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トヨタ、コロナ前上回る営業利益へ-半導体不足でも強さ鮮明に

更新日時
  • 今期グループ世界販売は6.4%増の1055万台を計画-株価は大幅上昇
  • 発行済み株式の1.46%、2500億円相当の自社株買いへ-株式分割も

トヨタ自動車は12日、今期(2022年3月期)営業利益が前期比14%増の2兆5000億円と、新型コロナウイルス感染拡大前の水準を上回る利益を見込むと発表した。コロナ禍からの回復が鮮明になりつつあるほか、半導体不足による大規模な減産を回避するなどトヨタの強さが際立つ格好となった。

General Images of Toyota Motor Corp. Ahead of Full-Year Results

都内のトヨタ販売店(5月10日)

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  トヨタの近健太最高財務責任者(CFO)は同日のオンライン会見で、同社の業績見通しには半導体需給がひっ迫する現在の状況を「少しはリスクとして織り込んでいる」と説明。近氏は数十万台規模の大きな影響が出ることは現時点では想定していないとした上で、「まだ予断を許さない状況だと感じている」と語った。

  トヨタの営業利益予想はブルームバーグが事前に集計したアナリスト18人の予想平均値2兆6755億円を下回った。今期は為替変動による影響で150億円、販売台数の増加など営業面の努力で8500億円の営業増益要因となる。近氏によると、原価改善を行う計画であるものの資材市況の上昇が収益の圧迫要因となり、トータルの増益幅は約3000億円程度を見込んでいる。

2022年3月期業績予想
  • 売上高は前期比10%増の30兆円(市場予想29兆9442億円)
  • 営業利益は前期比14%増の2兆5000億円(市場予想2兆6755億円)
  • 純利益は前期比2.4%増の2兆3000億円(市場予想2兆3321億円)

  東海東京調査センターの杉浦誠司アナリストは、今期の見通しについて「先々の上方修正もにらみながら、3兆円も視野に入れながら数字を作ってきた」との見方を示した。半導体不足を乗り越える前提と原材料の高騰リスクを踏まえた見通しになっていると評価した上で、「保守的に見ていて、さらに上積みが出てくる可能性があるスタート、という数字を投げてきた印象」だと述べた。

  前日比下落で取引されていたトヨタの株価は午後1時25分の決算開示から急上昇。4月16日以来の高値となる前日比2.2%高の8523円で取引を終えた。

  世界各国の経済対策やワクチン接種の本格化などに伴いコロナ禍で落ち込んだ自動車販売は正常化に向かう中で、世界的な半導体不足などのサプライチェーンの混乱による減産の動きが相次いでいる。国内自動車メーカーでは日産自動車が11日、今期は半導体不足により約25万台の減産になるとの見通しを示した。

慎重に

  2月時点では半導体不足の影響は限定的としていたトヨタもその後、石油化学製品や半導体の不足などの影響で北米とチェコでの生産調整・停止を明らかにしたほか、カナダの工場でもサプライヤーでの問題で4月29日から生産停止している。

  近氏は、年初の計画から生産の上積みをしていく計画だったが、半導体不足の影響で「それを少し慎重に見ている状況」と述べた。

  近氏は、トヨタが現時点で半導体不足による大きな影響を避けることができている背景として、東日本大震災以降の減災の取り組み、在庫保有の見直し、代替品の評価の効率化などを挙げた。

  地震や仕入れ先での火災など「業績に大きな影響が出てもおかしくなかったことではあるが、それを乗り越えてここまでやれたのは、これまでの取り組み」が実を結んだ結果と語った。

  同社は自己株式の取得についても発表した。発行済み株式総数の1.46%に相当する4100万株、2500億円を上限に取得する。取得期間は6月18日から9月30日を予定している。また、投資単位当たりの金額を引き下げて投資家層を拡大するため、9月30日を基準日として1株につき5株の割合で分割すると発表した。分割後の発行済み株式総数は163億1498万7460株となる。

  子会社のダイハツ工業や日野自動車を含めた今期のグループ世界販売台数計画は前期比6.4%増の1055万台とした。通期の想定為替レートは1ドル105円(前期106円)、1ユーロ125円(同124円)。

原材料価格高騰

  半導体を巡っては、ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で3月に火災が発生し供給不足が深刻化するとの懸念が高まった。同工場は4月中旬に稼働再開したが、ルネサスは先月19日、出荷が被災前の水準に回復するには時間を要するとの見通しを示した。

ルネサス車載半導体のフル出荷、当初より最大10日程度の遅れも (1)

  野村証券の桾本将隆アナリストは先月、ルネサス工場の火災に伴う半導体不足の深刻化で、日系自動車メーカー7社の世界生産は今期上期(4-9月期)に135万台減少すると予想した。下期(10-3月期)に減産分の約7割相当を増産で挽回可能と見込むものの、通期では全体で3000億円の営業減益要因になると試算した。

  自動車業界が直面する不透明要因は半導体供給にとどまらない。トヨタ系の部品メーカー、デンソーの松井靖経営役員は4月28日の決算会見で、半導体の需給ひっ迫のほか、コロナ感染拡大による工場の操業への影響や値上がり傾向にある原材料価格や物流費を今期の不透明要因として挙げた。

  ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストも半導体や貴金属といった「原材料価格が上がって苦しいのは、どこの自動車会社も言っている」と指摘。また、コンテナ不足により本来なら海上輸送していた半導体を航空輸送に振り返ることが頻発しており、物流費の増加につながっているという。

コロナ禍乗り越え

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出典:トヨタ自動車

(トヨタ幹部や識者コメントなどを追加して更新します)
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