BEAUTY / EXPERT

vol.1「介護脱毛」にさようなら【連載・内なるエロスの高め方】

美容編集者歴30年。あらゆる角度でビューティーを分析してきた麻生綾が縦横無尽に、真面目に、色とりどりに「エロス」を語る連載がスタート。初回のテーマは脱毛、そして、現代女性たちと官能の関係値について。

エロスを忘れちゃいないかい?

結ばれてはいけない関係だからこそ求めあってしまう。映画『運命の女』(2002)より。 Photo: ©20th Century Fox Film Corp. All rights reserved

“ご無沙汰”な人が多い。私の周りは既婚・未婚の関係なしにほとんどがエロスから遠ざかっており、話題といえば体の不調と最近食べた美味しいもののことばかり。よく集まる親しい友人たちが皆50代というのもあるが、まあ徹頭徹尾、色気のないこと。もっとも、ではいまどきの20代、30代がお盛んかというと、それもどうやら違うみたいである。

ていうか、どの世代にも共通して見てとれるのは、その、いうなればエロス不足の状況にたいして不自由を感じていなさそうなこと。かといって、色事にまったく興味がないわけでもないらしい。ハテ……? 要は、現代人は老いも若きも忙しすぎるのだ。仕事も娯楽も24時間に収まりきらないほどあふれていて、性的なことを考える暇がない。つまり、しっかり意識しないとエロス、とりわけ生身のエロスが浮上してこないのが、このガワだけ発展しすぎた今の世の中なのだと思う。

一方で「フェムテック」ビジネスが隆盛である。次々と発売される関連製品、また百貨店などメジャーどころでのイベントも目白押し状態。「おおっと、ついに白昼堂々エロスの顕現か?」と一瞬喜んでみたものの、先行するのはあくまでテック=テクノロジーであり、女性の大事な部分について語りつつもなんだか無機質。ついでにあからさまに「お商売」のニオイぷんぷんのものもある。違う違う、違うのよ。私が求めるエロスとは、もっとこう、究極に有機的で、ぬめっと肉感的な存在……。

そう、エロスとは肉感であり湿り気であると思う。実際、いわゆるエロい行為はすべからく何らかの水分を媒介に行われるもの。生っぽさの極致というか、人と人、肌と肌の触れ合いなのだ。

また同時にエロスは炎であるとも思う。昔から個人的に恋愛種火説というのを説いていて、「種火を絶やさなければ再度火を起こす=たとえ失恋したとしても新しい恋を見つけるのはわりとカンタン。一方、種火を完全に消してしまうと着火にとても時間がかかるので、たとえ細々でも構わないから火(気持ち)を切らしてはいけない」と自分も含めてよくよく言い聞かせてきた。エロスも同じで、たとえ妄想だけでも常に焚きつけておかなければたちまち深いスリープモード、再起動に手間取ることになる。

VIO脱毛はセンシュアル

映画『セックス・アンド・ザ・シティ』(2008)で、ミランダはVIO脱毛をしていないことが発覚する。Photo:  ©New Line Cinema/courtesy Everett Collection

他人目線を意識した「モテ」から自分目線の「ご自愛」へ。ビューティーの目指すところ、あり方もここ数年でずいぶん様変わりした。次はどこへ行くのだろう。ちなみにご自愛という言葉にほんのりエロスの匂いを嗅ぎ取り、今後を期待してしまうのは私だけ?

ご自愛関連でいうと、少し話は逸れるがメジャーになりつつある「介護脱毛」という言葉が個人的にあまり好きではない。将来介護される立場=おむつになったとき用に、あらかじめオシモの毛を整えておきましょうということらしいが、なぜ素直に堂々と、VIO脱毛は今現在の自分の快適のため、あるいは快楽のためと言えないのだろう? 何に、誰に遠慮しているのか? だいたい目指すべきは死ぬまで現役のピンピンコロリであって、長々介護される未来が大前提というのはそもそも間違いなのでは?

VIOの脱毛自体は、ある種のエロス行為だと思う。私自身はブラジリアンワックス派なのだが、10年ほど前に「ベリッ」を初めて体験したとき、そしていまだに、施術後の「赤ちゃんの肌」にも勝るヤワな触感に浪漫とカタルシスを覚えている。まあ、同じ日本に生きているので、モソモソとした言い訳を必要とする状況もわからなくはないが、自分の毛くらい好きに処理できる世の中に進化してほしいなあ。この「介護脱毛」に限らず、世間さまを不必要に気にしがちな私たち。望むエロスの頂に到達するためには、まずは個の確立、抜本的な意識改革から始める必要がありそうだ。なにより「エロスは他人(ひと)のためならず」なのだから。

開眼、私の中のエロス

繊細かつ大胆。エモーショナルにエロスを刺激されるであろう、映画『ブラウン・バニー』(2003)。Photo:  ©Wellspring/courtesy Everett Collection

とはいえ、かくいう私も決してエロスの達人というわけではない。むしろ、こうしてお題として与えられたことで初めて真正面から向き合おうとしているビギナーである。というわけで、さあさ皆さまもご一緒に! もちろん、四六時中エロスにまみれるわけにはいかないが(そんなの仕事どころではなく社会的廃人まっしぐらである)エロスについて考える時間、触れる機会を少しでも取り戻し、増やすこと、それはより豊かな人生につながるのではないだろうか。

もっとも、ご無沙汰でも満ち足りて綺麗なひとはたくさんいるし、「色事を欠かすと老ける」がオブセッションになるのはいかがなものかとも思う。が、充実したエロスな日々を送っている人はなんだか艶やかに潤ってみえる……これまた事実であるように感じるのだ。

まずはエロスを疎かにしない。誰もが携えている、内包している自らのエロスにいま一度問いかけてみる。この月一予定の連載で、そんな“きっかけ”をつくっていけたらと思う。ご無沙汰さんもレギュラーさんも、あらためていざ官能の旅へ。どんなカタチであれ、ギフト(本能)はありがたく使わせていただきましょうよ。私たちの本質は「灰になるまで」なのだから。

本日の“エロスな”リコメンド
「ビューティアポセカリースパ バイ ダヴィネス」

おすすめのひとつが、大腿部、背中上、臀部、腰に加えVパーツがセットになった「ヴィーナス ビューティー」(50分 ¥8,800)。

内なるエロスの再起動、まずは他人の手に体を委ねる時間を持つことからスタートしてみては? 伊勢丹新宿店の地下の「ビューティアポセカリースパ バイ ダヴィネス」は、ヘッドスパ、全身トリートメント、そしてVIOゾーンを含む全身の脱毛ができる「ダヴィネス」「コンフォートゾーン」の国内唯一の直営スパ。買い物のついでに寄れるところも魅力。現在は女性専用だが、近日、男性も脱毛OKの日が設けられる予定。

東京都新宿区新宿3-14-1伊勢丹新宿店本館B2F ビューティアポセカリー内
03-3225-2830
営業時間/10:00〜20:00
https://davines.co.jp/shop/pages/ba_spa_menu.aspx

Profile
麻生綾 美容編集者歴は30年越え。『25ans』『婦人画報』(ハースト婦人画報社)、『VOGUE JAPAN』ビューティー・ディレクター、『etRouge』(日経BP)編集長を経て、現在はエディター、ビューティー・ジャーナリスト、エッセイストとして数々のエディトリアル、広告にて執筆やディレクション等を行う。その豊かな発想力を求め、多くのブランドがラブコール。日々移り変わる美容を、かわりやすく噛み砕き、時に新たな発想をあたえる美の伝道師的存在。

Text & Editor: Aya Aso Editor: Toru Mitani