「保津川下り」の舟転覆 船頭1人死亡1人不明、乗客無事
28日午前、京都府内を流れる桂川(保津川)で、川下りの舟が座礁し転覆した。京都府警や京都市消防局によると、子ども3人を含む乗客25人、船頭4人が乗っており、船頭の田中三郎さん(51)が病院に搬送されたが、死亡が確認された。別の40代の船頭が行方不明という。残る27人は救助され無事だった。
運航する保津川遊船企業組合(京都府亀岡市)によると、舟は28日午前10時40分ごろ、亀岡市内を出発。出航の約15分後に事故が起きたとみられる。後続の舟から同組合に連絡があったという。
26日までの雨の影響で川が増水しており、船頭は通常より1人多い4人体制で運航していた。水位が85センチ以上になった場合は運航を中止するが、28日の水位は69センチだったという。
組合の豊田知八代表理事は「後方に乗っていた船頭がかじの操作を誤り落下した。その結果、舟のコントロールが失われ、岩にぶつかったようだ。乗客らは救命胴衣を着用していた」と説明した。当面の間、運航を取りやめるという。
運輸安全委員会は28日、船舶事故調査官を現地に派遣することを決めた。
「保津川下り」は嵐山(京都市)までの約16キロにわたる急流を楽しめる観光名物。年約25万人の観光客が訪れる一方、過去には同様の事故が起きている。
2001年9月、舟が岩に衝突して浸水し、乗客らが川へ投げ出された。全員が救助されたが、数人が軽傷を負うなどした。1998年にも舟が岩に乗り上げる事故が発生した。
川下り船を巡っては、浜松市の天竜川で乗客ら5人が死亡した2011年の転覆事故を受け、国土交通省が全国の事業者向けにガイドラインを策定。乗客全員に救命胴衣の着用を徹底させるほか、船頭の操船技量を高める取り組みなどを求めている。
同省近畿運輸局によると、昨年4月の北海道・知床半島沖の観光船沈没事故に伴い、ガイドラインの順守状況を一斉点検した。保津川遊船企業組合は問題なかったとされるが、今回の事故を踏まえ、対応などについて改めて聞き取る方針。