エンターテイナー、城田優が語るリアルタイムの尊さ

ジャンポール・ゴルチエの幼少期から、トップデザイナーとして躍進していくまでの激動を描いた自叙伝エンターテインメントショー『ファッション・フリーク・ショー』が大好評で幕を閉じた。スペシャルゲストを務めた城田優は、いつも新しいミュージカルにどのような気持ちで臨むのか。エンターテイナーとはなにか。話を訊いた。
エンターテイナー、城田優が語るリアルタイムの尊さ

心を開放することで生まれるものがある

ジャンポール・ゴルチエの半生を描き、200着を超えるオートクチュールの衣装が舞台を彩る豪華絢爛な演出が話題を呼んだミュージカル、『ファッション・フリーク・ショー』の日本公演が閉幕した。本作にスペシャルゲストとして登場したエンターテイナーの城田優が、公演を振り返る。

──オファーがきたときの率直な感想を聞かせてください

城田 嬉しかったです。今、ワールドワイドな活動を視野に入れているので、世界で興行されている作品に携わることができ、とても勉強になりました。じつは、これまでファッションデザイナーのジャンポール・ゴルチエについては、ブルーのボーダー柄の服の印象が強いくらいで、深く知らなかったんです。でも今回、衣装を通じて、彼のめちゃくちゃ攻めたアバンギャルドさがわかり、さらに実際に本人にお会いしたら、とても話しやすくて気さくなチャーミングな方で、一瞬のうちに大ファンになりました。

──ビッグタイトルに出演する際、なにか特別な準備はしますか?

城田 今回に関してはとくにありません。『ファッション・フリーク・ショー』ではモデルの役として出演しました。開演時から客席に座って待っていて、舞台の途中でスポットライトがぼくにあたり、そこから劇に参加するサプライズのような役割です。

当初は体重を落としてモデルらしさを強調するのもいいのかなと考えました。でも、今回の作品での僕の立ち位置は、舞台上で特別に何かをするのではなく、演出に花を添える役割だと理解したので、そのまま飾らずに出ることにしました。役に寄せたり、作ったりするのではなく、自然体です。

この作品は、世界中で公演されてきた名作ですから、練りに練られた演出で、役者やモデルもベストな状態で登場してパフォーマンスをします。なので、自分自身もミュージカルを盛り上げるひとつのピースとしての役割を意識しました。

ジャケット 34万1000円、シャツ 6万8200円、パンツ 18万5900円、タイ 4万700円、シューズ 11万6600円(予定価格) (すべて DOLCE&GABBANA / ドルチェ&ガッバーナ ジャパンTEL:03-6833-6099)

──城田さん自身、エンターテイナーとして大事にしているのはどんなことですか?

城田 生(ナマ)でお芝居をさせていただけることの尊さですね。僕はミュージカルやコンサートのイベントなど、リアルタイムで演じたり伝えたりすることが多いので、一瞬一瞬に大きな価値を感じていますし、そこに惹かれるんです。スポーツの競技や試合と同じく、僕が携わるものは、そのときにその場所でしか生まれないエンターテインメントです。セリフの言い方や歌唱表現は、そのときのコンディションによって変わってしまうこともありますが、テンションを維持し、ベストパフォーマンスができるよう心がけています。

僕が物作りをするときには、何かを真似するのではなく、常に独創性のあるものを作りたいと思っています。今回、ゲスト出演させてもらった『ファッション・フリーク・ショー』は、ジャンポール・ゴルチエ自身がやりたいことをゼロから全力で作っている、という空気が感じられた現場でした。そんなショーに関われたことで創作意欲が湧きましたし、自分の心を開放して、やりたいことに全力で取り組むことが、観る人の心を動かすことをあらためて実感しました。エンターテイナーとして、この気持ちは今後も大事にしていきたいですね。

城田優はスクリーンの中よりも、演者の息遣いや躍動するカラダが目の当たりにできる「ショー」にこだわる。そして、その時にしか生まれない瞬間の熱量の高さを本人がいちばんよく知っている。自分のことを“舞台俳優”や“役者”ではなく、あえて“エンターテイナー”と称する城田優は、その道をどこまで極められるのだろうか。撮影中、レンズに映る瞳の奥に、静かに燃える強い意志を感じた。

城田優(しろた・ゆう)

1985年12月26日生まれ、東京都出身。2003年の俳優デビュー以降、テレビ、映画、舞台、音楽など幅広く活躍。近年の主な出演作に、NHK連続朝のドラマ小説『カムカムエヴリバディ』(語り手)、Amazon Primeドラマ『エンジェルフライト~国際霊柩送還士~』、映画『コンフィデンスマンJP英雄編』などがある。ミュージカルでは、第65回文化庁芸術祭「演劇部門」新人賞を受賞するなど、さまざまな賞を受賞。2016 年に『アップル・ツリー』で演出家デビュー。7月開幕のミュージカル『ファントム』では、演出・主演に加えてもう一役を務める“三刀流”に挑む。

文・オオサワ系 写真・ホシダテッペイ スタイリング・村井素良 ヘアメイク・花村枝美(MARVEE) 編集・岩田桂視(GQ)