中国の戦術でやり返す米国-閣僚の台湾派遣で「レッドライン」試す
Bloomberg News-
米国は台湾を国家として扱う方向に新たな一歩を踏み出す
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戦争を招く可能性があると中国は威嚇している
2016年の米大統領選挙を制したドナルド・トランプ氏は大統領就任前の同年12月、台湾の蔡英文総統と電話会談を行い、長く尊重されてきた外交ルールブックをいきなり破った。
米国が1979年に中国との国交を正常化し台湾と断交してから、次期大統領が台湾トップと話すのは初めてだった。トランプ氏が受け入れた10分間の会話は中国の習近平政権を激怒させた。だその数日後、中国が主張する「一つの中国」政策に米国が従う必要があるのかと同氏は疑問を呈し、中国側の怒りの炎に油を注いだ。
トランプ氏は間もなくこうしたスタンスを後退させ、政権の代名詞ともいえる一貫性のなさを露呈したが、米中関係が急速に変わりつつあることも中国に突き付けている。
米台断交後の41年間で最も地位の高い米当局者としてアザー厚生長官が台湾を訪問する。戦争を招く可能性があるとの中国の威嚇にもかかわらず、米国は台湾を国家として扱う方向に新たな一歩を踏み出す。
アザー米厚生長官、「数日内」に台湾訪問-断交後で最高位の訪台
台湾を対米関係で最も扱いが難しい問題だとずっと見なしてきた中国は、トランプ政権に対し「レッドライン」を踏み越えるなと警告を続ける。だが、そのレッドラインがどこに引かれているのかは定かではない。
中国が許容できる限界「ボトムライン」について、アモイ大学台湾研究院の劉国深院長は「学者個人が答えるのは容易ではない。原則的には公式対応がボトムラインだ。包括的な見極めを要し、決定権を持つ者が判断が行う」と話す。
米国の政治家は今、中国政府のルールブックをひもといて中国側のボトムラインを探っている。
南シナ海の領有権主張を強める中国は、長い時間をかけて少しずつ相手側を切り崩していく「サラミ戦術」を実践していると近隣諸国から非難されてきた。
そして今、米国が同じ戦術を採っていると主張するのが中国だ。中国国防省の呉謙報道官は今年6月、この言葉を用いながら、人民解放軍が高度な警戒を敷いていると明言。中国将棋の駒「卒」を引き合いに警告を発したのは共産党機関紙・人民日報系の新聞、環球時報だ。同紙は今週、米国の「卒」となるなら台湾は「耐え難い災難」に見舞われる可能性があると伝えた。
エスパー米国防長官と中国の魏鳳和国防相が6日行った電話会談では、台湾も取り上げられた。米国防総省によれば、「意思疎通のオープンなチャンネルを維持し、危機時の意思疎通とリスク軽減に必要なシステムを開発する重要性に双方のリーダーが合意」した。
フーバー研究所のカリス・テンプルマン客員研究員によると、米国の動きは主に台湾の蔡政権に対する中国の圧力への対応だ。「中国は台湾への圧力を強めようと、変化を小出しにする手法を好んで使う。今、米国自らもその種のことは可能だと示している。中国政府が米閣僚の台湾訪問を止めたいと思えば、中国は台湾の防空識別圏への軍用機侵入をやめなければならないだろう」と指摘している。
原題:Trump Tests China’s Red Line on Taiwan Using Beijing’s Playbook(抜粋)