2023年5月、メトロポリタン美術館のコスチューム・インスティテュートでは、カール・ラガーフェルドの功績を讃える展覧会『Karl Lagerfeld: A Line of Beauty(カール・ラガーフェルド: 美の系譜)』が開催される。ウェンディ・ユー・キュレーター・インチャージであるアンドリュー・ボルトンと、長年ラガーフェルドのそばで仕事をしてきたアマンダ・ハーレックは、ラガーフェルドの長きに渡るキャリアを約150点に集約するという困難な仕事を任された。しかし、今年はメットガラの参加者たちもキュレーターたちと共に、ラガーフェルドへのオマージュを捧げることになる。なぜなら、2023年のドレスコードは「In honor of Karl(カールに敬意を表して)」だからだ。
ベストドレッサーに選ばれるのは、誰のどのスタイル?
多くのゲストたちが一堂に会し、ファッション界の偉大なる人物の一人に敬意を表す瞬間だが、我々の目からすると、このテーマはさまざまな解釈が可能だ。ラガーフェルドはバルマン(BALMAIN)、パトゥ(PATOU)、クロエ(CHLOÉ)、フェンディ(FENDI)、シャネル(CHANEL)、そして自身のブランドと、数多くのメゾンでデザインを手がけてきた人物。そのため、彼のデザインには素材や時代、美意識など、インスピレーションを得るための豊富な情報が詰まっている。
これはつまり、共同ホストを務めるミカエラ・コール、ペネロペ・クルス、ロジャー・フェデラー、デュア・リパを含む参加者たちには、ラガーフェルドに敬意を表する装いとして3つの選択肢が与えられることを意味する。一つ目は、ラガーフェルトが率いていたブランドのアーカイブを身に着けること。二つ目は、彼が強烈な印象を残したシャネルとフェンディの今のアイテムを着こなすこと。そして3つ目は、ラガーフェルドの愛猫だったシュペット似の猫を見つけて、自身がラガーフェル風に装おうことだ。
ベストドレッサーに選ばれるにはどの方法が効果的か? やはりオリジナリティのあるルックだろう。ラガーフェルドは中途半端なオマージュを嫌ったであろうし、これだけ膨大なコレクションがあれば、ゲストたちはオンリーワンのスタイルを見つけるのに苦労はしないはずだ。
ヴィンテージにこだわるなら、ラガーフェルドがピエール・バルマン(PIERRE BALMAIN)のアシスタントを務めていた1955年から1958年のバルマンの服で登場するゲストに賛辞を送りたい。また、ラガーフェルドがヘッドデザイナーを務め、1960年代のスウィンギングな時代に突入した1958年から1963年までのパトゥの作品もおすすめだ。クロエに関しては、1963年から1983年まで、そして1992年から1997年まで、ロマンティックなクロエ・ガールを生み出した2つの時代から選ぶことができる。
そして、忘れてはならないのが、フェンディの存在だ。1965年以降、ラガーフェルドはローマの毛皮ブランドからレディ・トゥ・ウエアブランドへと転身したメゾンのデザインチームを率いてきた。彼が考案したダブルFのロゴとモノグラムデザインは、実は「フェンディ・フェンディ」ではなく、「ファン・ファー」を意味している。そのロゴ通り、彼のデザインには楽しさにあふれていた。ラガーフェルドはミンクを鮮やかな色に染め、キルトのようにパッチワークをし、質感を高めるためにファーの毛を短く剃った。ブランドが毛皮の使用を廃止するまで、彼は毛皮の可能性の限界に挑戦し続けたのだ。フェンディのレッドカーペット用のヴィンテージ服の多くは、今年のメットガラでも違和感なく着用できるだろう。
次はシャネルだ。1982年から2019年に亡くなるまでのラガーフェルドのシャネルへの想いは、彼の功績を鮮やかに彩った。服自体は白と黒の無彩色な色合いが多かったが。
シャネルのアーカイブからのオートクチュールやプレタポルテというチョイスは、レッドカーペットウォッチャーから喝采を浴びることだろう。リリー=ローズ・デップが着用したゴールドのチェーン付きドレス(1992年にクリスティ・ターリントンがランウェイで纏ったもの)や、2019年のメットガラでメアリー=ケイトとアシュレー・オルセンが披露した、シャネルのレザードレスを忘れた人はいないはずだ。
もちろん、現代のシャネルやフェンディの服も、期待を裏切ることはないだろう。いずれにしろラガーフェルドのファッションへの貢献を表現するか、彼そのもののスタイルを模倣するか、楽しみ方はさまざま。ゲストたちがどのようなスタイルを選ぶにしろ、やるべきことは一つ。ラガーフェルドに敬意を払うことだ。
Text: Lilah Ramzi Translation: Rieko Shibazaki Adaptation: Mamiko Nakano
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