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国内勢と海外勢が同時に円債回帰か、金利低下圧力強まる可能性

  • 為替ヘッジコスト上昇で国内投資家は外債離れ
  • 海外勢は日銀政策修正観測後退で円債買い戻し

海外中央銀行の利上げで為替ヘッジコストが上昇する中、国内投資家の外債離れが進んでいる。日本銀行の政策修正観測をはやした海外勢の円債売りも収束しており、日本国債市場に国内勢と海外勢が回帰すれば、金利低下圧力が強まる可能性がある。

  財務省の統計によると、国内投資家は7月までに過去最長となる6カ月連続で海外の中長期債を売り越した。生命保険会社と年金マネーを示す信託銀行(信託勘定)は過去最大の売り越しとなっており、こうした資金の一部が円債に回るのではないかとの見方が出ている。一方、海外投資家は6月に2020年3月以来の規模で国内債券を売り越した後、7月は過去最大の買い越しを記録した。 

  SMBC日興証券の奥村任金利ストラテジストは、海外短期金利の上昇継続により、外債投資は数年にわたり調達コストが運用収益を上回るネガティブキャリーとなる可能性が高い一方、日本の30年国債利回りは1%台と生保の予定利率見合いで買える水準になっており、国内投資家の円債回帰の動きは「従前よりかなり出やすくなっている」と指摘。海外勢については「為替や市場機能の面で日銀が政策修正する可能性はなくなったと認識しているだろう」と言い、あらためて円債の売りを仕掛ける可能性は低いとみている。

海外勢は国内債買い越し、生保は外債売り越し
 
 

ヘッジコスト

  日本の投資家が米債投資に際して支払う為替ヘッジコストは足元3%台まで上昇。12カ月物のヘッジコストを差し引いた米10年債利回りは今週、マイナス1.1%とデータがさかのぼれる1999年以降の最低を付けた。

ネガティブキャリー
 
 

  一方、生保などの主な運用先である日本の超長期債利回りは約6年ぶりの高水準にある。インフレ高進や海外中銀による金融引き締め加速を背景とした世界的な債券売りが波及し、30年債利回りは6月に1.305%まで上昇。その後1.1%台まで低下したが、それでも年初の2倍近い水準を保っている。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは「7月に入り超長期債がすごく安定してアウトパフォームしたかというとそうでもなく、まだ様子見という印象」としながらも、「いったん外債を外したということは動きやすくなったということだ」と指摘。その上で、1.1%台の30年債利回りは「昔と比べればすごく高いので、買ってもいいという気分になっても不思議ではない」と話す。

ショートカバー

  海外の投資家が活用する10年物の円スワップ金利は、日銀の政策修正を見込んだ取引により6月中旬にかけて0.57%台と2016年のゼロ金利導入前の水準まで上昇したが、その後は低下基調が鮮明だ。日銀がイールドカーブコントロール(YCC)を維持するために大量の国債買い入れで徹底抗戦したためで、世界的な景気後退懸念の高まりも相まって、同スワップ金利は日銀が許容する変動幅上限の0.25%をわずか2ベーシスポイント(bp)上回る水準まで戻している。

  海外投資家は7月に国内債券を5兆581億円買い越した。みずほ証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジストは、緩和修正期待で売っていた物の買い戻しが大きいとした上で、海外勢は3月から6月に合計で10兆円近く長期債を売り越しており、「全てのカバーが終わっているかは不明」と説明。「今後もショートカバーがあるなら、当然日本の金利を押し下げる方向になる」と指摘している。

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