LIFESTYLE / CULTURE & LIFE

ピンク系アースカラーからブルータリズムまで。2023年、注目のインテリアトレンド12

13人の海外トップインテリアデザイナーたちに、今年チェックしておきたいインテリアトレンドをASK。柔らかなアースカラーやムラーノガラス、そしてコンクリートなどの“無骨”な素材を使用したブルータリズムに温かみをプラスするデザインまで。注目の12のキーワードをチェックして、インテリアを楽しもう。
Photo: Rich Stapleton

インテリアデザインにおけるトレンドを語るのは、一見すると矛盾しているように感じられる。家具やテキスタイル、アート、壁紙などは一般的には長持ちするし、ファッションに比べてコストもかかるからだ。当たり前だが、部屋をデザインするときは、長い間同じデザインになることを覚悟し、それに慣れる必要がある。

とはいえ、時の流れとともにトレンドは移り変わる。シャギーなカーペットに代表される1970年代のボヘミアンスタイルは1980年代には華美な装飾やポストモダニズムへと変わり、そして口直しをするかのように1990年代のミニマリズムへと続いた。

2020年代を生きるわたしたちにとって、地球にも自分たちにも優しいインテリアを見つけ使っていくことは、今までになく重要視されている。これから長く愛せるインテリアや時代の流れに乗っていくもの、そして時代遅れになっていくものとは? 『VOGUE』は13名の海外インテリアデザイナーたちに、話を訊いた。

【今注目のインテリアトレンド12】
1 ブラウン&ピンク系のアースカラー

ジェイク・アーノルドが手がけた、ピンク系アースカラーのバスルーム。

  • 「モーヴ、ピーチ、コーラル・・・今、私はピンクの色合いが大好きです。フェミニンな感じがするし、優しくカラーを取り入れることができるからです」──ジェイク・アーノルド 
  • 「ピンクとモーヴが2023年のカラーです」──キャサリン・M・アイルランド 
  • 「今、ブラウン系にときめいています。今年は、よりクリーミーで暖かいホワイトや、トープ系のアーストーンといったあらゆる色調のブラウンが使われるでしょう」──サラ・ソリス
  • 「最近ロンドンの自然史博物館でダーウィンと色の歴史を探求し、鳥の羽や鉱物を、錆色やキャラメル色といった温かみのある土の色合いで表現したアイテムに惚れ込んでいます。これらは、私たちが2023年に向けて愛用しているカラーです」──ロビン・スタンデファー(ローマン&ウィリアムス
  • 「アースカラーは、長年にわたってグレーに傾倒し過ぎた状態から立ち直るために、引き続きメインカラーとして使われています。昨年、ブラウンがトレンド入りすることを予想しましたが、それは今も変わっていません。今年の傾向としては、赤が戻ってきていると思います。リッチなオックスブラッド色から土っぽいテラコッタレッドまで、自然からインスピレーションを得た色彩がデザインを支配し続けるでしょう」──ダニエル・コルディング
  • 「さびっぽいレンガ色、ブルーグリーン、クリーミーなミッドナイトブルーなど、ムーディなパレットを新鮮に感じます」──エリック・ガルシア(メゾン・トゥルヴェイユ

2 ひけらかすことのないネオクラシック

ティモシー・コリガンが手がけた、ネオ・クラシックスタイルの空間。

Photo: Simon Upton
  • 「細かいディテールとシンメトリーなラインに焦点を当てたネオクラシシズム(新古典主義)のカムバックは、ミッドセンチュリーモダン人気の後の自然な流れです。この装飾は他の時代やスタイルと容易に調和し、富をひけらかすことなく、エレガントで洗練された雰囲気を与えてくれます」── ティモシー・コリガン 
  • 「パンデミックで実用性ばかりが求められた後のトレンドとして、よりフォーマルで贅沢なものへの欲求があると思います」──ロバート・D・マッキンリー(スタジオ・ロバート・マッキンリー

3 テラゾー(人工大理石)

  • 「近年キッチンやバスルームによく見られるようになった、左右対称に柄合わせした大理石板の代わりに、モザイクやテラゾー(人工大理石)が大きなトレンドになっていると感じます」──ティモシー・コリガン

4 紙やファブリックを使った、柔かな光を放つ照明

シルバーのテーブルがある、アテナ・カルデローネが手がけた部屋。

Photo: Jonathan Hokklo
  • 「紙や布、シルクを使った、やわらかな光を放つ照明が復活しはじめました」──アテナ・カルデローネ

5 シルバーやアイアンのアクセント

  • 「ジャコメッティ にインスパイアされたかのような、アイアンディテールがトレンドになってきています。サイドテーブル、コーヒーテーブル、コンソール、ベンチなどの家具にアイアンのディテールが見られるようになりましたし、このトレンドは今後も続くでしょう。2023年には特に、鏡やディスプレイ皿、キャンドルスタンドなど、小ぶりなインテリアの中でより顕著に登場するでしょう」──ジェイク・アーノルド
  • 「自然な風合いの真鍮のような素材への人気が薄れ、磨き上げられたアルミニウムやステンレス、ニッケルへの関心が高まっているように感じます」──ロバート・D・マッキンリー
  • 「ブロンズ、ゴールド、カッパーは長い間、デザイン業界で選ばれてきた金属素材であり、タイムレスな人気が変わることはありません。いっぽうで今、ツルツルに磨き上げられたシルバーカラーが新たな色彩として注目されてます。その魅惑的な輝きと質感は、どんな空間にも洗練をもたらしてくれますから」──アテナ・カルデローネ(アイズウーン

6 ストーン製の縁取り

マーク・D・サイクスが手がけた、壁とソファに1種類のファブリックを使い、統一感を出した空間。

Photo: Douglas Friedman
  • 「大理石や石材といった素材自体は目新しくはありませんが、ドアフレームや窓枠、幅木やモールディングなどといった装飾用に使用されるようになりつつあります。これらの素材はタイムレスで、昔ながらの良さを感じさせてくれるだけでなく、新鮮さも感じられ、使い古された素材に新しい命を吹き込んでくれるのです」──コリン・キング

7 大胆に、同系色で統一した空間

  • 「今年の大きなトレンドは、部屋の中のすべてをひとつのファブリックでトータルコーデをすることです。一見、空間が賑やかになり過ぎるのではという不安を感じるかもしれませんが、実は逆に落ち着きをもたらし、居心地がよくシックにする効果があるのです。しかも、簡単に出来ることも嬉しいポイントです」──マーク・D・サイクス
  • 「インパクトのあるモノトーンルーム。白い幅木や天井の時代は終わりました。空間を包み込むような大胆な色彩が重要なのです!」──ダニエル・コルディング
  • 「モノクロ配色で、同系色のテクスチャーやテキスタイルの重ね使いをします。ファッションのように、遊び心を持って!」──サラ・ソリス

8 ムラーノなど、ユニークなガラスアイテム

  • ミラノサローネに行ったとき、ガラスがユニークで面白い方法で使われているのを見て、ガラスがトレンドであると認識しました。特に、オブジェに注目しています」──アテナ・カルデローネ
  • 「ユニークな特徴のライト、特にイタリアのムラーノ製の素晴らしいシャンデリア。1970年代や80年代のヴィンテージの雰囲気が感じられるものなら何でも」──サラ・ソリス
  • 「1970年代の華やかさと、地に足の着いた家具のミックス。私は数年前からムラーノガラスに注目していますが、このトレンドはすぐには変わらないと思います。ニュートラルなモダン空間に配された特大のムラーノシャンデリアは、新鮮でエキサイティングです」──ダニエル・コルディング
  • 「これからの1年は、陶器、ガラス、木などの自然素材を使い、美しく洗練された方法で手仕事をするアーティストや職人たちに期待しています」──ロビン・スタンデファー

9  無骨なブルータリズムに温かみをプラス

温かみのある雰囲気のブルータリズム。コリン・キングが手がけた部屋。

Photo: Kovi Konoweicki
  • 「2023年はモルタルのフロアが復活するでしょう。コンクリートを取り入れた生活空間では、素材感を残したものから磨かれたものまで、さまざまな工法を目にしますが、最近ではマイクロトッピングというシームレスな空間を実現してくれる技法に注目しています」──コリン・キング
  • 「ブルータリストデザインは、今年の大きなトレンドになりそうです。ブルータリズムは建築材料として未加工で無骨なコンクリートを使い、機能性を重視し、工業材料を使用することが特徴です。また、インテリアの装飾的な要素としても、コンクリートは大きな復活を遂げつつあります。クリーンで落ち着きのある空間に対する大きな需要があるからというのがその理由。過去に比べ、現代のブルータリストスタイルは、木や、石、植物、また持続可能な素材などの自然な要素を取り入れた柔らかみのあるアプローチとなり、もっと居心地が良く、より温かい美しさを生み出しています」──ジャンピエロ・タリアフェッリ(スタジオ・タリアフェッリ

10  ユニークなシュールレアリスム

  • 「今年は、デザイン界が夢の世界を受け入れると信じています。シュールレアリスムが、神聖幾何学と同時に表現されるでしょう。これらのコンセプトは、デザイナーがスケール感で遊んだり(小さなカクテルテーブルと並べた特大のクラブチェアなど)、足をモチーフにしたバスタブや雲のようなランプ、トリックアートなど、予想外のアイテムが新鮮です」──ジャスティナ・ブレイクニー(ジャンガロー

11 質感のある有機的なタイル

  • 「2023年には、質感のある立体的なタイルがあらゆるところで見られるでしょう。床からキッチンやバスルームの壁まで、どんな空間にも有機的で手づくり感を与えながら、絶妙なコントラストとバリエーションを生んでくれます」──コリン・キング

12 オルタナティブなアート作品

ティモシー・コリガンが手がけた、彫刻のあるダイニングルーム。 

Courtesy of Timothy Corrigan
  • 「現代絵画への強い関心に続いて、彫刻もまた人気を取り戻しつつあります」──ティモシー・コリガン
  • 「タペストリーは、部屋にクラシカルな雰囲気をもたらしてくれます。壁に新たな表情を取り入れるには、便利なアイテムですね」──ジェイク・アーノルド

では、流行遅れになりつつあるものは何か。「モダンファームハウス」スタイルは飽和状態に達しているようだ。たくさんのクッションを並べたベッドも同様だ。そして、“ファストファニチャー”にもさようならを言おう。これについては多くの場合、すぐに粗大ゴミに出されてしまうからだ。環境に配慮したインテリアデザインは、いつの時代でも受け入れられるのだ。

Text: Elise Taylor Translation: Fraze Craze Adaptation: Mamiko Nakano
From VOGUE.COM