どうする家康? どんな腕時計をつける?──徳川家康には、ザ・シチズン「AQ6021-51E」を勧めたい!

「もしも徳川家康が生きていたら、どんな腕時計をつけていますかね?」のお題に、時計ジャーナリストの広田雅将が答えた。
どうする家康? どんな腕時計をつける?──徳川家康には、ザ・シチズン「AQ602151E」を勧めたい!

家康はG-SHOCKを選びそうな気もするが

信長、秀吉と来れば、次は家康だ。今徳川家康が生きていたら、さてどんな腕時計を選んだだろうか?

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天下を制しただけあって、徳川家康にはいろんな逸話がある。馬術の達人、自分で薬を調合した、芸事にはまったく興味がなかったなどなど。ただ、残った話を読む限り、彼は相当にケチだったらしい。正しくは、ケチというよりも、締まり屋である。

彼が愛用していたのは、白ではなく、浅黄色のふんどしだった。理由は、汚れても使えるため。無駄づかいを好まない部下たちも、さすがに家康には倣わなかったそうだ。ケチ話はいくらでもある。風で舞った懐紙をあわてて拾いに行った家康を、ある小姓が笑った。彼は「オレはこれで天下を取ったのだ」と語ったそうだ。

もっとも、家康は、意味のあるところにはお金を使った。信長の接待には湯水のようにお金を使い、後には江戸を人の住める場所に変えたぐらいだから、単なるケチでは決してない。無駄づかいは避けるが、大切なときには出費を惜しまない。そんな彼のあり方は、今なお、中京圏の人たちに受け継がれているように思える。

さて、家康はどんな腕時計を選んだのか。ケチと考えれば、安価な腕時計を使い捨てたかもしれない。天下を取ったのだから、面白い腕時計を選んだかもしれない。しかし、意味があればお金を使う人と考えれば、腕時計はとことんまで実用品であるはずだ。

選択肢は数多いが、筆者が思いついたのは、シチズンの「ザ・シチズン キャリバー0100」である。これは、スタンドアロンで動く量産型のウォッチとしては、史上もっとも正確なもの。クオーツの精度を極限まで高めることで、このモデルは理論上1年に±1秒しか狂わない。

家康という人は、天下を取る以前から、馬術の名人として知られていた。また、薬も自分で調合するほどだったから、かなりの変わり者だったのではないか。しばしば、秀吉と正反対にあるといわれる家康だが、凝り性という点だけはまったく同じだ。腕時計を買う際は、入念に下調べをし、対価に合うかを検討したに違いない。

家康は一貫して地味好みで、調度品にも部下にもそれを望んだ。部下の華美なカッコウを見て機嫌を悪くした家康は、派手な腕時計は避けたに違いない。事実、彼の使った甲冑の多くは、天下人の物とは思えないほど地味である。と考えれば、金ケースはもってのほか、ステンレスやチタン製の腕時計でも、目立つ物は避けたはずだ。パテック フィリップの「ノーチラス」などを推薦したら、まず怒られるだろう。

身軽を好んだことも特徴だ。大坂夏の陣に出向いた彼は、鎧兜ではなく、帷子を着ていたと記録にはある。太っていたこともあるだろうが、あえて武装しないことで、(西側が)鎧を着るほどの相手ではないと印象付けようとしたなど、説はさまざまだ。

しかし、家康は、単に暑くて重い服装が嫌いだったのだろう。身体を鍛えていた家康は、今でいうところのアスリートの先駆けである。アスリートが身軽さを好むことを考えれば、家康が軽い服装を選ぶのも合点がいく。ちなみに究極の実用腕時計であるG-SHOCKは、間違いなく家康好みの1本だ。しかし、その大きさと重さは、家康好みではないだろう。晩年の彼であればなおさらだ。

と考えれば、彼の選択は、ザ・シチズンのキャリバー0100のなかでも、チタン製のケースとブレスレットを持つ限定モデル「AQ6021-51E」になるだろう。売り切れならステンレスモデルを選ぶかもしれないが、軽いチタン素材は、大坂夏の陣に軽装で臨んだ家康にぴったりだ。しかも、短気を起こして鞍を叩いても、ザ・シチズンはまず壊れない。

もっとも、家康という人は、追い詰められると暴走する人だった。昔の彼はそれで武田信玄に立ち向かい、大坂の陣ではもはや死ぬと連呼して部下たちを困らせた。彼がもし今いたら、ストレスを溜めては、衝動買いをしたのではないか。吟味して選んだザ・シチズンを普段使いするいっぽう、ストレスで高価な腕時計を買い、覚めて困惑する家康。それはそれで、見てみたい気もする。

広田雅将

時計専門誌 『クロノス日本版』編集長

1974年生まれ、大阪府出身。時計ジャーナリスト。『クロノス日本版』編集長。大学卒業後、サラリーマンなどを経て2005年から現職に。国内外の時計専門誌・一般誌などに執筆多数。時計メーカーや販売店向けなどにも講演を数多く行う。ドイツの時計賞『ウォッチスターズ』審査員でもある。

文・広田雅将 編集・神谷 晃(GQ)

ILLUSTRATION by OSUSHI MUROKI


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