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「同性婚の法制化は素晴らしいこと。関係ない人には、ただ今までどおりの人生が続くだけ」──NZの元議員の言葉が心に響く(Mina Oba)

同性婚の法制化とは、「愛し合う二人の結婚を認めよう」と、ただそれだけのこと。反対意見や差別的な意見に驚くこともあるけれど、ツイッターで話題となっているニュージーランドの元議員2人のスピーチから、希望を感じた私の話。

2023年のグラミー賞でパフォーマンスをしたシンガーソングライターのブランディ・カーライル(左から2番目)。 妻のキャサリン・シェパード(右端)が子どもたち2人とともにプレゼンターとして登場し、ステージでブランディを紹介した。Photo: Stewart Cook / CBS via Getty Images

世界から見たら、日本は同性婚やLGBTQの権利を認めない異質な国と見られてもおかしくない。

2月1日の衆院予算委員会で岸田文雄総理が「家族観や価値観、そして社会が変わってしまう課題」と発言し、さらに3日の夜に荒井勝喜首相秘書官が「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」「秘書官室もみんな反対する」などと記者団に話したと報じられた。何の疑いもなく、こうした差別的な発言をしてしまう政治家に驚きを隠せない。

でも、保守派の政治家を中心に、同性婚の導入に対する反対派の声が依然として強く、実現への道のりは困難を極めているが、もしかしたら、今私たちはポジティブな変化の過程にあるのかもしれない──そんな希望を、ツイッターで話題となっているニュージーランドの元議員2人のスピーチから抱いた。

同性婚が法制化されても、関係ない人にはただ今までどおりの人生が続くだけ

2013年4月、同性婚を認める法案が可決されたニュージーランドで演説したモーリス・ウィリアムソン議員。Photo: Hagen Hopkins / Getty Images

2013年に同性婚を認める法案が可決されたニュージーランド。その最終審議の際に、モーリス・ウィリアムソン議員(2017年に引退)は、聖職者らから彼の元に届いた反対意見に対して科学的に、そして痛快に一掃しながら、愛と配慮を持ってこう語った。

「反対する人の多くは、この法案が社会にどういう影響があるかということに関心があり、心配しているのでしょう。その気持ちはわかります。自分の家族に起こるかもしれない『何か』が心配なんです。でも繰り返しになりますが、言わせてください。今、私たちがやろうとしていることは『愛し合う二人の結婚を認めよう』。ただそれだけです」

そして、「明日も世界はいつものように回り続けます。だから、大騒ぎするのはやめましょう。この法案は、関係がある人には素晴らしいものですが、関係ない人にはただ今までどおりの人生が続くだけです」と力強い言葉を国民に贈り、今朝雨が降ったニュージーランドの空には神のお告げとも言える「ビッグ・ゲイ・レインボー」がかかったことを紹介した。スピーチの最後には、「この法案を心配している全ての人のために、聖書を引用させて下さい。旧約聖書の申命記、1章29節です。『恐れることなかれ』」と締めくくった。愛あふれるウィリアムソンのスピーチは、今も「ビッグ・ゲイ・レインボーのスピーチ」として語り継がれている。

同性婚に反対票を投じた議員の謝罪

それから8年。またも、政界に残るスピーチが生まれた。2021年6月に議会で引退演説を行ったニュージーランドのニック・スミス議員は、当時反対票を投じたことを振り返り、「政治家を引退する前に必ず公式謝罪をする」という息子との約束を果たしたのだった。

「私はこの政治家人生で、最大の誤りを犯しました。それは2013年のことです。私は同性婚法案に反対票を投じました。でもその誤りはパーソナルなものになりました。私の20歳の息子はゲイでした。今日、私は議事録に謝罪を残すためにきました。ニュージーランドのLGBTQ+コミュニティへ、ここにて謝罪します。

ルイザ・ウォール議員(同性婚法案を提出)、フラン・ワイル議員(同性愛法を提出)、エイミー・アダムス議員(法務相で法案成立に貢献)──あなたがたのリーダーシップは、私の息子、そしてこの国の幾千の人々の命と生き方を守ってくれました。そしてジェニ・シップリ議員(NZ初の女性首相)、1999年に歴代首相として初めてプライドパレードに参加してくれたことに私はここに敬意を払います」

荒井秘書官は、同性婚の法制化を“マイナスなこと”と断言したが、10年前に同性婚を法制化したニュージーランドの前例をみて、同性婚が社会にもたらすポジティブな影響は明白だ。そんなニュージーランドは、2022年の世界幸福度ランキングで8位と上位に入り、かたや日本は54位。今、反対する政治家が、スミス議員のように考え方を変化させることを恐れないでいてほしい。

Text: Mina Oba