映画『鋼の錬金術師 完結編』山田涼介インタビュー──真紅のまなざし【完全版】

映画『鋼の錬金術師』の完結編が2部作となり、この5月と6月に連続公開される。2017年の第1作より主演を務める山田涼介に、現在の気持ちを訊いた。『GQ JAPAN』本誌7,8&9月号には掲載できなかった完全版をお届けする。
映画『鋼の錬金術師 完結編』山田涼介インタビュー──真紅のまなざし【完全版】

“『鋼の錬金術師』の本質は、人間ドラマなんです”

「じつは、この取材の直前に完成試写を観たんです。撮影から時間が経っているので、あらためて観ると懐かしい思いにふけるところもあって……いま、ちょっと不思議なテンションですね」

山田涼介演じるエドワード・エルリックが還ってくる。映画『鋼の錬金術師』(2017年)から約5年がたち、このたび公開される完結編は『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』の前後編2部作となった。

「いち原作ファンとしても、前作は物語がここから始まるというところで終わっていたのが心残りでした。今回、完結まで描けたことがあらためてすごくうれしいですね」

舞台は錬金術が存在する世界。母を生き返らせるため、エドワードとアルフォンスの2人の兄弟は人体錬成という禁忌を犯す。試みは失敗に終わり、代償としてエドは右腕と左足を、アルは肉体自体を失ってしまう。なくしたものを取り返すために“賢者の石”を探して旅する中で、2人は国家を揺るがす陰謀に巻き込まれていく──。荒川弘による原作漫画は、世界累計発行部数8000万部超、完結から10年以上経っても高い人気を誇る。そんな作品の実写映画で主役を務めるにあたって、さまざまな苦労を伴ったであろうことは想像に難くない。

「『鋼の錬金術師』という作品の本質にどうアプローチするのか。それがいちばん気にかけていたところです。僕はこの作品が大好きだし、出る決意を固めた以上はみんなが観て楽しめる作品をつくろうと誇りを持って演じました。『鋼の錬金術師』の本質は、人間ドラマなんです。だからこそ生身の人間が演じることによって生まれる温かさがある。その温かさが多くの方に伝わればいいなと思っています」

役者として、同じキャラクターを4年越しで演じる機会はそうそうあることではない。だが、そこに挑んだ山田の言は「いつかやるだろうと思っていたので、『あぁ、このタイミングなんだな』という感じでした」と軽やかだ。

「この作品は技術的に難しい部分がたくさんあるので、いろんな準備が整うのに時間がかかるとわかっていました。前作から4年で撮れたのは、僕の中の予想より早かったくらいです」

映画『鋼の錬金術師』シリーズを手掛けるのは、CGクリエイターとしても高い評価を受ける曽利文彦監督だ。前作ではイタリアの街をドローンで空撮してスキャンし、そこから制作したCGと生身の役者の映像を合成してシークエンスをつくる手法が話題になった。錬金術で生まれる雷も、飛び出す土の壁も、役者が演じているその場には何もない。特殊な現場だからこそ、経験がおおいに活かされた。

「自分が錬成したものがこう動いて、街並みにぶつかって、この角度で落ちてきて……と、計算しながら想像する必要があります。イマジネーションの働かせ方は前回で学んでいたので、戸惑いはありませんでした。監督と話す内容も、端的で要領を得たものになっていたと思います。爆発シーンひとつとっても、『ここってどうなるんですか?』と漠然と訊くのと、『僕の想像だとこれくらいの規模の爆発なんですけど、どうですか』って訊くのとでは全然違いますよね。そうした部分で、やりやすさは段違いでした」

今作では、新田真剣佑、内野聖陽、舘ひろしほか、豪華キャストが新たに加わった。そんな面々のなかで座長をつとめるのはさぞプレッシャーだったのではないだろうか。そう尋ねると「それは全然なかったです。エドってそういう人だから」と答える。

「山田涼介としてそこにいたら、『うわ、どうしよう』ってなると思います。でも前作でつくりあげた空気感がちゃんとあったし、みんなも役の姿でいるから緊張はしなかったですね。初日からずっとエドでいられました」

エドを演じるなかで感じ続けていたのは、そのカッコよさだ。

「くじけてもくじけても、前に進むための足がある限りは進み続ける。目の前で起きるひとつひとつの出来事に嘘偽りなくすべて100%で向かっていくって、大の大人でも難しいと思うんです。それを10代にしてやってのけている。男としてカッコいいなと思います」

どんな役でも、撮影が終われば引きずらないタイプだという。だが「僕はエドと違って、チビって言われてもキレないですけどね!」と茶目っ気を見せる顔が、ふとエドと重なって見えた。それは、山田がまとった真紅のジャケットのせいだけではないだろう。

(『GQ JAPAN』2022年7,8&9月号掲載)

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山田涼介(やまだ りょうすけ)

歌手、俳優

1993年5月9日生まれ、東京都出身。Hey! Sɑy! JUMPのメンバー。2015年、初主演映画『暗殺教室』の演技が評価され、第39回アカデミー賞新人賞を受賞。シリアスからコメディまで役者としても幅広く活躍中。

『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』(公開中)
『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』

6月24日(金)全国ロードショー

幼い頃に亡くした母親を蘇らせようと行った錬金術の禁忌とされる人体錬成により、失われた身体を取り戻そうとする兄弟が最後に出した答えとは……? 原作を愛するキャスト・スタッフ陣が、『鋼の錬金術師』という唯一無二の作品世界を圧倒的スケールで描き切る、堂々の“完結編”──兄弟が歩んできた長い旅路の結末がここに。“鋼の錬金術師”が最後に出した答えとは?

©2022 荒川弘/SQUARE ENIX ©2022 映画「鋼の錬金術師 2&3」製作委員会
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式ホームページ:https://wwws.warnerbros.co.jp//hagarenmovie/index.html

WORDS BY MISAKI SAITO