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配当に海外投資家が落胆するリスク-バブル後高値の日本株に冷や水か

バブル崩壊後の戻り高値を更新した日本株の株高エンジンがガス欠になるリスクがある。原動力の一つである株主還元の拡大期待に対して、配当が意外に増えていないとの分析が出てきた。

Tokyo Stock Exchange After Disclosing Market Reform
東京証券取引所
Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  「海外投資家を落胆させる可能性がある」。大和証券の阿部健児チーフストラテジストは、東京証券取引所が株価純資産倍率(PBR)1倍割れの改善などを要請して進んできた企業改革について、「改革スピードは海外投資家が求める水準に達していないのではないか」と話す。

  東証株価指数(TOPIX)採用企業を対象に1株当たり配当金(DPS)の2023年度市場予想を同氏が集計したところ、19日時点で前年度比1.3%増と、10%増だった22年度を下回る伸びが見込まれている。

1株当たり配当金予想、伸びず

出所:大和証券(TOPIX採用銘柄を集計し、指数に換算)

  4月から7週連続で日本株を買い越している海外投資家が期待する日本企業の株主還元姿勢がスピード感に欠けた改善となるなら、日本株好調の根底にあった増配への期待が揺らぎかねない。海外マネーの流入が一巡するリスクに注意が必要だ。

  みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは「PBRが1倍を割れている小さい企業では増配発表が見られたのに対し、大手では増配していないところもある」と指摘する。東証の要請を受けて資本政策の見直しを発表した企業は予想以上に多かったものの、23年度の総還元性向は18日時点で53.3%と22年度の54.3%から縮小するとみている。

  ただ、株主還元の拡充傾向が揺らいだわけではない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の原口右京ストラテジストは、新年度の増配予想企業はプライム市場全体の43%に上ることを挙げ、個社ベースではある程度東証の効果があると分析する。大和証の阿部氏も、一部企業は増配が市場で十分評価されていないため、今後の予想配当利回りの平均回帰の過程で株価上昇の可能性があると述べた。 

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