KARATE:KIYO SHIMIZU

空手・形の清水希容 「色以上に価値のあるメダルを獲りたい」──2020年に躍動する勝者を見逃すな!

実際に相手と対峙する「組手」と違い、仮想敵に技を繰り出していく空手の「形」。年齢とともに円熟すると言われる「形」。10代の頃から無敵の強さを誇っている清水希容は「まだ一度も理想の形は表現できてない」と、ストイックに語った。 文・Takeshi Sato 写真・Maciej Kucia@AVGVST スタイリング・Akihiro Mizumoto メイク・Masayo Tsuda@mod’s hair ヘア・Ken Yoshimura@AVGVST
空手・形の清水希容 「色以上に価値のあるメダルを獲りたい」──2020年に躍動する勝者を見逃すな!
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色以上に価値のあるメダルを獲りたい

スタジオに現れたのは淡いグリーンのコートに白いパンツルックの小柄な女性。身長160cm。照れ笑いを浮かべる顔にはあどけなさが残る。メイクを済ませ、衣装に着替えても雰囲気は変わらない。しかしフォトグラファーから「形をやってもらえますか?」と指示を受けると一変。「凛」とした空気に包まれたスタッフは沈黙した。

「怖いですか? 形は常に相手がいると思ってやっているので、撮影であっても自分の世界に入って集中してしまうんです」

東京2020オリンピックで正式種目になることが決まり、演武の出来栄えを競う採点方式へとルールが変わった。形は変革のときを迎えている。

「隣に対戦相手がいなくなったことで戦略が一変しました。自分とのたたかいです。空手の形がもつ意味も含め、もっと追求しなくてはいけません」

世界空手連盟本部はスペインのマドリードにあり194の国と地域が加盟。近年は海外選手の活躍も目覚ましい。

「国によって会場の雰囲気はまったく変わります。私はフランス(の雰囲気)が一番好きです。武道の理解度が高く、拍手などで選手の良さを引き立ててくれるんです。その点、日本は真逆。神聖なものとして皆さん静かに見られているので、慣れていない外国選手はすごく緊張するようです」

国内のみならず海外でも実績を残している彼女。強さの秘密は精神面にあると自己分析する。

「会場の隅々まで意識して、観客と心がつながるように形を決めることを心がけています。〝これはすごい!〟と思わせることが大切です。いかに会場と一体になれるかですね」

過去にベストと呼べる形はまだ一度も表現できてないという彼女。オリンピックに向けての意気込みを聞いた。

「優勝はもちろん、最高だったと思える演武をすることです。印象に残る試合をして、色以上に価値のあるメダルを獲りに行きたいです」

清水希容
空手・形
1993年、大阪府生まれ。9歳より空手を始め、中学生から本格的に形の道へ。「全日本空手道選手権大会」6連覇中。国際試合での優勝経験も多数。