オフホワイト(OFF-WHITE)の創設者である伝説的デザイナー、ヴァージル・アブローがもし生きていたとしたら、今年42歳になっていたはずだ。彼の後任でアート&イメージディレクターのイブラヒム・カマラは、2023年春夏ショーについて、「ヴァージル・アブローという人間の存在と、彼が残したレガシーを祝福したかった」と話す。
4月からこのポジションに就き、ブランドの前進に貢献することになった彼は、自分の役割、特に今回のコレクションについて次のように述べた。「オフホワイトの良さは、ブランドの細部にまで関わることができること。私の役割はイメージベースですが、このコレクションを作る際にデザインチームと一緒にリサーチしました。想像していたよりも幅広い範囲を任されていますが、やりがいのあるポジションであり、とても幸運に思います」
ヴァージルが生前から温めていた構想をもとに。
このコレクションは、ヴァージルが2021年に亡くなる前にスタートしたもので、人体の探求という当初のアイデアをもとにチームが完成させた。「ヴァージルは常に先を考えていました。彼はほとんど別世界にいたのです」とカマラは話す。
ショーには大勢の人たちが詰め寄せ、その中にはジョナサン・アンダーソンやマクシミリアン・デイヴィスの姿も。ショーが始まると、青いボディスーツに身を包んだダンサーたちが同系色のカーペットの上でパフォーマンスを披露。振付はニコラ・ユシャール、音楽はファティ・シ・サヴァネが手がけ、目が覚めるようなブルーの空間を作り上げた。
想像力豊かに探求する、人体の美しさ。
カマラと彼のチームは当初のコンセプトに従い、ヴァージルが築いたハウスコードを強調。腹部を露わにする穴は、パッチワークのレザードレスやワークウェア、シャツドレスなどに取り入れられた。また、スーツにはステッチで筋肉や内臓などが描かれ、X線写真のプリントをあしらったデニムなども登場した。
ニットウェアの中には、ホワイトのリブ編みが筋肉をマッピングするかのように施されたユニークなピースも。メンズでは美しいシルエットのスーツが多数披露され、そのテーラリング技術の高さにも視線が集まった。
“WORK IN PROGRESS(進行中/未完成)”であること。
オフホワイトらしさに溢れた「Work in Progress(進行中)」のコンセプトは、スラッシュの入ったテーラリングや糸の綻びをわざと見せたパファージャケット、「Out Of Office」スニーカーなどで体現された。ウィメンズシューズの中で最も目立ったのはスリンキースプリングをモチーフにしたヒールで、同ブランドならではのイノベーションが光る。
今回のコレクションには、ヴァージル・アブローという一人のアーティストによって築かれたレガシーが依然として生き生きと表現されていた。「このショーはセレブレーションであり、また希望でもあります。希望とは扉を開くことであり、それはヴァージルが最後の最後まで見事にやり遂げたことです」と語るカマラの言葉は、私たちがこのブランドの未来へ抱く期待を膨らませてくれる。
Text: Luke Leitch Adaptation: Motoko Fujita
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