかりの景色が広がる
もっと人里離れた生活様式を体験しながら新しい発見を得たいと願う場合は、カナダのノースウエスト準州とユーコン準州がおすすめ。ノースウエストは野生動物にあふれ、先住民が運営する宿泊施設があります。しかも、季節によっては壮大なオーロラを目の当たりにできることも。また、ユーコンには歴史的な建造物をはじめとする名所、豊かな文化、そしてまばゆいばかりの風景があります。そして、その旅を何よりもスペシャルなものにしているのは、旅の途中で出会うことができる地元の人々なのです。(by トム・マーチャント)
北極圏・アイスランドとグリーンランド──オーロラを目指して
南極大陸が2022年の冒険旅行の寵児となった一方で、北極圏は次の“必見”スポットとして注目が集まっています。北極圏に位置するアイスランドとグリーンランドは、どちらも「意図的な隔離」、つまり人混みから逃れて自分自身の限界を探る機会を得るのに最適な場所です。雄大な自然の手つかずの美しさに囲まれ、9月から4月の間に垣間見ることができるオーロラを求めて、人々が次に向かう場所なのではないでしょうか。(by ミスティ・ベレス/ヴァーチュオーゾのマネージング・ディレクター)
スペイン・マラガ──実はAirbnbで最も人気の都市
Airbnbで今年、旅行先の都市としての検索数が最も多いのが「マラガ」なのです。マラガはここ10年で文芸復興を遂げ、美しいコスタ・デル・ソルの活気ある文化の中心地となりました。色とりどりのガラスキューブに収められたモダンアートの宝庫であるポンピドゥー・センターをはじめ、新しい美術館がいくつもオープンしています。ストリート・アートのシーンも素晴らしく、近隣一帯を覆い尽くすカラフルな壁画も見応えがあります。(by キャサリン・パウエル/Airbnbホスティング部門グローバルヘッド)
モザンビーク・ベングエラ島──今こそ、大人の逃避行へ
モザンビークのバザルト群島には5つの島があり、白い砂浜と透き通るような水が美しいビーチ、そして多様な海洋生物に出合えることで有名な場所です。その中で2番目に大きいベンゲラ島は、自然豊かでひっそりと過ごすことができる高級保養地として、静かに人気を博しています。
キサワ・サンクチュアリやアンドビヨンド・ベンゲラ・アイランドに滞在すれば、何キロにもわたって続く海岸線を堪能することができ、人影も建物もない、まさに人里離れたトロピカルな逃避行を楽しむことができます。アフリカの伝統的なダウ船に乗ったり、ロッジに頼んでジュゴンに会いに行ったりするのもおすすめです。(by エリス・テイラー/ライター)
イタリア・バジリカータ州──自然・歴史・食すべてが魅力の、ボンド映画の舞台へ
プーリアとシチリアは、行きやすい場所として是非チェックリストに入れてほしいですね。南イタリアを夢中で探検している私にとって、2023年に注目すべき新進気鋭のエリアは、バジリカータ州です。マテーラの古代の洞窟、丘の上の曲がりくねった道、崩れかけたバロック様式の教会などは、訪れたことのある人にとってはきっとこの情景が脳裏に浮かぶことでしょう。
この町は、最新のボンド映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)で、アドレナリン全開のカーチェイスの舞台にもなりました。ここには、手つかずのビーチや魅力的な歴史、そしてとろけるほど絶品な新鮮シーフードもあります。また、「ティレニア海の真珠」と呼ばれるマラテーアという町も要チェックです。プーリアの人気ホテルであるボルゴ・エグナツィアの創業者たちが新たにオープンした、5つ星のサンタヴェネレ・ホテルを宿泊先に。(by リアム・ヘス/US版『VOGUE』リビング・エディター)
日本──これまでも、これからも文化的な体験が魅力のイットな旅行先
日本は誰もが候補に挙げる国であり、その需要の高まりには目を見張るものがあります。パンデミック以前から日本は“イットな”旅行先だったのですが、人気が高すぎて手の届かない存在でした。こうして一度は断念した人々の需要が残っており、今このチャンスを二度と逃すまいと日本が提供する文化的体験への関心が高まっています。(by ミスティ・ベレス)
スコットランド・エディンバラ──話題のホテルオープンが目白押し
エディンバラの街は1200年代に築かれましたが、800年以上経った今でも新しい驚きを見せてくれる場所です。最近オープンしたラグジュアリーホテルのグレンイーグルス・タウンハウスは、伝統とモダンをうまくミックスした造りに。19世紀の装飾ドームの下にはアブストラクト・アートが飾られ、レストランでは前衛的なカクテルとサンデーローストの両方が楽しめます。
また、今年3月にはリチャード・ブランソンのヴァージン・ホテルがオープンし、10月にはアレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)にインスパイアされたというインテリアが特徴の高級ブティックホテル、100プリンセス・ストリートのローンチも控えています。(by エリス・テイラー)
ポルトガル・ドウロ渓谷──ブドウ畑が広がる細道を抜けて、たどり着く異世界
ヨーロッパの中でも最も目を見張るような景色(そして美味しいワイン)を探しているならば、緑豊かでドラマチックな斜面が広がるポルトガル北部のドウロ渓谷をおすすめします。ポルトガル第二の都市であるポルトから東へ車でわずか1~2時間のところにあり、移動時間さえも旅のハイライトとなるでしょう。
山から続く細く曲がりくねった道を降っていくと、丘の斜面に点在するのどかなブドウ畑が広がります。魅力的な村々が点在し、まったく別世界に入り込んだような気分に。そしてタイル張りの壮大な階段や、荘厳な教会がある巡礼の町ラメーゴは圧巻。高級ホテルも増えてきていて、特にシックスセンシズはドラマチックな滞在先です。でも、何よりもこの場所で一番の楽しみ方は、のんびりとくつろぎ、ポルトガル流の楽しい生活を満喫することですね。(by リアム・ヘス)
シンガポール──再来したい、大都市と自然が融合した欲張りシティ
コロナ禍の2年間、ほとんどシンガポールには行けなかったので、もう一度行ってみたいと思っています。食事、人々、そして自然と都市のコンビネーションは、素晴らしい時間を過ごしたい人には欠かせません。特にF1世界選手権が開催されるシンガポールグランプリのときには、街中が熱気に包まれます。(by ビクター・サンズ/TUMIのクリエイティブ・ディレクター)
チリ・パタゴニア国立公園──世界の最果てに広がる唯一無二の景色
2018年、チリは約445万ヘクタールの土地を国立公園として確保し、民間団体から国への土地寄付としては最大規模となりました。ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)とエスプリ(Esprit)の創業者であるダグ・トンプキンズにちなんで命名されたトンプキンズ・コンサベーション・ファウンデーションは、パタゴニアの原生地域の国が保護する活動に大きく貢献しました。
パタゴニア中部のアイセン地方の国立公園は、30万ヘクタールを超える面積を誇ります。チリに寄贈された土地によって今の状態を成し、新しいパタゴニア国立公園ネットワークの一部となっています。そしてここを唯一無二の存在にするのは、固有の生物多様性と辺境の地にあることです。パタゴニアの中でもたくさんの人が訪れる場所からは何マイルも離れており、簡単にアクセスできる場所ではありません。首都サンティアゴでは控えめでエレガントなホテル・マグノリアが新たにオープンし、北部のアタカマのティエラ・アタカマもおすすめです。(by トム・マーチャント)
イタリア・ローマ──ラグジュアリーホテルのオープンラッシュ
今年のローマは、エディション、ブルガリ(BVLGARI)、シックスセンシズなど、ラグジュアリーホテルのオープンラッシュを迎えています。永遠の都と称されるローマは常に訪れるべき定番の場所ですが、モダンでエッジの効いた待望のホテルは、この街をさらに活性化させることでしょう。(by エリス・テイラー/US版『VOGUE』シニア・リビング・ライター)
From: VOGUE.COM