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SEC、MMF規制見直し最終決定-スイングプライシング見送り

更新日時
  • 数年ぶりの抜本改革、大量の資金引き揚げを防ぐ狙い
  • MMF業界に新たな手数料や流動性レベルを義務づけ

短期国債やコマーシャルペーパー(CP)で運用する投資信託、マネー・マーケット・ファンド(MMF)の規制見直しについて、米証券取引委員会(SEC)は12日に採決を行い最終決定した。数年ぶりの抜本改革により、金融市場の緊張が高まった状況で大量の資金引き揚げが発生する事態を防ぐ狙いがある。

米MMF、数年ぶり抜本的規制改革迫る-SEC採決控え各社身構え

  今回の決定では新たな手数料が義務づけられ、5兆5000億ドル(約770兆円)規模の同業界に多大な影響をもたらす見通しだ。だが業界から激しい反発が上がっていた「スイングプライシング要件」は見送られた。スイングプライシングとは、解約者の基準価額(NAV)を調整することで、解約者と残る投資家に公平に解約コストを配分するオペレーションを意味する。

SEC、MMF規制見直しでスイングプライシング除外へ-関係者 (2)

  新たな規制では、2020年3月に起きたような大量の資金流出を抑制するとともに、解約に伴う多額のコスト負担から残った投資家を守る目的がある。新型コロナウイルス流行の初期に市場が混乱した結果、米金融当局は過去12年で2度目となるMMF市場への介入を余儀なくされた経緯があり、SECに対して規制強化を求める声が上がっていた。

  SECの採決では5人のうち3人が賛成票を投じた。新たな規制では、一部のファンドに対して流動性関連の手数料が義務づけられる。新たな手数料は1年の移行期間を経て、機関投資家向けのプライムファンド、および機関投資家向けの非課税ファンドで1日当たりの解約が純資産の5%を超えた場合に発動される。

  ゲンスラー委員長は「流動性手数料はスイングプライシングと同じ利点の多くを提供しながらも、運用上の負担は小さい」と指摘。新規制がMMF市場を一段と強じんにするとの見方を示した。

SEC Chair Gensler Testifies Before House Appropriations Subcommittee
ゲンスラーSEC委員長
Photographer: Al Drago/Bloomberg

  スイングプライシングは欧州で広く使われている。SECが2021年12月に示した提案では、機関投資家向けのプライムMMFおよび非課税MMFを特定してスイングプライシングを義務づけることが盛り込まれていた。

  スイングプライシング要件が見送りとなったことは、導入に反対していたJPモルガン・チェースの資産運用部門やステート・ストリート、フェデレーテッド・ハーミーズにとって大きな勝利となる。反対派はスイングプライシングが導入されれば、投資家のコストを押し上げ、機関投資家向けMMFの資産が大幅に落ち込むとの懸念を示していた。

原題:SEC Imposes Money-Market Fund Rules to Thwart Rapid Outflows (1) 抜粋

(第3段落以降にSEC委員長の見解や追加情報を加えます)
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