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国際女性デーに考えたい!日本の女性の自己肯定感の低さ、どうすればいい!?(前編)【ヴォーグなお悩み外来】

誰もが抱えるものから人には聞けないものまで、あらゆる悩みにその道のエキスパートが回答。第80回は、3月8日の国際女性デーを前に女性の自己肯定感にフォーカス。キャリアでもプライベートでもなんだか自分に自信が持てない……。だからといって、内面を磨いて前向きになろうと頑張っていない? でも、それはあなたのせいではなく、社会や文化といった環境の要因が大きい可能性あり! 前半では、なぜ日本の女性が自己肯定感が低いのか、国際NGOプラン・インターナショナルアドボカシーグループリーダーの長島美紀さんに分析いただく。

データでも明らか。日本の女性は自己肯定感が低い

世界経済フォーラムが毎年発表している、各国の男女格差を数値化​​したジェンダーギャップ指数。​​日本の数値が先進国で最低レベルなのは、主に政治と経済の分野で女性の進出が遅れているのが理由だ。背景には社会システムや法律に加えて、「日本の女性は自己肯定感が低い、リーダーになりたがらない」といった意識の問題があると言われている。果たして本当に日本女性は自己肯定感が低いのだろうか。​​ジェンダー問題に詳しい政治学博士の長島美紀さんによると、答えはYES。

「内閣府が行っている調査では、諸外国に比べて満 13 歳から満 29 歳​​の日本の若者の自己肯定感は、男女共に低く、特に女性の方が低いです」

日本の若者は、「私は、自分自身に満足している」に『そう思う』(「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計)と答えた割合は 45.1%。他の調査対象国の多くが7、8割を占めているのに比べると「自分への満足感」が圧倒的に低い。そして男女別に見ると、男性が49.7%に対して女性が40.7%とさらに低いのだ。

「自分は期待されていない」という積み重ねの結果

あくまでも若年層を対象としたデータではあるが、世界でも特に日本女性が自己肯定感が低いというのは気になる。なぜこんなことに?

「社会や文化的背景などさまざまが考えられますが、身近なものでは、親の子どもへの期待。昔と比べると、だいぶ親は男の子も女の子も同じように育てるようになったイメージがありますよね。しかし、例えば親の7割程度が男の子に大学まで教育を受けてほしいと答える一方で、女の子に対しては、80年代以来増加しているものの男子とは今も開きがあります。このように、自分に対して期待感がもたれていないという経験の積み重ねが、自分に価値がないのではと思うことにつながると言われています」

さらに、日本の女性がリーダーになりたがらないのも、「自分がリーダーになる自信がない」からのようだ。

「プラン・インターナショナルが行った女性のリーダーシップに関する意識調査で、リーダーになりたいと思うかのデータを見ると、日本は他国とそう変わりません。しかし、『自分にはその能力があるとか、その素質がある』と考える割合は他国に比べると圧倒的に少ないんです」

“人さまのお役に立っている”実感がない女性たち

長島さんは、自己肯定感における日本ならではの特徴を次のように分析する。「自分への満足感や自己肯定感を、自己有用感で判断する人が多いようです。そして、男女別に見ると、20代では女性の方が圧倒的に自己有用感が低いんです」

Self-Esteemの訳語として定着した「自己肯定感」は、自己に対して肯定的な評価を抱いている状態のこと。一方、Self-Efficacyを意味する「自己有用感」は、人の役に立ったと実感するなど、他者との関係のなかで自分の存在価値を感じることを指す。特に日本人は、この二つが密接にリンクしている。自己有用感、つまり“人さまの役に立っているか否か”が自己肯定感に強く影響するということだ。

「どこの国の人も、ある程度は周りから自分がどう見られているかというのは気にすると思いますが、日本の女性は特にそれが強い。学校や職場、地域社会、家庭で自分が役になっていないという思い込みの経験が積み重なって、自分に対する評価が低くなってしまうのでしょう」

ケアワークを頑張っても、自己有用感は得られない

ときにはワンオペもして、仕事に家事に子育てにと頑張る日本女性たち。むしろ、ものすごく役に立っている気もするが!?

「働く女性は増えましたが、いまだに日本の男女の賃金格差は大きいです。2021年の男性一般労働者の給与水準を100としたときの、女性の給与水準は75.2。国際的に見てもまだまだ格差がある状態です。そのため、男性がメインでお金を稼ぎ、女性がその分、子育てや家事、介護といったケアワークに対応する。ケアワークは当然するものだと思っていると、『家族のために役立っている』という有用感をもちにくいのではないでしょうか。女性だから当たり前、と考えてしまうのです」

外で仕事をすれば報酬といった目に見えるものを受け取れるから、社会や家庭への貢献度もわかりやすい。しかし、ケアワークは誰かのためになっているはずなのに、なかなか自分でもそれを自覚しにくいということだ。

「ベビーシッターが普及していないなど、欧米に比べると、日本は家事や育児を外注するということが少ない。自分の労働をお金に換算するという思考があまりないのではないでしょうか」

女性たちが、自分の可能性を否定しないことが大切

自己肯定感が低く、リーダーになる自信もない日本の女性たち。このままだと自分自身も家庭も社会も変わらない。このモヤモヤをどう解消していけばいい?

「『なぜリーダーになれないんだろう?』と日本の女性たちに聞いた時に、いちばん多かったのは『自分はそういうタイプじゃない、自分はそういうキャラではないから』という声でした。そのように、ある意味可能性を捨ててしまう女性たちの気持ちもわかります。現実問題、ビジネスでも政治でも、女性の活躍はまだまだいばらの道だからです。でも、自分で制限をかけてしまうと、何も変わりません。まずは仕事でも家事でも、おかしいと思ったことから声をあげてみるのはいかがでしょう? ひとりでするのは怖いという場合は、SNSなどで仲間を見つけるのもオススメ。あるいは、『自分が不平等な状況に置かれていることを気づいていない』という場合もあります。昨年から従業員数301人以上の企業を対象に男女賃金格差の開示が義務付けられたので、自分が勤めているあるいは身近な会社でどれだけ男女の賃金や昇給格差があるのか、チェックしてみてください。とにかくまずは、自分の可能性を否定しないこと。加えて、自分がどのような状況に置かれているのかを知ることが大切です」

後半では、日本の女性たちがもっと自分自身に満足し自信を持つために、できることを深堀りしていく。

話を聞いたのは……

長島美紀
政治学博士、国際NGOプラン・インターナショナル アドボカシーグループリーダー。早稲田大学大学院で、先進国の難民受け入れ政策のうち、FGM/C(女性性器切除)を理由に難民認定申請をする事例を研究。​​ジェンダー問題や女性の社会進出についてを中心に提言活動を展開。

Photos: Getty Images Text: Kyoko Takahashi Editor: Kyoko Muramatsu