首相交代は金融政策に影響せず、エコノミストの大半が予想-サーベイ
伊藤純夫、Cynthia Li-
すでに経済政策の主役は金融政策から財政政策に-ドイツ証の小山氏
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コロナ対応プログラム縮小を示唆する時期、エコノミスト予想後ずれ
日本銀行が来週開く金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が決まるとほぼ全員のエコノミストが予想している。自民党総裁選を巡っては、次の首相が誰になっても、金融政策運営に大きな変更はないとの見方が大勢だ。
ブルームバーグがエコノミスト47人を対象に10-15日に実施した調査によると、今回の会合で金融政策の変更を想定しているのは1人にとどまった。
調査リポート:日銀9月決定会合でほぼ全員が現状維持を予測
次の首相を決める自民党総裁選(17日告示、29日投開票)には、15日時点で岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野太郎行政改革担当相の3人が出馬を表明。経済・金融政策運営に対する考え方に違いもみられるが、エコノミスト44人中37人が次期首相の下で金融政策に大きな変更はないと予想した。6人は判断は難しいと回答し、変更を想定しているのは1人だった。
東海東京証券の佐野一彦氏は、河野氏を本命に挙げた上で「総裁候補の政策はさまざまだが、誰が総理・総裁になっても、わが国のマクロ環境を大きく変化させるには至るまい」と指摘。ドイツ証券の小山賢太郎氏は「すでに経済政策の主役は金融政策から財政政策に移っている。それは新しい首相の下でも変わらない」とみている。
7月の調査では、日銀が10-12月期にコロナ対応プログラムの縮小を示唆すると予想したエコノミストは18%いたが、9月調査ではゼロだった。
世界的に新型コロナウイルスのデルタ株が流行する中で、緊急事態宣言といった公衆衛生上の措置の延長・拡大、東南アジアでの部品工場閉鎖による生産停止などが日本経済に影響を与えている。SMBC日興証券の森田長太郎氏は、現時点では「その程度は比較的軽微」としつつも、経済回復の想定は1四半期程度後ずれしていると分析した。
「身動き取りづらい」
欧米ではインフレ圧力が強まる中で、米連邦準備理事会(FRB)が年内にテーパリング(金融緩和の縮小)を開始するとの見方が広がっている。これに対し、日本の消費者物価上昇率はマイナス圏にとどまっており、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏は、日銀は様子見姿勢に徹すると予想。「物価目標達成が見通せない一方で追加緩和余地が乏しく、身動きが取りづらい」と語った。
次の政策変更のタイミングは2023年以降との回答が76%を占め、大半のエコノミストは金融政策の無風が今後1年以上続くとみている。