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岸田首相が長男の秘書官更迭を決断、衆院解散・総選挙の行方に影響も

  • 来月1日付で政務秘書官を翔太郎氏から前任者に交代すると発表
  • 世論調査では8割が問題視、サミットで急上昇の内閣支持率も低下

岸田文雄首相が週刊誌報道を受けて長男の翔太郎秘書官の事実上の更迭を決断したことで、市場関係者の間で広まっている早期の衆院解散・総選挙の行方に影響を与えることになりそうだ。

   翔太郎氏は昨年末に首相公邸で親戚と忘年会を開き、写真撮影をしていたことなどが週刊誌で報じられた。岸田首相は厳重注意で収めようとしたが、野党から更迭を求める声が上がるなど批判が高まっていた。

  岸田首相は29日、来月1日付で政務秘書官を翔太郎氏から前任の山本高義氏に交代すると発表した。理由については「公邸の公的なスペースにおける昨年の行動が公的な立場にある政務秘書官として不適切であり、けじめをつけるため交代させることとした」と説明した。

岸田首相長男の翔太郎秘書官が来月1日付で交代-週刊誌報道受け 

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岸田文雄首相と翔太郎秘書官
Photographer: JIJI Press/AFP/Getty Images

  翔太郎氏の行動に対する否定的な反応は、岸田首相の地元・広島で開催された 主要7カ国首脳会議(G7サミット)直後に急上昇した支持率の鈍化につながった。

  国内ではサミットが成功を収めたと受け止められ、高い支持率も後押しし、岸田首相が早期に総選挙に打って出るという見方が強まっていた。

ゼレンスキー効果か、岸田内閣の支持率上昇-早期解散観測が拡大も

  その後、朝日新聞が今月27ー28日に実施した世論調査では、翔太郎氏の行動が「問題だ」とする回答が8割近くを占めた。日本経済新聞が26ー28日に行った調査では、一時5割を超えた内閣支持率が47%と5カ月ぶりに下落した。

  上智大学の中野晃一教授は英語でのインタビューで、縁故主義が根強い日本で、首相の長男が権力を私物化し、公共空間を私的に利用した今回の問題は、攻撃的で傲慢(ごうまん)な印象を受けると指摘する。

  松野博一官房長官は30日午前の記者会見で、「公邸内の執務機能を持つ公的なスペースに秘書官が立ち入ること自体に問題はない」とした上で、岸田首相は翔太郎氏の行為を「報道により認識した」と述べた。また、翔太郎氏から、退職手当などが支給された場合、全て返納したいとの申し出があったと明らかにした。

  翔太郎氏は今年1月、岸田首相が公務でフランス・パリを訪問した際に公用車を使って観光したという報道で非難を浴びた。政府関係者は当時、同氏は政府の業務に従事しており、不適切なことはしていないとの見解を示していた。

  次の衆院選から適用される小選挙区の「10増10減」で選挙区が増える東京の選挙区では、数十年にわたって連立を組んでいる公明党との間に亀裂が生じている。公明党は東京で自民党と協力しないと表明しており、強い組織力を持つ公明党のバックアップなしに選挙に臨む自民党候補にとっては打撃となる。

  早期の選挙は日本銀行の行動にも足かせとなる可能性がある。日銀の植田和男総裁は現行の金融緩和政策を継続する考えを繰り返し示している。しかし、一部の市場関係者は日銀が今年中に行動を起こす可能性があると警告し続けており、その時期として7月が挙げられている。

  もし岸田氏が選挙に打って出れば、日銀は市場を揺るがすような政策の変更や微修正を行うことに、より慎重になる可能性がある。

  また、今後数カ月の間に総選挙に勝利したとしても、自民党総裁選までの1年以上の間、岸田政権が勢いを維持できない恐れがある、と一部の有識者は懸念する。

  元国会議員で早稲田大学教授の中林美恵子氏は岸田首相の最終目的は自民党総裁に再選されることだとした上で、6月に国会を解散すれば自民党内で起こり得る不測の事態が多過ぎるとの認識を示した。

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