スタグフレーション、大きな懸念の一つに浮上-債券市場は恐れず
Anchalee Worrachate、Liz McCormick-
BofAのマネジャー調査でスタグフレーションは懸念トップの一つ
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脅威は現実的でない-利回り曲線とブレークイーブンレートが示唆
世界経済への脅威として今週はスタグフレーションが浮上した。しかし経済の優れた審判である債券市場は恐れていない。
物価上昇と低成長の組み合わせは、インフレ加速は一時的でゴルディロックス的な成長軌道が続くという相場上昇を支える信念を揺るがす。
中国の成長エンジン変調の兆しとエネルギー価格の急上昇が不安をあおり、バンク・オブ・アメリカ(BofA)の世界ファンドマネジャー調査ではスタグフレーションのリスクが懸念材料トップの一つとして浮上した。ニュースでのスタグフレーションへの言及も少なくとも10年で最多となっている。
テーパリングはもう古い、旬の言葉はスタグフレーション-チャート
しかし、インフレ連動米国債が示唆する今後10年のインフレ期待は米連邦準備制度の目標付近の水準にあり、米国債のイールドカーブもフラット化しスタグフレーション期の傾向に逆行している。
ソシエテ・ジェネラルの米金利戦略責任者、スバドラ・ラジャッパ氏は「今はスタグフレーションの脅威は見えない。インフレの側面は気になるが、実質利回りは非常に低く、市場がそれを織り込んでいないことが分かる」と話した。
実際、価格圧力に敏感なデュレーションの長い債券の保有に対する不安は後退している。10年物米国債利回りはより期間の短い債券との比較で低下しイールドカーブはフラット化、スタグフレーション期のスティープ化の傾向と逆行している。
今後10年の平均インフレ率の予想を示す10年物ブレイクイーブンレートは過去1年に上昇し約2.35%となった。インフレ連動債は消費者物価指数(CPI)に連動するが、CPIは金融当局がインフレの指標とする個人消費支出価格指数を約40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上回る傾向があるため、市場のインフレ予想は当局の目標である2%に近いということになる。
ただ、債券市場が完全にゴルディロックスシナリオを見込んでいるかというとそうではない。10年物実質利回りは依然として大幅なマイナスで、成長への懸念を示している。短期市場が示すインフレ期待は長期の見通しを上回りインフレが一時的とする説の根拠になっていたが、そのギャップは6月時点に比べ約5分の1に縮小している。
それでも、1970年代のようなスタグフレーションを予想する悲観論者はいない。BofAのストラテジストらは最も悲観的なグループに入るが、成長下振れとインフレ上振れを予想しているだけだ。
G10戦略責任者のアサナシオス・バンバキディス氏は「70年代に見られたような2桁台のインフレ率と景気後退を予想しているわけではない。経済再開による現在の強いベース効果が薄れた後の来年のシナリオとして、成長の下振れとインフレの上振れが想定されるということだ」と述べた。
原題:
Stagflation Bogeyman Inspires Little Fear in Bonds at Low Yields(抜粋)