LIFESTYLE

5冊の本を同時に読むのがオススメ? ビヨンド・ミート創業者が学んだこと

植物由来の代替肉を製造する企業、ビヨンド・ミート。その創業者であるイーサン・ブラウンに、起業と事業の成長の中で得た学びを聞いた。

代替肉を製造する米企業ビヨンド・ミートの創業者イーサン・ブラウンは、同社を2009年に創業して以来、より良質な植物由来の代替肉製品を求めてチームと共に研究を続けてきた。彼の会社の商品は現在、世界80カ国以上で、約11万以上の販売経路を通して注文できるまでになったという。ブラウンに、これまでに得た7つの学びを紹介してもらった。

ビヨンド・ミートの創業者、イーサン・ブラウン。Photo:Getty Images

Brad Barket
1. 分野を超え、応用する

1つの分野のものを他の分野に応用する場合、その試みが初めてなのであれば、成功する可能性がある。

私はかつて、エネルギー分野の担当者として、(燃料電池の一種である)プロトン交換膜燃料電池を作っている会社で働いていた。米エネルギー省などの会議に出かけ、再生可能エネルギーで動く世界を作るのに必要な数千億ドル(数十兆円)規模の投資について議論していた。だから私は、世界的な問題を解決するために、世界最高峰のエンジニアや科学者を集め、その分野の専門家たちに取り組んでもらうというやり方に慣れていた。

食品事業には、私たちが参入する以前から、植物由来の代替肉製品の開発を行っている非常に才能豊かな人材がいた。しかし、そこに関与しているのは食品科学者だけだった。「食べ物」という範疇の取り組みとしてしか捉えられていなかったからだ。そんな中、私がやろうとしたのは、最高のエンジニアや科学者、十分な予算、大きな使命感を持って取り組むという考え方を、食品分野に応用することだった。

2. システムに頼る人ではなく、構築する人を採用する

会社で800人の従業員を雇用しているとしよう。フォードで働く人材を採用すると、その人は入社後に「ちょっと待て、この会社には正しいシステムがないじゃないか。信じられない」と言う。そこであなたは、その人をじっと見て「正しいシステムがあることをなぜ期待していたのですか? あなたの前の勤務先は(従業員が18万6000人の)巨大企業ですよ」と言わなければならない。この理由から、私たちは入社後に主体性を持って事業の成長を担ってくれる人材を求めている。

3. 失敗を隠さない

採用候補者が私との面接にまで至ると、私は履歴書に書いてあることを超えた部分での判断をすることになる。その人がどれほどこの仕事を求めているのか、逆境にどのように対処できるのかを見極めたいのだ。失敗かもしれないような出来事が履歴書に書かれているのを目にすることがある。起業を決めてキャリアを転換したものの、それがうまく行かなかったケースなどだ。失敗は隠すべきではないと思うし、非常に素晴らしい経験だと私は思う。私なら「この出来事について、どのように立ち直ったかについて教えてください」と尋ねるだろう。

ビヨンド・ミートの代替肉。 Photo:Getty Images

Don Bartletti
4. やはり知名度は重要

私は最初、レストランや病院、ホテル、大学に売り込むことから事業を始めた。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は2012年、1面の「サンデーレビュー」の記事で、当社が当時売り出していた代替肉チキン商品の品質について取り上げてくれた。

私はこの代替肉チキン商品の質にとても自信を持っていたため、アメリカ全土に営業チームを用意し、売り込みをしようとした。しかし、これは成功しなかった。私たちには、小売で売れるブランド力がなかったのだ。商品を販売するスーパーなどは、自分たちの顧客がこの商品を求めているのかどうかを知りたがっていたのだが、私たちの知名度は必要な水準に達していなかった。

たとえ多くの消費者が代替肉のある未来を望んでいたとしても、私が当時議論していた人たちはそれに追いついていなかった。私たちは「うちの会社は、ウォルマートやホールフーズなどで非常に高い人気を誇っています」と言えるブランドを構築する必要があったのだ。

5. 安全網をなくす

最高経営責任者(CEO)はリスクを取ることで報酬を得ている。事業を始める中でリスクを回避しようとし過ぎれば、求める成長を得ることはできない。まともとは言えないアドバイスだが、本当に成功を収めたかったら安全網を外さなければならない。そのため、別に仕事を持ちつつ片手間でやろうとするのは間違いだ。私は自分で経営状況すべてに目を通すうちに、より集中して事業に取り組めるようになった。

6. 仕事はリモートで十分とは限らない

この業界では、オフィスにいる必要がある。今取り組んでいることには非常に多くの課題があり、グループのつながりが必要とされるためだ。新商品を発売しようとしている時期は、会議内外でのちょっとした時間に大きな意味があり、非言語的なヒントやコミュニケーションが非常に重要だ。

従業員が離れた場所にいる状態でチームをまとめ、集中した取り組みを維持させることは難しい。(新型コロナウイルスの流行で)人々のスタンスは変化したと思うが、リアルで仕事をすることは私たちの事業の中では非常に重要な部分だ。

7. 多くの本を一度に読む

起業やイノベーションに関心がある人には、素晴らしい作家のスティーブン・ジョンソンがおすすめだ。ジョンソンが記している中で私が実践していることに、「短期間で立て続けに本を読む」ということがある。4、5冊の本を(同時に)読み、同じノートにメモを取る。こうすることで、脳が隣り合うものの間につながりを作り始める。

私のお気に入りの1冊は(ブラッド・ストーン著の)『The Everything Store(邦訳:ジェフ・ベゾス 果てなき野望――アマゾンを創った無敵の奇才経営者)』だ。また、サフィ・バーコール著の『Loonshots(邦訳:ルーンショット クレイジーを最高のイノベーションにする)』は、イノベーションの文化を生む方法について記した素晴らしい本だと思う。私はバーコールを講演のために会社に招き、とても感銘を受けた。また、私は年下の同僚に、ちょうどウォーレン・バフェットの『The Making Of An American Capitalist(邦題:ビジネスは人なり 投資は価値なり――ウォーレン・バフェット)』を送ったところだ。私は多くの本を読んでいる。読書をしない人がどのようにして新たなアイデアを生み出すのか、私には理解できない。

FROM: BRITISH GQ

翻訳:Shizuka Ideta

モチベーションを維持するために意識したい3つのこと
目標達成のためにモチベーションをキープするポイントは?最新の研究結果でわかったことをチェックしよう。