国内損保大手3社が脱炭素の保険業界連盟を脱退-欧州でも相次ぐ
佐野七緒、梅川崇-
東京海上HDとMS&ADは29日、SOMPOHDは25日に脱退
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脱炭素移行のための金融機関の連合体、足並みの乱れ目立つように
気候変動問題に取り組む保険業界最大の連盟「ネットゼロ・インシュアランス・アライアンス(NZIA)」から、国内損保大手3社が29日までに脱退した。同連盟については複数の米共和党の州司法長官から反トラスト法(独占禁止法)違反の指摘などを受け、海外で脱退が相次いでいる。
国内3社のうち、東京海上ホールディングスとMS&ADインシュアランスグループホールディングスは同日、脱退を発表。東京海上HDは脱炭素社会への移行に貢献する方針に変わりはなく、実現に向けた取り組みを今後も推進していくとした。
SOMPOホールディングスの広報担当者は25日に脱退したと明らかにし、ネットゼロへのコミットメントはゆるぎなく、今後もグリーン社会の実現に向けて取り組みを強化していくと話した。
NZIAは、脱炭素移行を目的にした金融機関などの連合体「グラスゴー金融同盟(GFANZ)」の傘下組織の一つ。GFANZは2021年に前イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏が設立を表明し、脱炭素への国際的な結束を示す象徴の役割も果たしてきたが、ここにきて足並みの乱れが目立つようになった。
NZIAを巡っては3月下旬にミュンヘン再保険が「重大な」法的リスクを理由に離脱して以降、メンバーの脱退が相次いでいる。5月に入り、フランスのアクサとスコール、ドイツのアリアンツなども離脱した。現時点で、NZIAのウェブサイトでは17社の加盟が確認できる。
NZIAは25日に緊急会合を開催。プロセスに詳しい関係者によると、米国で反ESG(環境・社会・企業統治)の動きが激化しNZIAが明確な標的にされたことから、一部のメンバーは同組織に属さない方が安全と最終的に判断したという。
GFANZ傘下組織で年金基金や生命保険会社が加盟する「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(NZAOA)」からも、昨年オーストリアの年金などが脱退した。
GFANZは、ブルームバーグニュースの親会社ブルームバーグ・エル・ピーの創業者であるマイケル・ブルームバーグ氏が共同議長を務めている。