アダニ不正疑惑、インドの国家的問題に-グローバル投資家心理も懸念
Subhadip Sircar-
インド政府と証券取引委、中銀が相次いで不安の沈静化に週末動いた
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S&Pはアダニ傘下2企業の格付け見通しを「ネガティブ」に下げ
アジアの富豪ゴータム・アダニ氏率いる新興財閥アダニ・グループの不正会計疑惑に端を発する混乱が3週目に突入した。傘下企業の株価が暴落するなど動揺が広がる中で、インド経済全体や、同国に対するグローバル投資家の心理に影響が波及しかねないとの不安を沈静化させるため、インドの政策担当者や規制・監督当局が週末介入に動いた。
インドの規制・監督機関には独立性と、影響に対処する能力があるとモディ政権当局者は主張。インド証券取引委員会(SEBI)は市場の信頼性確保にコミットしていると声明を発表した。インド準備銀行(中央銀行)も金融機関のアダニ・グループへのエクスポージャーが制限の範囲内にとどまっていると確認した。
米投資会社ヒンデンブルグ・リサーチが不正会計疑惑をリポートで指摘した1月24日以降、アダニ・グループの時価総額は約半分目減りした。アダニ側は疑惑を再三否定し、法的措置を警告している。
アダニの利害は多くの場合、政府の成長プランと複雑に結びついており、政府の答弁を求めて議会の審議が中断するなど、今回の混乱は既にインドの国家的問題になっている。最大野党も沈黙を守るモディ首相への圧力を強め、小口投資家へのリスクを訴えるため、全国規模の抗議行動を6日に計画している。
アジア有数の資産家ウダイ・コタク氏は「最近の出来事」でインドの金融システムにシステミックリスクが生じるとは考えないとしながらも、デットファイナンスとエクイティファイナンスの両面で大企業はグローバルな資金源に依存しており、国内での引き受け能力の強化が必要だと指摘した。
インドの有力財閥マヒンドラ・グループのアナンド・マヒンドラ会長は、ビジネスセクターの今の困難な状況が、世界の経済大国を目指すインドの大望を妨げかねないとの疑念に対し、「何があっても、インドがうまくいかない方に賭けるべきではない」と反論した。
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一方、S&Pグローバル・レーティングは、アダニ・グループ傘下のアダニ・ポーツ・アンド・スペシャル・エコノミック・ゾーンとアダニ・エレクトリシティー・ムンバイの格付け見通しを「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。S&Pは「グループのガバナンス(企業統治)情報開示を巡る投資家の懸念が、現時点での格付けへの織り込みより大きいリスクが存在する」と説明した。
原題:Adani Saga Enters Third Week as Officials Jump in to Calm Nerves(抜粋)