シミの元を作らせない。微弱炎症を鎮静する、イン&アウト技
ブライトニングにトレンドがあるとしたら、そのキーワードは間違いなく“抗炎症”。「ここ数年、炎症の研究が進み、それが肌の老化を加速させる引き金になること、そして、シミやくすみ、色ムラなどに関して悪影響を及ぼしていることもわかっています。最新のスキンケアで炎症をターゲットにしていないブライトニングコスメを見つけるほうが難しいくらい、大きなムーブメントといえるでしょう」と岡部さん。紫外線を浴びていないのにシミが増える、という疑問に対する答えもここにある。
昔から頬や目尻の下あたりに左右対称にモヤっと広がる肝斑の改善には、第一三共が開発した抗炎症成分トラネキサム酸の内服が推奨されていて、2005年にはトラネキサム酸がメラニンの生成を防ぐ有効成分として認可された。そのことからも、炎症を抑える=色素沈着を防ぐ有効な手段であることは明らかだ。では炎症とは一体何? わかりやすいのは、マスクやスキンケア時の摩擦。赤みが残ったり、ヒリヒリしたり……。でも私たちの目には見えないダメージも山ほどある。「紫外線を筆頭に、花粉やPM2.5などの微粒子、乾燥、過剰な皮脂、高温多湿や激しい温度差などの環境要因、疲れ、睡眠不足、精神的ストレスなど。一見肌とは関係ないように見えるそれらの要素が、細胞や血管にダメージを与え、炎症物質が発生。じわじわ蓄積する慢性の微弱炎症は、シミや色素沈着に大きく関与しているという報告が」(岡部さん)。炎症を抑える目的で配合されるのは、トラネキサム酸、グリチルリチン酸2K、アラントインなどのほかレモンバームやエーデルワイス、カンゾウ、サクラ葉など植物由来成分も。
ポーラの研究によると、ストレスや疲れが続くと血液中でTARCという炎症物質の産生が増え、それが肌の赤みや明るさ減少の要因になっている、という。化粧品では難しい血管や細胞のメンテナンスは、体内からのアプローチを加えるサンドイッチケアで、炎症の火種を急いで消去!
イン&アウト、Wで叶う抗炎症コスメコスメ6選
話を聞いたのは……
岡部美代治
ビューティサイエンティスト。山口大学文理学部理学科生物学卒業。コーセーの研究所を経て、アルビオンにて商品開発、マーケティングを担当。2008年に独立し美容コンサルタントとして活動。スキンケアを中心とした美容全般をわかりやすく解説する。
Photos: Daigo Nagao Text: Eri Kataoka Editor:Kyoko Muramatsu
※『VOGUE JAPAN』2023年4月号「最先端コスメで 澄み切り肌を手に入れる」転載記事。