MUSIC

PARISAのいま聴くべき私的音楽プレイリスト──Vol.1 ジューンティーンス

新しくスタートするこの連載では、ロサンゼルスと東京を行き来し、70年代のソウルミュージックから最新のジャンルまでをプレイする実力派DJのPARISAが、いまカルチャーの最前線で聴かれている音楽を紹介する。初回のテーマは、奴隷解放記念日の「ジューンティーンス」だ!
TETSUO ISOWAKI
アメリカで盛り上がるジューンティーンス

Hi Everyone! はじめまして、PARISAです!

私は18歳のときから5年間、米・ロサンゼルスに住んで、さまざまな人種の友達と仲良くなり、これまでにたくさんのカルチャーを身をもって経験してきました。そのなかでも深く印象に残っているのが、「ジューンティーンス(Juneteenth)」という祝日です。ジューンティーンスとは、6月19日(June Nineteenth)を縮めた表現で、17世紀初頭以降、奴隷制によってアフリカから植民地アメリカ/アメリカ合衆国に連れてこられ、奴隷にされた人々が解放された日(1865年6月19日)を記念する、連邦政府の定める祝日です。

毎年、6月19日には、「アメリカで奴隷にされた人々が自由になった日」「奴隷解放記念日」として、黒人コミュニティを中心にジューンティーンスが祝われるようになりました。

2022年6月19日にロサンゼルスのレイマート・パークで開催されたジューンティーンス・フェスティバルの様子。

Gary Coronado/Getty Images

6月19日になると、LAのキッズたちは仕事がお休みでも、仕事中でも、お家の庭や公園、ビーチに集まってクックアウト(cookout=外でバーベキューや料理をすること)をして、DJの音楽プレイで踊ったり、好きな歌をうたったりして時間を過ごしています。自分の音楽をみんなの前で披露したり、ダンスバトルをしたりする人もいます。とにかく美味しいご飯と上質な音楽を仲間や家族と楽しむ日です。

地元のアーティストのなかには、ロサンゼルス市ダウンタウンのスキッド・ロウという多くの路上生活者や薬物中毒者が生活するエリア(残念ながら犯罪も多いため、観光客は歩けないくらい治安が悪い)のど真ん中にある公園で、フリーパフォーマンスを開催して、チャリティーイベントとして、売り上げをその地域に寄付する人もいました。自分たちのコミュニティのためにクリエイティブな活動をしている人がたくさんいて、とても影響を受けました。

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今回、私にとって思い出深い「ジューンティーンス・クックアウト」のプレイリストをつくりました。ぜひ聴いてみてください。

PARISAの最新プレイリストを公開!

1. Before I Let Go - Maze 

名曲すぎてプレイリストの1発目にもってくるのは申し訳ないのですが、ジューンティーンス・クックアウトといえばコレでしょ! 知る人ぞ知る、このダンスステップ。エレクトリックスライドというステップで、この曲がかかると、仲間たちはいっせいにステップを踏みはじめます。船の上でも公園でもビーチでも、ちゃんと整列して、おんなじステップを踏むんです(笑)。ちなみに私は、この曲がかかったらDJ中でも、フロアに出て踊ります。この曲はみんなをハッピーにしてくれる気がする。歌詞の出だしにある、"You make me happy(あなたは私を幸せにしてくれる)”……その通りです!

2. Never Too Much - Luther Vandross

この曲も名曲だよね。私は絶対にかける! お母さんがよく日曜日になるとかけていた、休日っぽい曲。クックアウトで、この曲をかけるとスピーカーよりみんなの歌声の方が大きかったりすることもある(笑)。さっき紹介した「Before I Let Go」の後にかけると、オーディエンスはそのままステップを踊り続ける確率が高いですね。決まった振り付けをみんなで一緒に踊ることができるって、超ピースフルだよね。

3. Trouble on Central - Buddy 

私の友達でもあるBuddy(バディ)は、ロサンゼルスのコンプトン出身のアーティストです。LAでいつも遊んでくれるお兄ちゃんのような存在。彼はラッパーのASAP Fergとの曲「Black」でよく知られているけれど、今回、私はこの曲をおすすめしたい。なぜかというと、Buddyはこの曲でコンプトンの生活について語っているから。警察にすぐ捕まってしまう経験や、仲間が死んでしまったこと、お父さんに「気をつけろよ」といつも言われることとか……。歌詞がすごくリアルなんです。

サビの歌詞が「I wish〜(〜だったらいいな)」という表現なのは、治安の悪いサウスセントラル地区で生まれ育った人たちは、しがらみや家族、ギャングとの関係によって、そこから抜け出すことがなかなか難しかったりするから。だから"I wish I wasn’t stuck on central(セントラルから抜け出せられればいいのにな)”と歌っています。LAが地元の子たちはよく知っている、思い出深い大切な曲です。

4. Alright - Kendrick Lamar

やっぱりケンドリックは外せないよね。サビの「プライドが低いとき、居場所がなかったとき、ストリートでは無差別に警察に殺される。But We gon’ be alright(でも俺たちは大丈夫だ)」の箇所がとにかくヤバい。ポジティブに聴こえる曲だけれど、じつは、歌詞の内容が重くて、リアル。だからこそ、今でもクラブでよく流れているし、自分の環境にたいして胸を張っている曲で、すごく好き。

5. Candy Rain - Soul for Real 

定番中の定番ですね。曲の始まりから終わりまで、オーディエンスの歌声のほうがスピーカーより勝っちゃう(笑)。カラオケをする人もいれば、ニュージャックスウィングのスタイルで踊り出す人もいるし、ダンスバトルをする人もいる、みんな大好きな曲です。この曲やNextの「Too Close」という曲は、クックアウトで必ずかかるといってもいい。95年に発表されて、オールドスクールな曲だけれど、みんなどこかで聴いたことがあるから体が自然に動きます!

文・PARISA

PROFILE

PARISA

東京都出身のDJ、プロデューサー、デザイナー、スタイリスト。16歳の若さで東京でDJキャリアをスタートし、2015年のナイキインストアイベントをはじめ、1 Oak TokyoやCelavi Tokyo、Harlem Shibuya、Agehaなどの東京を代表するクラブで活躍中。自身のMIX CDの全国リリースツアーや、ブランドイベントのゲストDJプレイなど、数々の公演を行う。2016年より、ロサンゼルスに単身で渡米し、短大に入学し音楽を専攻する。卒業後には「WORD OF MOUTH」というクルーの一員となり、LAのクラブやホテルでのゲストパフォーマンス、大規模な会場での公演から企業イベントでのコラボレーション公演など、ほぼ毎晩、DJパフォーマンスを行い、地元の耳が肥えたオーディエンスを踊らせている。

IG @ parisakanno

Twitter @ parisa0126

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