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半導体部品のサブストレートが逼迫、2025年まで解消せずの見方も

  • 半導体不足のボトルネック、台湾の南亜電炉板株は3年で1200%上昇
  • ABFサブストレートは自動車、サーバー、PC製造に必要不可欠
Hewlett-Packard Co. (HP) Research Labs
Photographer: Ken James/

プリント基板などの製造メーカーで台湾に本社を置く南亜電路板(ナンヤPCB)は、テクノロジー業界の中でも知名度は高くない。だが、この企業の生産する部品が半導体不足のボトルネックであることがわかり、にわかに注目を浴びている。

  その部品は味の素の絶縁材「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」を使ったサブストレートで、半導体の微細な電子回路を保護し、電子機器への電力供給を可能にする。1990年代後半にパソコンやサーバーの中央演算処理装置(CPU)に採用され、スマートフォンで普及が拡大、第5世代通信規格(5G)の登場で人工知能や電動化技術向けの需要も高まっている。

  だが、ABFサブストレートは、危機的な供給不足に陥っている。ベインキャピタルのパートナー、ピーター・ハンバリー氏は、コロナ禍でパソコンやゲーム機の需要が増える中、「アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、エヌビディアなど多くの企業にとって、この大事な部品が突然、ボトルネックになってしまった」と話す。 

  事情に詳しい関係者らによれば、ABFサブストレートの供給は少なくとも2025年まで逼迫するかもしれない。こうした状況は自動車メーカーから家電メーカーまで、半導体不足に悩む全ての企業を苦しめる可能性がある。

  台湾でABFサブストレートを製造するユニミクロンのマイケル・シェン最高財務責任者(CFO)は7月の決算会見で、25年までに生産される製品のほとんどはすでに割当先が決まっていると述べた。

  ABFサブストレート製造会社の株価は強い値動きが続いている。過去3年間で1200%以上上昇したナンヤPCB株について、プレジデントキャピタルマネジメントのアナリスト、オーウェン・チェン氏は「強気」判断を維持しつつ、今月、目標株価を現状より約3割高い570台湾元に引き上げた。

Niche makers of the material have soared over the past few years
ABFサブストレートのメーカーの株価
 

  ユニミクロンや景碩科技(キンサス・インターコネクト・テクノロジー)、日本のイビデンなども総じて株価は上昇している。

急ぐ能力増強

  米インテルやAMD、エヌビディアなど主要半導体メーカーが高性能半導体を作るためにABFサブストレートは欠かせないが、供給不足を招いたのは、ABFサブストレートメーカーの慎重な投資姿勢だったという。2000年代初頭、インターネットブームでABFサブストレートは急増したが、パソコンに代わってスマートフォンが主流になる過程で大不況に苦しんだ経験があるからだ。

  だが、最近では、ABFサブストレートのメーカーも生産能力の増強に向けた投資を急ぎ始めている。ナンヤPCBの広報担当者によると、同社は22年に今年より多額の投資を行い、23年には20年比で40%の能力増強をする予定だ。  

  一方、供給不足の問題は、新型コロナウイルスの感染拡大から2年経とうとするいまでも、世界のサプライチェーンが脆弱だということを示す。トヨタ自動車や米アップルも部品不足による生産調整を強いられたが、次に何が起きるかは企業にも投資家にもほとんど見えていない。

原文:Obscure Stock’s 1,219% Rise Shows Profit and Pain of Chip Crunch(抜粋)

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