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手描きでデニム風に!? バレンシアガ、トロンプルイユの小粋なウィットを潜ませて【2023-24年秋冬クチュール 速報】

バレンシアガ(BALENCIAGA)の2023-24年秋冬オートクチュールコレクションでは、目の錯覚を起こすアイテムに注目。オートクチュールならではのラグジュアリーな解釈とデムナならではのモダンなツイストが出会う。

7月5日(現地時間)、バレンシアガ(BALENCIAGA)の52回目のオートクチュールコレクションがパリのジョルジュ・サンク通り10番地で行われた。

今シーズンのファーストルックは、創設者のクリストバル・バレンシアガのオリジナルデザインを解釈したブラックベルベットのドレス。バレンシアガ本人が1964年から1968年に起用したモデルのダニエル・スラヴィックが着用して登場した。このドレスは、グレース・ケリーが40歳の誕生日パーティーで着用するために購入したというメゾンにとっても特別な一着である。

その後に続くのは、バレンシアガの真骨頂と言うべき建築的なテーラリング。クチュリエによるジャケットの裾のラインからインスピレーションを得たVネックライン、シャープなショルダー、シェイプされたウエストが象徴的。そして驚いたことに、その中の一部はチェックやピンストライプのウールのように見えるが、デニムで作られているというのだ。

このトロンプルイユ(だまし絵)の技法は、今回のコレクションのカギとなっている。大半が一見プレタポルテとさほど変わらないカジュアルウェアのようだが、ファーコートやデニム、レザーパンツに見えるアイテムは、アーティストがオイルペイントで手描きしたもの。その中のジーンズは、コットン生地に約220時間を要して描かれ、オートクチュールならではの究極のラグジュアリーな解釈とも言える。

さらに、風になびいているように静止したマフラーやコートは、革新的な裏地が内側に接着されており、熱したアイロンを使って手作業で形成したものだそう。

後半には、ゴージャスなイブニングウェアが登場し、約900時間かけて10,000個のクリスタルが縫い付けられたビスチェドレスもハイライトに。そして、極めつけはフィナーレの鎧ガウン。3Dプリントされた亜鉛メッキで作られ、最先端の技術とハンドクラフトの融合を体現した。

全体的に今シーズンのオートクチュールコレクションは、それを身につける本人のみが理解できる控えめなラグジュアリーが浸透しているが、バレンシアガでは、デムナらしいウィットに富んだ小粋な工夫が潜み、この上なく輝きを放っていた。

※バレンシアガ 2023-24年秋冬オートクチュールコレクションをすべて見る。

Photos: GoRunway.com Text: Maki Saijo