BEAUTY / WELLNESS

パフォーマンスもUP! 医師が解説、自律神経を整える5つの鍵。【美容のモヤモヤをすっきり解決】(後編)

前編では、大切だとは思いつつも、ぼんやりしたイメージになりがちな“自律神経とは?”について2人の専門家に教えてもらった。中でも示唆に富んでいたのが、自律神経は「一生付き合う相棒」であるという事実。生活習慣を整えて良い関係を築けば不眠や疲労感、頭痛といったトラブルを防げるし、何よりパフォーマンスも上がる。この後編では、整えるための具体的なメソッドを紹介。鍵となるのは、睡眠・食事・運動・骨格コンディショニング・呼吸の5つだ。

基本として、不規則になりがちな睡眠と食事をテコ入れしつつ、軽めの運動を。

一駅手前で降りて歩くだけでも自律神経を整えるための運動としては十分。Photo: Phil Oh/@mrstreetpeeper

精神科医の芦澤裕子先生が自身も大切にしている第一は、睡眠だ。「太陽の光を目に入れると体内時計がスタートするので、私は起きて少しでも光を浴びるようにしています。また、週に何回かの運動も、睡眠の質を上げてくれるので大切に。激しい運動である必要はなく、競歩よりもゆったりめで、鼻歌が歌える程度で20分程度歩けばOK。代謝がよくなり、疲労から回復しやすくなります」

次にポイントとなるのは、体をつくる材料=食事だ。心身の回復に欠かせないホルモンを合成するのも、神経伝達物質をつくるのも、すべて食がモトになっている。

自律神経を健康にするために摂りたい栄養素

  • 神経伝達物質をつくるタンパク質
  • セロトニンの合成に不可欠なビタミンB6
  • 脳神経の正常な働きを助けてくれるビタミンB12
  • セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質の原料=トリプトファン
  • ドーパミンをつくるのに必須といわれる鉄
  • ストレスを和らげ、興奮した神経を落ち着かせるGABA
  • 体の末端部分の血行量を増やして深部体温を冷やすグリシン

〈上〉レストランsioの鳥羽周作シェフとコラボレーション。1袋に栄養豊富な石垣島ユーグレナ5億個(約 500mg)配合。からだにユーグレナ ふりかけない理由がないふりかけ かつおのうまみユーグレ ナミックス(2.5g×16 袋入り) ¥926/からだにユーグレナ(0120-86-4907) 〈下〉吸収効率に重きを置き、1粒あたり9mgの鉄を高濃度に配合。ヘム鉄(60粒入り) ¥5,400(医療機関専売品)/エムエスエス(03-5366-0208)

「睡眠の質を向上させてくれる食品や栄養素として注目なのは、ユーグレナとグリシンですね。特にユーグレナはビタミンB6、B12、トリプトファン、鉄、GABAなどが豊富なので一度にバランスよく摂りやすいというメリットが。ふりかけタイプが手軽でおすすめです。ほか、食材でいうとビタミンB12が豊富な貝類、グリシン豊富なエビやウニ、それにトリプトファンが含まれる豆腐や納豆も積極的に摂って。また、女性は月経があるので貯蔵鉄の値が低いケースが多いもの。だるさやめまい、頭痛などが気になる場合はサプリなどで補ってください」

現代人の必修科目「骨格コンディショニング」とは。

どうしてもPC作業していると首や顎が前に出て猫背にるなど姿勢が崩れ、体に負担がかかりがちに。Photo: Morsa Images/Getty Images

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こういったベースづくりに加え、第4の鍵として総合内科・神経内科専門医の久手堅司先生が提唱し、注目を集めているのが骨格コンディショニングだ。「自律神経というとメンタルケアに結びつける方が多い。もちろん、ストレスから離れることも大切ですが、不調の原因を精神的なストレスだけに押し付けるのはNGだと考えています。心の入れ物である体の歪みをケアするのも、自律神経ケアの近道です」。今回は、スマホやPCと首っぴきな現代人が、日常で簡単にリセットするコツをうかがった。

まずは、一日の大半を過ごしているであろう座り姿勢から。椅子に浅く座り、首の幅くらいに両足を開く。足首とひざの角度はそれぞれ90度にキープし、坐骨を立てるように座るのが基本だ。骨盤が立った状態で、その上に肩と耳を一直線に乗せるイメージで行うとやりやすい。目線が落ちてしまうならPCの高さを上げる、モニターを使うといった工夫も有効だ。

「PC作業でマウスを使うと、どうしても手首に負担がかかりがちに。私は左手側にもマウスを置いて、できる限り左右交互に使って負担を減らしています。また、少なくとも1時間に1回は画面から目を離し、立ち上がって軽く体を動かしています。疲労が蓄積しにくくなり集中力も高まるのでパフォーマンスが上がりますよ」(久手堅先生)

隙間時間に行う呼吸法で、自律神経を最速リセット!

さらに、そういった休憩タイムに深い呼吸を意識すれば、これも立派な自律神経ケアに。「自律神経は自分でコントロールできないのが基本。ですが、呼吸は唯一の例外。息を吸うときには交感神経が、吐くときには副交感神経が優位になるので、意識して自律神経に働きかけることができるのです」(久手堅先生)

久手堅先生が提唱する基本の呼吸法は2つ。ひとつ目はお腹に手を添え、3秒でお腹を膨らませ、3秒キープし、6秒かけて口から吐き切る腹式呼吸。休憩時に座ったまま行うだけでもでき、副交感神経を優位にする最速リセット法だ。休憩タイムはもちろん、疲れを感じた時、眠る前などにこまめに行うのがおすすめだそう。

逆に、集中力が途切れがちなときは、胸下に手を当てて肋骨が上がるような胸式呼吸を。この2つの使い分けは、呼吸が浅く交感神経優位になりがちな現代人にとって、必修科目といえそう。

一朝一夕では難しいけれど、日常のこまめな、そして自分でできるケアで改善へと向かうのが自律神経バランス。不調を寄せ付けず、健康に根ざしたビューティーを手に入れるために、“ちょこっと自活”を意識してみよう。

話を聞いたのは……
久手堅司
せたがや内科・神経内科クリニック院長。日本内科学会・総合内科専門医、日本神経学会・神経内科専門医、日本頭痛学会・頭痛専門医。「自律神経失調症外来」「頭痛外来」など複数の特殊外来を立ち上げ、中でも「気象病・天気病外来」「寒暖差疲労外来」が話題に。近著に『気象病ハンドブック』(誠文堂新光社・2022年9月5日発売予定)。

芦澤裕子
精神科医・市川メンタルクリニック院長。日本睡眠学会認定医、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、指導医。心療内科、精神科のクリニックにて精神障害、睡眠障害の治療にあたる。『GOOD SLEEP BOOK 365日ぐっすり快適な 眠りのむかえ方』(翔泳社)などを監修。

Text: Satoko Takamizawa Editor: Rieko Kosai