俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記第2部「少年探偵団編」のVol.13─日産・フェアレディZ(2代目)

1970年〜1990年代に販売された“ちょっと、古い、クルマ”に焦点を合わせ、クルマをこよなく愛する俳優・永山絢斗が当時の車両の正体を暴く“探偵”に扮します。永山探偵をサポートする“物知り少年”は自動車評論家の小川フミオ(少年O)とGQ JAPAN編集部のイナガキ(少年I)のふたり。今回取り上げるのは、2代目の日産フェアレディZ。なんと、日本では希少な北米仕様だ。
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Hiromitsu Yasui

北米で人気を集めたZ

少年I “Zは私たちの一部である”

少年O 今回はファッションが目立っていますね。エルボーパッチつきのジャケットに襟のないシャツ。それにオフホワイトのコットンパンツはロールアップ。

少年I グプタさんのマネなんですが、ちょっとマニアックでしたかね……。

少年O 日産自動車のアシュワニ・グプタ取締役代表執行役最高執行責任者兼北米日産取締役会議長が、2021年8月にニューヨークを舞台に新型Zをオンラインで発表したときのスタイルです。

【前話】トヨタ・セルシオ(初代)

取材車の2代目フェアレディZは、日本では珍しい北米仕様だ。日本仕様には設定のないゴールドを使ったボディカラーが印象的だ。

Hiromitsu Yasui

写真は1978年型の日本仕様。試乗車と異なりふたりのりのリアシートを持つ“2by2”だ。

日本仕様のインテリア。

探偵 そういえば、7代目としてフェアレディZの日本仕様が今日発表されましたね。米国ではNissan Zと言うそうで。

少年O 情報によると、「an approachable sports car for the modern age」。平たくいうと、夢でありながらも手の届くクルマ、という新型Zのコンセプトに合わせたビジネスカジュアルスタイルとして、ご本人が選んだんだとか。新型Zは、コロナ禍で発表が遅れたものの、ついに登場ですね。2019年に私がニューヨークオートショーに出かけたときは、地元の愛好クラブがZの誕生50周年ということで、歴代モデルをショーの一角にずらりと展示。初代は米国ですぐに人気に火がつき、「MG」などといった英国のスポーツカーを北米市場から追い出してしまったほど、と言われています。そのエピソードの信憑性を感じさせる、ファンの熱さを感じさせる光景でした。

【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
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2021年8月18日、アメリカ・ニューヨークで発表された新型Z。米国市場向けの新型「Z」には、「Sport」と「Performance」の2グレードと、240台の限定生産となる「Proto Spec」が用意される。両グレードともVR30DDTTエンジンが搭載され、6速マニュアルトランスミッション(MT)か、新開発の9速オートマチックトランスミッション(AT)を選べるという。

LARRY@LARRYCHENPHOTO.COM

「日産にとって『Z』とは、私たち自身の一部であり、長年にわたるお客さまへのコミットメントです。私たちは『Z』を通して、最新のスポーツカーのデザイン、パフォーマンス、そしてワクワクをお届けしています」と、日産の最高執行責任者(COO)であるアシュワニ グプタ氏は語った。

自分好みに仕立てたこだわりのS130

探偵 ところで今回のZは1978年に登場した2代目ですね。ちょっと変わったルックスですが……?

少年I 見ていただいているとおり、左ハンドルです。オーナーのかたが30年来乗っているというモデルを見つけてきました。

約40年前のクルマとは思えぬほどインテリアは綺麗だった。オーナーのクルマに対する深い愛情が伝わる。

Hiromitsu Yasui

自身のスマートフォンでも撮影する永山さん。L28エンジン搭載のフェアレディZは、1度乗ってみたかったクルマという。

Hiromitsu Yasui

少年O “S130”という2代目Zの特徴は、北米市場からの要請でそうしたという初代のイメージを色濃くもったスタイリングと、2753cc直列6気筒SOHC「L28」エンジン、それにルーフの一部が取り外せる「Tバールーフ」です。サイズも初代が全長4115mmであったのに対して、4420mmとだいぶ大型しています。

探偵 いま見ても堂々としていますよねえ。とくに、ドライバーが後輪の上に座るぐらい後退したキャビンと、長いノーズがかなりの迫力を感じます。

Tバールーフを外した状態を楽しむ永山さん。「想像以上に開放的でした!」と、話されていた。

Hiromitsu Yasui

「Tバールーフ」の脱着は手動だ。

Hiromitsu Yasui

日本仕様の「Tバールーフ」モデル。写真は1980年型だ。

少年I オーナーの渡辺さんは、自動車関連の会社をやっていらっしゃるだけあって、筋金入りのクルマ好き。このクルマを買ったきっかけは、友人から譲りうけたL28型エンジンだけ持っていて……。

探偵 エンジンだけですか?

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L28Eエンジンの最高出力は前期が145ps、後期が155psだった。

Hiromitsu Yasui

エンジンを熱心に観察する永山さん。L28エンジン搭載車に乗るのは、うまれて初めてだった。

Hiromitsu Yasui

少年I はい。クルマ好きですから、当時、“名エンジン”と謳われた“エル型”が大好きだったそうです。それを載せる車体を探していたところ、北米仕様のこの280Zを見つけて、購入を決心。渡辺さんによると北米仕様のエンジンは「力がないうえに、電子制御系の部品のトラブルで止まってばかりで微妙だった」ということもあって、手元にあるエル型を換装。あとは、「スカイラインGT-R(R32)」のトランスミッションや、NISMOがエル型のために開発したミクニ製トリプルチョークの気化器など、楽しみながら、自分が理想とするS130を作りあげたといいます。

「1970〜1980年代の日本車って、今見ると、本当に魅力的ですよね」と、話す永山さん。

Hiromitsu Yasui

探偵 それは凄い! 車検を取るのが大変だったでしょうね。

少年O こういう話を聞いているのはほんと楽しいですね。日産自動車って、クルマ好きのためのメーカーだなぁという思いを強くします。そこ、ぜったいに忘れないで欲しいです。

破損防止のため、普段はヘッドライトカバーを外されているそうだ。

Hiromitsu Yasui

取材車は希少なマンハッタン仕様だった。

Hiromitsu Yasui

どこまでも走り続けたくなる1台

少年I 先生、さっそく試乗させてもらいましょう。

探偵 (乗りこんで)これはすごい! シートに腰をおろしただけで、心躍りますね。自分の脈拍が速くなっているのがわかります。しかも、Tバーのルーフ部分を取りはずと、予想以上に“オープン気分”ですよ。

オーナーも驚くほどスムーズに乗りこなしていた永山さん。感想を聴くと「びっくりするくらい、運転していて楽しいクルマでした!」と、話されていた。

Hiromitsu Yasui

メーターはマイル表示ではなくキロ表示に換装されていた。

Hiromitsu Yasui

メーター上部には水温計などが並ぶ。

Hiromitsu Yasui

少年I ガラスで出来ているデタッチャブルパーツが左右ひとつずつ。取り外したルーフを格納しておけるよう、専用のバッグが用意されているのも、凝っていますねぇ。

少年O 出発前に失礼します。当時、北米では横転の際に乗員を保護しなくてはいけないと、フルオープンが認められなかったんですね。Tバーは構造材を残しながら、できるだけ屋根を開けるという苦肉のアイディア。米国車にも多かったですね。

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2代目のフェアレディZは1983年まで生産された。

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取材車のシートは、レカロ社製に換装されていた。

Hiromitsu Yasui

パワーウインドウを装備。操作部分には“Z”のロゴが入っていた。

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探偵 (走り出して)うわ、力強い加速感と、パワフルなエンジンフィールがすばらしいですね。マニュアル変速機なので、エンジン回転を思うように上げられるのも、めちゃくちゃ楽しいです。ポンッと踏むといっきに上までまわるんですね。

少年I 変速機はオリジナルこそボルグワーナー製だったそうですが、補修パーツがなく、換装されたそうです。変速時のシフトフィールはオリジナルのほうが気持ちよかったとのこと。エンジンは、よくまわるようにチューニングされているそうで、回転計は7000rpmまでですが、このクルマは8500rpmまでまわして大丈夫です。

組み合わされるトランスミッションは5MT。3ATも選べた。

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ステアリング・ホイールはMOMOに換装されていた。

Hiromitsu Yasui

探偵 エンジンは本当に素晴らしいですね。

少年O 以前は軽量フライホイールを組み込んで、さっと回転が上がるようにセッティングしていたそうですが、最近は、“もうすこし楽チンに乗れたほうがいいなぁ”ということで、フライホイールも街乗りに主眼を置いた仕様にしたそうです。

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北米仕様には2.8リッターにターボを装着したL28ET型エンジン搭載モデルも用意された(最高出力は180ps)。

Hiromitsu Yasui

ホイールは、レーシングサービスワタナベが手がけたものに換装されていた。

Hiromitsu Yasui

探偵 これでも充分楽しいですよ!

少年I 先生は、“トンネルチャンス”って言葉、知っていますか?

探偵 “トンネルチャンス”、ですか?

少年O トンネルのなかに入ったら、あえてエンジン回転を上げぎみにして、エンジン音と排気音を響かせるんです。今回のZはきれいにチューニングされているので、いい音だなぁって酔ってしまうでしょ? それがトンネルに入ったときに楽しめるチャンスなんです。

2代目のフェアレディZは初代に続き北米市場でも大ヒットした。

Hiromitsu Yasui

探偵 たしかに! あ、気持ちいいなぁと思っていたら、つい高速道路の出口を通り越してしまいました。

少年I それは、クルマも本望ですよ! いいクルマって、どこまでも走り続けたくなりますよね。

少年O いいスポーツカーに乗ると夢みている気分になりますよね。新型Zも、こんなふうに、クルマ好きを幸せにしてくれるクルマであることを祈ります。

Hiromitsu Yasui

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【プロフィール】
俳優・永山絢斗(ながやまけんと)

1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年『おじいさん先生』(日本テレビ系列)で俳優デビュー。連続テレビ小説『おひさま』や『べっぴんさん』(NHK総合)、『ドクターX〜外科医・大門未知子〜 第5シリーズ』(テレビ朝日系列)、そして2021年には『俺の家の話』(TBS系列)に出演。映画では2010年の『ソフトボーイ』で第34回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。

出演情報/
・2022年2月20日(日)23:00放送・配信WOWOWオリジナルドラマ『にんげんこわい』第3話『紺屋高尾』主演。

まとめ・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・Babymix ヘア&メイク・新宮利彦 撮影協力・川崎キングスカイフロント東急REIホテル