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大阪城の石垣貫く水道管は? コレラ鎮めた明治の遺産

とことん調査隊

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大阪城内を散策していたら、2本の鉄管が堀を横切って石垣を貫いている場所を見つけた。「国の特別史跡でなんと無粋な」。聞けば、明治時代に敷設された水道管で今も現役。コレラなどの感染症から人々を救い、ものづくりの技術を育んだという。近代・大阪の原点ともいえる水道管の歴史を探った。

大阪市水道局で見せてもらったのは1895年(明治28年)、大阪市に上水道が開通した時の敷設図だ。大阪城を基点に2本の太い線が延びている。1本は北に2キロ離れた桜の宮水源地から城内へ、もう1本は城内から西一帯の市街地へ。この2本が堀にかかっていたのだ。

よりによって、なぜ大阪城だったのか。「市内で最も標高が高かったから」と水道局工務部計画課の谷屋秀一さん。「天守閣横につくった巨大な貯水池にポンプで送り込み、自然の高低差を生かして配水していた」。大きな動力が不要で、当時としては最も理にかなっていたという。

大阪市にとって上水道がいかに急務だったかは、市の水道史に詳しい。江戸時代から飲料水を川水か井戸に頼っていたが、明治になって大量の生活排水が流れ込んだ結果、コレラなどの感染症がたびたび流行。有効な治療法がなく、ひどい年には8000人近くが亡くなった。

最大の難問は水道管をどこから調達するかだった。大阪市の前に上水道を引いた横浜市、函館市、長崎市では全量を輸入に頼った結果、建設費の高騰を招いた。大阪市で必要な水道管は2万トンと格段に多く、殖産興業と外貨の流出防止には国産が望ましい。だが鉄を筒状にして薄く長く延ばす鋳造技術は、当時の日本にない。

大阪市と同時期に上水道の計画が浮上した東京市(当時)では、参事会員だった渋沢栄一が「国産は時期尚早で輸入でまかなうべきだ」と主張し、売国奴と非難された。世論を二分した末に発足した鋳造会社は、不良品を垂れ流したばかりか偽装納入にまで手を染めて、破綻してしまう。

それほど難しい水道管の生産を大阪市から一手に引き受けたのが大阪砲兵工廠(こうしょう)だ。大阪城の北東一帯にあった官営の軍需工場で、武庫川女子大名誉教授の三宅宏司さんによれば「日本で最高水準の技術者がそろっていた」。主に大砲を造っており、砲身の技術を応用できるという見立てもあった。

水道開通の2年前から生産を始めたが、敷設工事に追いつかない。なかでも口径が小さい水道管は寸法のばらつきが出やすく、品質基準をクリアできたのは6割にとどまった。さらに日清戦争の勃発で忙しくなり、最終的に納入できたのは当初予定の半分弱。残りは急きょ、輸入品に切り替えざるを得なくなった。

それでも国産化の意味合いは大きかった。砲兵工廠で培われた鋳造技術を発展させたのが久保田鉄工所、現在のクボタだ。「外国人にできることが日本人にできないはずがない」。社史によれば、創業者の久保田権四郎は砲兵工廠出身の工員などからヒントを得て、独自の量産方式を確立。水道・ガスの普及とともに成長していった。

「砲兵工廠では戦争が終わるたびに大幅な人員整理があり、優秀な工員が民間に流れた」と三宅さん。関西にはクボタ以外にも、砲兵工廠の技術を受け継いだ企業は多い。大阪市民を苦しめたコレラも、上水道が引かれるとピタリと止まった。

130年近くたち水道管の多くは入れ替わったが、大阪城の堀はほぼ当時のまま。文化財保護のため地中にも埋めず、使い続けているという。誰の手によるものか、表面には風景に溶け込むよう石垣のイラストまで描かれている。無粋どころか、いとおしく見えてきた。

(高橋圭介)

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