デニムでドレスアップというコンセプトを立案し、選手たちそれぞれのコーディネートを担当した『GQ JAPAN』の森口德昭は、その狙いをこう語る。
「リベット付きの『ジーンズ』やブラウスのように丈短の『Gジャン』は、バスケットボールと同じく、アメリカで生まれたものです。ただ、これらのデニムは、日本で独自に進化していくことになりました。岡山と広島では60年代ごろからジーンズ産業が発展していき、いまや欧米のハイブランドが生産や加工を依頼しています。また、80年代後半から盛り上がるヴィンテージデニムブームを牽引したのは、ここ日本です。そこで、バスケ選手をデニムでコーディネートするアイディアが思い浮かびました。アワードなので、もちろんドレスアップはしながら。選手のみなさんのスタイリングには、アメリカで生まれたバスケットボールが日本に根付き、独自の文化を育んでほしいという願いを込めています」
森口によれば、基本的には、選手ひとりひとりに、日本のデニムブランドとアメリカのヴィンテージデニムを合わせてスタイリングしているという。「日本でアメリカ生まれのデニムカルチャーが成熟したように、B.LEAGUEというスポーツエンターテインメントが日本でさらに盛り上がってほしい」というのが、今回の衣装のコンセプトだ。
藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース)
1960年代生産のリアル・ヴィンテージデニムジャケットであるリーバイス 557XX(通称サード)は、世の中にあふれるGジャンの基本の形。そこに、日本のデニムブランドの雄、ウエアハウスのジーンズ「DD1003 1946MODEL」を合わせた。ヴィンテージさながらに色落ちしたジーンズのヒゲは、まさに日本のデニムのレベルの高さを証明するもの。アメリカンヴィンテージ×世界に誇る日本ブランドの仕上げは、タイドアップスタイルで。
ジャケット ¥198,000<LEVI 'S(ヴィンテージ )/ハンドレッド バイヤーズ>シャツ ¥26,400<Individualized Shirts/メイデン・カンパニー>パンツ 参考商品<WAREHOUSE&CO/ウエアハウス>
安藤誓哉(島根スサノオマジック)
日本有数の古着屋・ベルベルジンのディレクターを務め、またヴィンテージ・デニム・アドバイザーとしても知られる藤原裕が、自身所有のヴィンテージを絶妙にアレンジした「New Manual」というニューブランドを今年の4月にローンチした。安藤選手には、上下ともにこのブランドでコーディネート。ジャケットは通称ファースト(のTバック仕様)、ジーンズは1942年の501XXのオマージュ版。加工を担当した岡山県の「癒to Ri 18」が、高度な技術でヴィンテージを忠実に再現しているのが光る。
ジャケット ¥52,800、パンツ ¥52,800<ともにNew Manual/ニューマニュアル>タイ 参考商品<FAIRFAX/フェアファックスコレクティブ>ベルト ¥8,800<Tory Leather/メイデン・カンパニー>
古川孝敏(秋田ノーザンハピネッツ)
ジャケットは、東京コレクションでも話題の「SUGARHILL」。Z世代のデザイナーである林陸也が解釈するデニムは、エネルギーに満ちあふれ、デニム界に新風となりそうな予感。そこに合わせたのは、頂点にして原点、1950年代の501XXのリアル・ヴィンテージだ。新進気鋭のデザイナーとヴィンテージの組み合わせから生まれるコントラストに注目を。
ジャケット ¥54,450<SUGARHILL/4K>パンツ ¥99,800<LEVI’S(ヴィンテージ)/ハンドレッド バイヤーズ>タイ ¥41,800<TIE YOUR TIE/タイ ユア タイ>
西田優大(シーホース三河)
9月に再度予約販売を開始予定だという「Johnmungdemim」は、ジョン万次郎ゆかりの土佐清水市が、ヴィンテージ・デニム・アドバイザーの藤原裕とJEANSFACTORY、そしてウエアハウスとトリプルコラボしたデニムプロジェクトで、1880年のブラウス(Gジャン)を範にしている。コーディネートを担当した『GQ JAPAN』の森口は、自身のSNSのフォロワーから「西田選手とジョン万次郎が同じ四国出身だからですか?」というメッセージをもらったそう。「ナイス・アイディア!! 偶然ですが、そういうことにしておきます」と返信したという。
ジャケット 参考商品<Johnmungdenim/ウエアハウス>パンツ ¥217,800<LEVI’S(ヴィンテージ)/フェイクアルファ>タイ 参考商品<FAIRFAX/フェアファックスコレクティブ>
田臥勇太(宇都宮ブレックス)
大阪のカジュアルブランドDEVISE FACTORYのデニムシャツとジーンズを着こなした田臥。合わせたジャケットは、ラングラーの60sヴィンテージジャケット「111MJ」(セカンドモデル)だ。この片ポケットのジャケットは、やや丈が長いため、ドレッシーな雰囲気。常道のオックスフォードのシャツではなく、デニムのシャツ&ボウタイと合わせることによって新鮮な雰囲気に。
シャツ ¥24,200、パンツ ¥24,200<DEVISE FACTORY/ディバイスファクトリー>タイ ¥13,200<giraffe/スマイルズ> ジャケットはスタイリスト私物
中山拓哉(秋田ノーザンハピネッツ)
ジーンズは、富山のヴィンテージショップ「Matin」のオリジナルで、大戦時代のデニムを復刻させた1本。合わせた色落ちの良いカバーオールは、「HERCULES」のリアル・ヴィンテージ。「HERCULES」はデニムの3大ブランドから外れるマニアックなブランドだけれど、それだけに、アメリカのデニム産業の裾野の広さを感じる。「Matin」のような優れたショップが富山にあることは、日本のデニム文化の層が厚くなっていることの証拠だろう。
ジャケット 参考商品<HERCULES/10Rivet>パンツ ¥36,080<Matin/マタン>シャツ ¥20,900<Brooks Brothers/ブルックス ブラザーズ ジャパン>タイ ¥26,400<TURNBULL & ASSER/ヴァルカナイズ・ロンドン>
宮崎恭行(ファイティングイーグルス名古屋)
ジーンズは、尻ポケットがアーキュエイトステッチになった、「Lee 101 Cowboy」の大戦モデルで、今回コーディネートしたアイテムのなかで最高額となる100万円オーバーの超希少品。同じく大戦期のジャケット「Lee COWBOY JKT WWII-2nd」を復刻した人気ブランドNEXUSⅦ.の1着を合わせ、日米のデニムの歴史を融合させた。
ジャケット 参考商品<ネクサスセブン>パンツ ¥1,100,000<Lee(ヴィンテージ)/ベルベルジン>タイ ¥15,400<giraffe/スマイルズ>
磯野寛晃(熊本ヴォルターズ)
当時の生地を分解・解析することが得意なこだわりのブランド「ジェラード」。こちらは彼らが復刻した大戦時代のデニムジャケットだ。物資が困窮していた時代のモデルが原型なので、余計な生地を使わないようにポケットにはフラップがない、いま市場でもっとも人気のあるカタチ。薄×濃のバランスを考えつつ、同じくジェラードのジーンズを合わせた。
ジャケット ¥40,480、パンツ ¥30,250<ともにJELADO/ジェラード>
富樫勇樹(千葉ジェッツ)
千葉ジェッツのスーパースターである富樫選手に敬意を評して、千葉の「YMFACTORY」がアメリカ陸軍のプルオーバーデニム&デニムパンツをモチーフにしてオリジナルで作ったアイテムを選んだ。そこに、1940年代のアメリカ海軍のヘチマジャケットをコーディネート。
ニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)
オーバーサイズのジャケットが大ブームになっていることから、身長207cmのニックにぴったりのサイズの商品も増えている。507XX(通称セカンド)のジャケットはサイズ46でニックにジャストフィット。ジーンズのL36もドンピシャで、まるでオーダーメイドしたかのよう。
ジャケット ¥38,500、パンツ ¥30,800<ともにLevi’s®︎ Vintage Clothing/リーバイ・ストラウス ジャパン>タイ ¥14,300<giraffe/スマイルズ>
ドウェイン・エバンス(琉球ゴールデンキングス)
ジャケットはLee 101の復刻モデル。ニックと同様に、デカGジャンブームのおかげでサイズには困らなかった。パンツはリアル・ヴィンテージで、Leeというブランドの歴史がこのコーディネートには詰まっている。
ジャケット ¥16,500<Lee/エドウィン・カスタマーサービス>パンツ ¥87,780<Lee(ヴィンテージ)/ベルベルジン>タイ 参考商品<FAIRFAX/フェアファックスコレクティブ>
クリストファー・スミス(千葉ジェッツ)
スミス選手はラングラーでコーディネート。1950年代のセットアップを復刻したジーンズは左綾織りで、柔らかな着心地が特徴。右綾織りのリーバイスとはまた異なる魅力がある。
ジャケット ¥19,360、パンツ ¥14,520<Wrangler/エドウィン・カスタマーサービス>タイ ¥16,500<giraffe/スマイルズ>
Photos: Utsumi
Hair:Chika and artifata team
Make-up:Tomoe and artifata team
Styling :Noriaki Moriguchi
Styling Support:Atsushi Tanabe
Words:Takeshi Sato