俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記第2部「少年探偵団編」のVol.24──シボレー ・コルベット(4代目)

1970年〜1990年代に販売された“ちょっと、古い、クルマ”に焦点を合わせ、クルマをこよなく愛する俳優・永山絢斗が当時の車両の正体を暴く“探偵”に扮します。永山探偵をサポートする“物知り少年”は自動車評論家の小川フミオ(少年O)と『GQ JAPAN』編集部のイナガキ(少年I)のふたり。今回取り上げるのは、アメ車のなかでも長い歴史を有するスポーツカー、シボレー「コルベット」(4代目)だ!
俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記第2部「少年探偵団編」のVol.24──シボレー ・コルベット(4代目)
Hiromitsu Yasui

決め手は“品川34”

少年I 今回の取材車は、ファンの間で「C4」と呼ばれる4代目のシボレー「コルベット」です。参議院議員の三原じゅん子さんも、かつて所有していたんですよ。

少年O  米国では”コーベット“とか、略して“ベット”。英国では“コベット”とかって呼ばれてますね。日本でコルベットと定着したのは、軍艦の種類であるコルベット艦がさきにあったからですね。いまは近海用護衛艦のことです。

車両は少年Iこと、『GQ JAPAN』ライフスタイル・エディターのイナガキが所有する1台。1987年型の前期モデルだ。

Hiromitsu Yasui

リトラクタブル・ヘッドライトは、メーターパネル横のノブを引っ張ることによって、回転する。

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270度回転し、展開するリトラクタブル・ヘッドライト。その動きはなかなかユニークで、周囲の目を引く。

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探偵 宮崎駿さんが手掛けた「風の谷のナウシカ」で、トルメキアのクロトワが操る機体もコルベット艦って呼ばれてました。

少年O クルマの名称で船と共通するものを探すと、戦前はトーピドー(魚雷)と呼ばれる無蓋のシュッとしたボディスタイルもありました。

取材車両はヤナセが輸入・販売した正規モデル。ドアミラーなどは日本仕様オリジナルのデザインに変更されている。

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ブラックのホイールアーチも日本仕様の証。ただし当時は、オリジナル・デザインであるボディ同色に変更するオーナーが多かったという。

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少年I ロールス・ロイスなどはいまもデザインテーマで採用しますね。

少年O ゴージャスなヨットの甲板を思わせるウッドパネルまで貼ったりして。ランドローバーの「レンジローバー」も3代目(2001年)から、リアスタイルは、スピードボートの「リーバ」にインスピレーションを受けたと発表しています。

探偵 ところで、 少年Iさん、今日はやけに嬉しそうですが?

16インチのアルミホイールは新車時のままだ。

Hiromitsu Yasui

少年I なにを隠そう、今回のコルベットはボクのクルマなんです。1987年型の前期モデル。2022年の春、思い切って購入しました。決め手は“品川34”です。

探偵 こだわりの2桁ナンバーですな。前から欲しいと言っていましたからね。

少年O しかもシボレーを含めてゼネラルモーターズの日本総代理店をやっていたヤナセが輸入・販売した希少な個体ですね。ヤナセ物の前期モデルは、現存する個体があまり少ないと聞きました。当時私は、日本で発売されてすぐ、4代目コルベットで東京から三重県まで走っていった記憶があります。最初に乗ってびっくりしたのは、低回転域からのものすごいトルク! 信号発進のとき軽くアクセルペダルを踏んだだけで、隣にいたクルマがバックミラーのなかの点にまで遠ざかってしまったんです。ちょうどこの少し前に、プリンスのアルバム「1999」がリリースされまして、「Little Red Corvette」を聴いていましたから、実車に乗って、どこがリトルだよ~(汗)って思ったものです。超ビッグな存在感でした。

「エンジン・ルームも、欧州車とは作りが違いますね。まさに“アメ車”という感じです」と、永山さん。

Hiromitsu Yasui

ワイルドさがいい!

探偵 1989年生まれの少年Iさんは、このコルベットにどんな魅力を感じて購入にいたったのでしょうか? 2桁ナンバーという決め手以外に。

少年I 小さい頃から、なんとなくなんですけど、コルベットってカッコいいなぁとは思っていたんですよ。よくドラマとか映画とかに登場していましたから。購入するちょっと前、薬師丸ひろ子さんが主演した映画『紳士同盟』(1987年)を観ていたら、4代目コルベットのコンバーチブルが登場したんです。薬師丸さんがコルベットのハンドルを握って、古いメルセデス・ベンツとカーチェイスを繰り広げるんです。隣に共演者である時任三郎さんを乗せて。そのシーンが妙にカッコよかったんですよね……。

トランスミッションは4AT。

Hiromitsu Yasui

給油口はボディサイドではなく、テールに備わる。

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少年O 『紳士同盟』、懐かしいですね。同名の主題歌もヒットしましたが、コルベットが劇中に出ていたのは覚えていませんでした。

少年I 購入した1987年型は、三原じゅん子さんが所有していたのと同年式なんです。どうやら、ボディカラーやグレードも同じだったようで……。

永山さんは「V8エンジンのドロドロとした感じが最高ですね!」と、感想を述べた。

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5.7リッターV8OHVガソリン・エンジンを搭載。専門家によれば、後期モデルより前期モデルのほうが整備は容易だという。

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探偵 なんだか不思議な理由で購入されたようで……。

少年I 話が脱線しました。コルベットは、ヨーロッパ車にはないワイルドな雰囲気があって、かなり前から気になっていたんです。ミドシップになってしまった最新モデルでさえ、デザインこそフェラーリなどに近づいてしまいましたが、乗るとやっぱりワイルドなんです。

取材車には、新車当時のカタログやアクセサリー・リストなどが揃っていた。

Hiromitsu Yasui

探偵 たしかに、乗り心地といいエンジン・サウンドといいワイルドですよね。

少年I このワイルドさが、コルベットに惹かれた理由のひとつです。

どの世代もカッコいい!

少年O 低いノーズ、大径のマフラーカッターの4本出し、それに270度回転してポップアップするヘッドランプなど、スペシャル感満載で、いまの眼でみてもそうとうカッコいいです。昔見たときよりもカッコいいかもしれません。

探偵 ヘッドランプの動きは面白いですよね。路上でポップアップすると、周囲がその動きに驚くんです。

直線基調のインパネまわり。クオリティはそれほど高くないが、操作性は良い。

Hiromitsu Yasui

サイドブレーキは、一般的なセンターコンソールではなく、運転席ドア近くにある。

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少年I 運転してみると、「この独特の味がイイ!」というファンが多いっていうのがわかりました。

少年O 「ブルーフレーム」と呼ばれた6気筒エンジン搭載の初代はともかく、その直後に4つ眼で登場したV8モデルにはじまり、どの世代もカッコいいのがコルベットなんです。だから世代によって、オレのコルベットともいうべき好みのモデルがあるんですよ。私もC4なんです。それもまさに少年Iが買った初期型、大好きです。

ブラックのレザーシートは電動調整式。

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シートベットのバックルには、GMのロゴが刻印されている。

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探偵 スパッとカットしたようなリアに丸形4灯式のランプが並ぶスタイルもカッコいいですよね!

少年O このモデルのデザインを指揮したゼネラルモーターズのデザイン部長、チャック・ジョーダンさんが、大のフェラーリ・ファンを公言していて、「『365GT4 BB』がドリーム・カーだ!」みたいなことを言っていました。クルマのデザイナーは、心のなかにドリーム・カーをもっているケースが多いようです。少し前の話になりますが、某メーカーのデザイン・ディレクターが「自分たちが入社したころは憧れのスポーツカーといえばフェラーリだったけれど、いまの新人はランボルギーニって答える」と言ってました。

ステアリング・ホイールはチルト&テレスコピック機能付き。センターにはコルベットのロゴが装着される。

Hiromitsu Yasui

助手席前にはコルベットの文字を刻印。

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少年I コルベットで言えば、ミドシップになった2020年発売の最新型もいいですね。フェラーリやランボルギーニとは言いませんが、それらより半額以下の価格なのだから、いい買い物かと。独自のスタイリッシュさがありますし、操縦性は高いし、パワー感もばっちりですから。

少年O コルベットで守るべき点は2つ、V8エンジンとFRPボディなんです。

永山さんお気に入りのデザインは、リアまわりとのこと。

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大型のガラスゲートを開けると、それなりの広さのラゲッジルームがあらわれる。ただし、ゴルフバッグは横置き出来なかった。

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ラゲッジルームサイドには、ACデルコ製のスピーカーがある。

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おおらかな気持ちで乗ろう!

探偵 思っていたより、運転がおもしろいクルマですね! V8エンジンの、なんていうか“ドロドロ“としたバイブレーションが伝わってくるのも最高です。足まわりが硬めで、ステアリングはけっこうクイック。加速がよくて、かなり私の好みです。

少年O ステアリングがクイックな点は、驚く人が多いですね。当時の米国車はだいたいステアリングがロック・トゥ・ロック2回転少々だったりするんです。私たちが慣れているのは4回転近くなんで、ちょっと切ると車体がサッと動くのに違和感もあるでしょう。理由として、北米には自走してぐるぐるとスロープを上がっていくタワー式駐車場が多くて、そこでのかったるさを払拭するためだとか。本当のところはどうなんでしょうね。

駆動方式はRWD(後輪駆動)。ルーフは脱着式だ。ほかにソフトトップをもつコンバーチブルも選ぶことができた。

Hiromitsu Yasui

前期モデルのデジタルメーター。後期モデルのメーターは大幅にデザインが変わってしまった。

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探偵 室内も個性的です。フカフカのシートも、ドイツ車とはぜんぜん違いました。デジタルメーターも、今のフル液晶画面タイプのものと比べると不思議なデザインです。

少年I デジタルメーターが壊れると修理が大変と聞きましたが、今のところさほど問題なく作動しています。

永山さん、「燃費があまりよくないので、みるみる走行可能距離が減っていくのがちょっとドキドキしますね」。

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インパネに設置されたスイッチで、メーター中央にあるインフォメーション・ディスプレイの表示内容を変更出来る。

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探偵 “さほど”とは?

少年I ごくたまにバックライトが落ちて真っ暗になるんです。そうなると、速度もエンジン回転数もわからなくなります。

少年Iが購入した個体は、ボーラ(アメリカ)のマフラーに換装されていた。

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センターコンソールには、ドアミラーやシートの電動調整用スイッチ、パワーウインドウのスイッチなどがある。

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ワイパーのオン/オフは、ドアライニングに設置されたレバーで操作する。

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少年O それで運転は大丈夫なんですか?

少年I 数十秒で元に戻るんです(笑)。ほかにもワイパーの動きが変だったり、ドアロックがうまく動かなかったり、アイドリングが不整だったり、と、いろいろ気になるところはありますが、あまり気にしないようにしています。35年前のアメ車ですからね。

リトラクタブルライトを開いた状態。メーター横のスイッチで、開/閉を操作出来る。

Hiromitsu Yasui

クルーズコントロールも搭載する。

Hiromitsu Yasui

探偵 そういうトラブルも魅力というか、修理を楽しく感じさせるような、個性あるクルマですね。これからの少年Iさんのコルベットライフに幸あれ、です。

【衣装】ジャケット/¥147,400、シャツ/¥74,800、パンツ/¥53,900(ヌメロ ヴェントゥーノ)

Hiromitsu Yasui

プロフィール】
俳優・永山絢斗(ながやまけんと)

1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年『おじいさん先生』(日本テレビ系列)で俳優デビュー。連続テレビ小説『おひさま』や『べっぴんさん』(NHK総合)、『ドクターX〜外科医・大門未知子〜 第5シリーズ』(テレビ朝日系列)、そして2021年には『俺の家の話』(TBS系列)に出演。映画では2010年の『ソフトボーイ』で第34回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。

出演情報
・映画「冬薔薇」2022年6月3日(金)全国ロードショー
・WOWOWオリジナルドラマ「ダブル」6月4日(土)22時30分より放送・配信スタート
・映画「峠 最後のサムライ」2022年6月17日(金)全国ロードショー
・映画「LOVE LIFE」2022年秋 全国ロードショー

衣装問い合わせ先:
N21 表参道
〒150-0001 
東京都渋谷区神宮前4-3-17
TEL:03-3746-0021

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まとめ・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・Babymix ヘア&メイク・新宮利彦 撮影協力・二子玉川エクセルホテル東急