JALの見学施設が凄すぎる! 進化したスカイミュージアムに迫る!

日本航空(以下、JAL)の体験型施設「スカイミュージアム」の展示エリアがリニューアルした。大幅にアップデートされた展示内容とは?
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Hiromitsu Yasui

デジタル化で情報量大幅アップ!

JALは、社会貢献活動の一環として、体験型施設である「スカイミュージアム」(羽田空港メインテナンスセンタービル内)を一般公開している。今回は、約8年ぶりに展示エリアが全面リニューアルされた。

実は、7月にリニューアルは完了していたものの、新型コロナウイルス感染拡大のため、現在も、一般の工場見学は再開しておらず、オンラインでのみ「リモート工場見学」として新しい展示エリアが見学出来る。

JALの体験型施設「スカイミュージアム」は、写真の展示エリアにくわえ、格納庫も見学出来る。料金は無料。ただし現在は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一時休止中だ。

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リニューアルの主なポイントは3点で、(1)情報の更新、(2)多言語化、(3)バリアフリー化だ。リニューアルのためのプロジェクトは、2017年頃からスタートしたという。

(1)は、デジタル化によって、これまで以上に多くの情報を伝えられるようになったという。具体的には、大型のマルチディスプレイを導入し、現役社員が出演する仕事の内容紹介ムービーを流す。

新たに設置された大型のマルチディスプレイ。現役のJAL社員が出演し、仕事内容をわかりやすく紹介する。

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「文書の内容も見直しました。より仕事内容をわかりやすく、かつイメージしやすいよう、ストーリー仕立てに変更しました」

こう話すのは、JALスカイミュージアム担当者だ。これまでは、壁に印字していたため内容のアップデートが簡単に出来なかったという。マルチディスプレイの導入によって、情報量が飛躍的に増した。

展示エリアに掲げられた仕事内容の紹介文。写真は、飛行機のタイヤの重さについて記されている。

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展示エリアは、まず「空のお仕事紹介」ブースからはじまる。マルチディスプレイ前には電子スタンプラリー用のディスプレイ付き端末が置かれていた。従来、スタンプを各所に設置していたが、入館用のチケットに掲載されているQRコードをかざすことで、デジタル化。スタンプの代わりになり、かつJALや飛行機に関する豆知識が表示される。

ブースには、航空整備士や客室乗務員らが実際に現場で使っている道具などが展示されている。それらは、各部門の意向を汲んでいるそうだ。

「空のお仕事紹介」ブースは、航空整備士や客室乗務員の仕事内容について細かく説明する。

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JALの航空整備士が使う工具も展示されている。

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電子スタンプラリー用の端末。QRコードをかざすことで、従来の紙とスタンプを使ったスタンプラリーの代わりになる。

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QRコードをかざすと、飛行機に関する豆知識も表示される。

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たとえば、荷物を飛行機に搭載するコンテナに取り付けるフライトタグ(目的地などを記したもの)の展示は、空港での航空機の誘導、搭降載などを手がけるJALグランドサービスからの提案であったとのこと。展示内容は、JALグループ全体で考えられているのだ。

「見学者のなかには航空業界への就職を目指す人も多いので、そうした人たちがより業界への理解を深められるように内容を考えています」と、担当者は話す。

貨物コンテナに取り付けるフライトタグ(目的地・便名を記したもの)で、誤搭載を防ぐ。

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展示エリアの通路は、滑走路をモチーフにした表示がある。

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各仕事内容がひとめでわかる「お仕事マップ」もあった。

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空のお仕事紹介ブースを抜けると、ボーイング「737-400」のフライトシミュレーターの一部(コクピット・モックアップ)が置かれている。JTA(日本トランスオーシャン航空)が実際に沖縄で使っていたものを移設、展示した。操縦席に座ることも出来るし、スウィッチにも触れられるのが嬉しい。ただし、破損防止のため操縦桿などは固定されている。

ちなみに737-400は2019年に退役したため、移設が実現した。担当者によれば、現役の機材は、セキュリティの観点などから展示は難しいという。

ボーイング「737-400」のフライトシミュレーターの一部(コクピット・モックアップ)。

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JTA(日本トランスオーシャン航空)が沖縄でつかっていたものを、機材の退役に伴い、移設したという。

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コクピット・モックアップの側面には、JALのロゴが描かれている。

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コクピット・モックアップの奥には、機内で使われていたビジネス・クラスとエコノミー・クラスのシートが置かれ、着座可能だ。

ビジネス・クラスは、通常時とフルフラット時の2種類が用意されている。

かつて使われていた国際線のビジネス・クラスとエコノミー・クラスのシートも展示されており、実際に座ることができる。

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客室乗務員やパイロットの制服を着用出来るコーナーもある(新型コロナウイルス感染防止対策のため、見学再開後も当面はサービスを見合わせる予定)。

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期間限定コーナーもある。取材時は東京オリンピック・パラリンピック2020に関する展示があった。こちらは定期的に内容を見直していくという。

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当時のCMも見られるぞ!

歴代制服展示エリアは、全面ガラス張りに変更されたため、あらゆる角度から見られるようになった。そして、従来の展示から5点(新制服3点含む)、新しい制服がくわわった。

ずらりと並ぶ歴代の制服。

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全面ガラス張りに変更され、背後も見られるようになった。

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ひとつは「リゾッチャ」のものだ。1994年、“乗った時からリゾート気分”のキャッチフレーズを掲げ、ホノルル線などに投入されたのがリゾッチャである。ハイビスカスと南国の島が描かれたブラウスが斬新だ。

もうひとつは香港線クルー用の制服だ。1969年6月から1987年12月まで、一部の香港線クルーが着用したという。チャイナドレス風のデザインがユニークだ。

派手なブラウスが目を引くリゾッチャ路線専用制服。

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1969年6月から1987年12月まで、一部の香港線クルーが着用した制服。

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TDA(東亜国内航空)および改称後であるJAS(日本エアシステム)の制服も展示されている。

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ずらりと並ぶ制服はどれも個性的で、かつ世相を反映しているのがおもしろい。

たとえば、景気の良かったバブル期、1988年に導入された7代目(デザイナーは本井重信氏)の制服は肩パッドが入ったミリタリー調ダブルスーツで、帽子もあった。それが1996年に導入された8代目(デザイナーは稲葉賀恵氏)は、シンプルなシングルスーツに変更され、帽子も廃止された。

デジタルアーカイブズでは、JALが設立された1950年代から10年代ごとに、デジタル化された当時の広告や写真などを、壁に設置されたディスプレイで見られる。

デジタルアーカイブズでは、懐かしのグッズやCMが専用ディスプレイで見られる。

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たとえば1990年代のグッズには、JALオリジナルのジェニー人形やピンバッジなどがあったが、それらも見られる。

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ディスプレイの反対側には、ダグラス「DC-6B」の整備士必携日本語マニュアルや、幻となったコンコルドのJAL塗装が施されたモデルプレーンなどの貴重な品々が展示されている。

これまでより格段に充実した展示内容に、筆者もつい、取材を忘れて見入ってしまった。

歴代機材のモデルプレーンも展示されている。

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1960年代に導入された予約システム用のコンピューター。

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結局導入されなかったJALのコンコルドだったが、モデルプレーンはつくられた。

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JASが「MD-90」を導入するとき、映画監督の黒澤明氏に機体デザインを依頼した。そのとき、黒澤氏が実際に描いたデザイン画も展示されている。

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車椅子をご利用の方も展示物をより近くで見られるよう、ケース形状が工夫されている。

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新設された「フューチャーゾーン」では、未来に向けたJALの取り組みを、斬新な映像で見ることが出来る。

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担当者によれば、展示エリアの見学時間は1時間程度とのこと。人によっては「まったく足りない!」となりそうなぐらいの充実ぶりだった。それでいて、料金は無料だ。

展示エリアの一般公開開始は、新型コロナウイルスの感染状況などを見つつ判断するという。多くの航空ファン、JALファンの皆さま、もう少しお待ちください!

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文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)