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家計・企業の中長期インフレ期待は底堅さ維持、日銀シナリオ支援か

更新日時
  • 日銀は家計のインフレ期待把握へ質問新設、企業は短期で弱含みに
  • 現実のCPIは鈍化見通し、賃上げ期待などで下支えされるかが焦点

日本の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比上昇率にはピークアウト感が出ているが、日本銀行が重視する指標の一つである中長期のインフレ期待は底堅さを維持している。

  日銀が12日に公表した「生活意識に関するアンケート調査」(6月調査)によると、1年後と5年後に物価が「上がる」と回答した人の割合はそれぞれ86.3%、79%となり、前回調査の85.7%、75.4%から増加した。毎年の物価上昇率については、平均値はいずれも前回調査から低下したものの、中央値は1年後が10.0%、5年後が5.0%と変わらず、家計のインフレ期待は横ばい圏での動きとなった。

  一方、日銀が3日に公表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、企業による中長期のインフレ期待の底堅さが示された。資源価格や輸入物価の下落を反映し、企業が想定する消費者物価の前年比上昇率は1年後が2.6%、3年後が2.2%と前回の2.8%、2.3%から鈍化した一方、5年後は2.1%と横ばいだった。

  持続的・安定的な2%の物価目標の実現を目指す日銀は、中長期のインフレ期待の動向を賃金や需給ギャップと共に重視している。家計と企業に対する6月の調査結果は、現時点で物価の基調が2%に向けて徐々に高まっていくとの日銀の見方をサポートする内容となった。

物価は「上がる」が足元で増加

出所:日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」を基に作成

備考:物価は「かなり上がる」「少し上がる」との回答割合の合計。単位%

  今回の生活意識アンケートでは、家計のインフレ予想の形成についてより理解を深めることを目的に、「5年後の物価が上昇すると考える理由」(複数回答可)を新たな質問に加えた。それによると、「最近上がっているから」が79.8%と最多で、次いで「中長期的に物価は上がるものだから」が35.1%となった。

  日本のインフレ期待は現実の物価動向の影響を受けやすく、2015年には原油価格の下落を受けたCPIの鈍化がインフレ期待を押し下げた。輸入物価の鈍化などで先行きのCPIはプラス幅を縮小していくと見込まれており、賃上げ期待の継続などが中長期のインフレ期待を下支えするのかが、日銀の金融政策を展望する上での焦点となる。

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