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都心の超高級マンションがスーパーリッチに人気沸騰-円安や低金利で

  • KITAのペントハウスは約71億円、麻布台ヒルズは200億円で売却
  • 供給不足のほか、インバウンドや往来再開も寄与とサヴィルズ
麻布台ヒルズプロジェクトの「アマンレジデンス」のリビングルーム
麻布台ヒルズプロジェクトの「アマンレジデンス」のリビングルーム Source: Aman Group

ぜいたくな買い物の選択肢に困らない東京で超高級マンションの少なさは外国人投資家を長年当惑させてきたが、そうした状況が変わり始めている。今や円安と低金利を背景に、素晴らしい眺望やプール、24時間のコンシェルジュサービスを備えた新たな不動産開発物件が国内外の投資家に買われている。

  幾つもの賞を受賞している建築家の隈研吾氏が設計した複合施設「The KITA(ザ・キタ)」のペントハウスが先週、約5000万ドル(約71億円)で売却されたと、バンクーバーに本拠を置く不動産開発会社ウエストバンクが明らかにした。広さ507平方メートルで屋上インフィニティプール付きの同物件からは、近隣の明治神宮を囲む緑豊かな森が見える。

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建築家の隈研吾氏が設計したThe KITA
Source: Westbank Corp.
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The KITAの住戸のリビングルーム
Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  これに先立ち、三井不動産は総戸数1002戸の「三田ガーデンヒルズ」の販売を開始し、2月には3ベッドルームの物件が5億9000万円で売り出された。首都圏の新築マンションの平均販売価格が3月に前年同月比で倍増したのは主にこのためだと広く考えられている。不動産経済研究所によると、値上がりペースはその後緩やかになったものの、4月は60%、5月は48%の伸びが続いた。

  サヴィルズ・ジャパンの金子哲也氏(マネジングディレクター、リサーチ&コンサルティング)は、供給が著しく不足していると指摘。インバウンドと海外との全面的な往来再開も寄与したとの見方を示した。

  プライバシーを求める日本の富裕層はプライベートバンカーの助けで、非公開物件をオフマーケットで取引することが多い。新築高級マンションでは価格の詳細は秘密にされる傾向にあるが、大規模で高級な開発物件の目を見張るような価格をいつまでも秘密にしておくことはできない。

  森ビルは、六本木の中心部に近い「麻布台ヒルズ」プロジェクトを年内に完成させる予定。総戸数1400戸のうち、91戸が「アマン」ブランドのレジデンスだ。サヴィルズによれば、64階建てのタワーのペントハウス1戸はおよそ200億円と、国内の分譲マンションの過去最高額で既に売却されたという。

  同じく森ビルが手掛ける「虎ノ門ヒルズ・レジデンシャルタワー」はもっと控えめな予算の資産家向けで、ある不動産業者の話では、東京タワーが見える3ベッドルームの住戸が8億9000万円で転売されている。

Roppongi Hills Topping Out Ceremony In Tokyo, Japan On April 08, 2002.
完成前の六本木ヒルズ(2002年)
Photographer: Kurita KAKU/Gamma-Rapho/Getty Images

  森ビルは、東京都心部における広大な複合施設開発のパイオニアだ。2003年開業の「六本木ヒルズ」プロジェクトは、日本の裕福な住宅購入者に高層ビルの魅力を紹介したことで知られる。

  従来、富裕層の多くは目立つ物件を避け、東京西部の閑静な戸建てを好んでいた。都内の不動産を求める資産家は、都心のビジネス街にあるマンションよりも、広尾や麻布といった比較的閑静で昔ながらの高級住宅街にある目立たない住宅を選ぶことが多かった。しかし、資産家の住まいの中心は郊外から新宿や六本木などの地域に確実に移ってきているとサヴィルズはみている。

  業界の専門家や幹部によれば、変化の一つはこの数年間に自社を上場させた若い技術系起業家の台頭だ。麻布台のレジデンスを購入する典型的な日本人は40-50代の会社創業者だと、森ビルの住宅事業部事業推進部長、安島幸世氏は語った。現金で支払う人もいるが、日本銀行の緩和スタンス長期化で借り入れコストは最小限に抑えられている。

  ブローカーらは、日本をセカンドハウス向けの安定した魅力的な場所と考える海外購入者からの需要の高まりも挙げている。中国のアリババグループの共同創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は20年に中国当局を批判した後、日本で過ごす時間を増やしているが、こうしたケースは同氏だけではない。

  東京に本拠を置く不動産会社ポスト・リンテル・インベストメント・マネジメントでは、高級住宅の取引がこの2年で約40%増えた。ファンドやファミリーオフィスと連携する同社のジョーイ・ヤン代表取締役は、香港やシンガポール、台湾の裕福な顧客は資産を分散化して中国を巡る地政学的な緊張の高まりから身を守ろうとしていると述べた。

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The KITAのペントハウスが先週、約5000万ドルで売却された。他の住戸も大半が売却済み
Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg
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The KITAは原宿の繁華街に近い
Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  こうしたアジアの富裕層の多くは、現金で支払うか、日本に支店のある外国の銀行で低金利ローンを組む。日本では外国人の不動産所有に対する規制がほとんどなく、円安でかなりお買い得になるのは確実だと仲介業者らは語る。

  主に外国人顧客向けサービスを提供するジャパン・プロパティ・セントラルのゾーイ・ワード最高経営責任者(CEO)は「円安が続いているほか、中国や香港の政治情勢を受け、多くの人々が資金を海外に移している」などと話した。

  高級不動産の定義は国によって異なるが、日本では通常100平方メートルを超えるマンションを指す。数百万ドルのより小規模な住戸も、スポーツジムやコンシェルジュなどの施設・サービスが付いていれば、高級物件とみなし得る。超高級物件は超富裕層向けのさらに高級な住宅を指し、販売価格は通常1000万ドルを上回る。

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虎ノ門ヒルズ・レジデンシャルタワーのライブラリー
Source: Mori Building Co.
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虎ノ門ヒルズ・レジデンシャルタワーのプール
Source: Mori Building Co.

  階層にかかわらず、東京の高級マンションは他のグローバル都市の類似物件よりも手頃な価格と考えられている。ナイト・フランクの年次報告書によると、予算100万ドルの購入希望者が東京の一等地で取得できるスペースはニューヨークの2倍、香港の3倍に上る。

Tokyo Offers Bigger Space For Your Buck

Square meters of prime property US$1m can buy in selected cities

Source: Knight Frank

  長年のデフレと低調な経済成長を経て、日本のインフレは人件費と原材料費の上昇を背景に回復しつつあり、不動産市場にとって追い風となっている。最近の資産価格の上昇は、マンションの価値が売却後も維持されているか上昇し始めていることを意味する。

  ポスト・リンテルのヤン氏も個人的な投資として都内で複数のマンションを購入しているが、最近の類似物件の売買から判断して、20年に購入した高級物件1戸の価値は2倍近くに上昇したと考えている。

  リスト サザビーズ インターナショナル リアルティのシニア・グローバル・リアルエステート・アドバイザー、髙野友紀子氏はこうしたトレンドについて、購入希望者の考え方が大きく変わったことを意味するとして、不動産を現実的で潜在的な利益をもたらす投資とみなす人が増えてきていると説明。ようやく日本でも不動産がコモディティーだと認識されるようになってきたと指摘した。

原題:The Super Rich Are Snapping Up Tokyo’s New Ultra-Luxury Homes(抜粋)

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