6月1日、オランダ・アムステルダムを拠点とするスケートブランド、ポップトレーディングカンパニーとバーバリーのコラボレーションによるカプセルコレクション「バーバリー&ポップトレーディングカンパニー」が発表された。コレクションの日本先行販売のために、ポップトレーディングカンパニーの共同創業者であるピーター・コークスとリック・ファン・レストが来日。ファッションキュレーターの小木“Poggy”基史が、日本独自のスケートカルチャーにインスピレーションを受けたという今回のカプセルコレクションのことや、ブランドの成り立ち、日本のお気に入りスポットなどについてインタビューをおこなった。
小木“Poggy”基史(以下、Poggy):ポップトレーディングカンパニーは、ヨーロッパのスケートブランドがマーケットでうまく表現されていないように感じたことをきっかけに始まったと聞きました。改めてスタートした経緯を教えてくれますか?
ピーター・コークス(以下、ピーター):10年前のヨーロッパのスケートボードシーンは、コンテストで優秀であること、チャンピオンであることがなにより重要で、個性やスタイルはあまり重要視されていませんでした。私たちの周りには魅力的なスケーターがたくさんいるのに、コンテストに出ないために表舞台に出てこない。そうしたスケーターたちを応援したいと思ったのがはじまりです。
リック・ファン・レスト(以下、リック):いまでは、パレスやポーラー、そして自分たちのようなブランドが台頭してきたことによって、スケートボードに対する見方も変わってきたし、スケートボードカルチャー全体が変わってきたと思う。
Poggy:トレーディングカンパニー(貿易会社)という形式を採ったのはなぜですか?
ピーター:というのも、最初はほかのスケートブランドを販売していたんです。セレクトショップであり、ディストリビューターでもあったかな。トレードとポップアップストアが私たちのおもな活動だったため、それが名前の由来になっています。
Poggy:おふたりにとって、ストリートカルチャーとはなんですか?
リック:子どものころから、そしていまでも、路上をスケートボードで滑れば、通り過ぎるビジネスマンや酔いつぶれて寝ている人たちなど、あらゆる人たちと話をすることができる。ストリートカルチャーにはそういった幅広いものが含まれています。最近はオフィスで仕事をすることが増え、街に出る時間が減ってしまいましたが。
ピーター:そうだね。ストリートにはさまざまな人がいて、スケートを通して世の中のことを学んでいった。クリエイションにおいては、小さな子どもが着ているジャケットから路上生活者が履いているスニーカーまで、あらゆるものがアイデアソースになりえます。ですから、私たちにとってのストリートカルチャーとは、まさに“ストリート”そのものです。いまのオランダはメルティングポット(人種のるつぼ)になっていて、より多くの文化が混ざり合っている。それもまた興味深いことだと思います。
Poggy:2019年のミッフィーとのコラボレーションがとても印象的だったんですけど、ミッフィーはオランダが生んだビッグキャラクターですよね。オランダ人にとってもあなたにとっても、ミッフィーとは何ですか?
リック:オランダでは、誰もが赤ん坊のころからミッフィーを持っていて、それを見ながら育つんです。男の子も女の子もね。ですから、ミッフィーはオランダの人にとって非常になじみ深いアイコンなのです。
Poggy:ポパイとのコラボレーションもありましたよね。ほかにもプロジェクトを考えているのですか?
リック:来年で創設10周年を迎えるので、特別なものを作る予定です。みんなを驚かせるような、ね。詳細はリリースを楽しみにしていてください(笑)。
Poggy:バーバリーとのコラボレーションは両者にとって大きな取り組みだったと思いますが、ふたりにとってバーバリーはどんな印象ですか?
ピーター:伝統的で、クラシックで、トレンチコートやチェックなどの象徴的なデザインを持っているブランドです。今回のコラボレーションは、ポップトレーディングカンパニーにとって、とても光栄なことです。
リック:バーバリーは、子どもからおじいさんまで誰もが知っていて、さらにみんな同じチェック柄を思い浮かべることができます。誰もが共通したデザインを挙げることができるようなブランドは、世界でもそれほど多くはないと思います。
Poggy:リカルド・ティッシ(バーバリーのチーフ・クリエイティブ・オフィサー)には会いましたか?
ピーター:彼は世界中を飛び回っているので、直接会うことはできませんでした。そのため、基本的にはプレタポルテのチームと一緒に制作を進めました。
リック:デザインは私たちがリードして進め、それをリカルドに見てもらいました。彼はすべてのデザインに目を通したうえで、グッドサインを示してくれたのです。「よし、クールだ。進めよう」とね。
Poggy:今回のコレクションでは、日本にインスピレーションを得たデザインがあったそうですね?
リック:もともと、今回のコレクションは日本限定で発売する予定だったんです。
ピーター:私たちがブランドをはじめた初期の段階から、日本のいくつかのショップが興味を持ってくれていたので、日本はポップトレーディングカンパニーにとって重要な場所でした。それをバーバリーは理解したうえで「日本限定のコレクションをやってみないか?」と、私たちに声をかけてきたのが始まりです。
リック:そこからは、日本をテーマにアイデアを広げていきました。
ピーター:日本のスケートカルチャーに注目したとき、東京のストリートでは日中にスケートをすることは難しいので、スケーターたちは夜にストリートに駆り出す文化があることを知りました。そこでひらめいたのが、「夜もスケートができるウェア」というコンセプトです。
まずはバーバリーチェックを光に反射する素材で作り、夜にスケートをしていても象徴的な模様がインパクトを放つようにしました。チェック柄がぼやけた線になっているのは、夜の都市に光る、電灯やサイネージのネオンが着想源です。夜中にスケートをしている様子を写真に収めると、シャッタースピードの関係で光が少しブレたような感じになるじゃないですか。そんなイメージです。赤いラインは、アムステルダムの赤線地区(通称「飾り窓」と呼ばれる、合法的な売春地区)にも繋がっていて、私たちのストーリーのベースになっている部分でもあります。
リック:できあがったデザインの仕上がりをバーバリーが見て、日本限定で発売する予定だったものが「これは世界で通用する」という判断となり、幸いなことに中国、イギリス、そしてオランダといった国々でリリースされることになりました。
Poggy:今回のコラボもそうですが、ポップトレーディングカンパニーのクリエイションからは、いつも洗練されたヨーロッパらしさを感じます。その点で心がけていることはありますか?
ピーター:私たちはスケートショップで働きながら、アワー レガシーやヴェイランスといった気鋭のメンズブランドも取り扱っていたので、ポップトレーディングカンパニーではスケートブランドとメンズウェアブランドのコンテクストを混ぜ合わせています。Tシャツ1枚をとっても、ポルトガル製やヨーロッパ製などの品質の良いもの、独自のカッティングのものなど、洗練された商品を作ろうと考えたのです。また、クラシックなメンズウェアにもインスピレーションを得ていています。
リック:ミッフィーや今回のコラボがそうであるように、私たちはスケートブランドの枠を超えて、異なる文脈の架け橋になろうとしています。バーバリーのような歴史あるメゾンが私たちのようなブランドに声をかけるなんて、ひと昔まえではありえないことでした。しかしいま、こうして融合しています。
Poggy:最後に、日本でのお気に入りスポットがあれば教えてください。
ピーター:日本の良いところは、魅力的なスポットがたくさんあることです。「これはいったいなんだろう?」と思うようなお店やレストランがたくさんあり、たくさんの発見が得られます。また、今回の来日では、新幹線に乗って大阪にも行こうと思っているんです。大阪には自由で気ままな人たちが住んでいて、ベルリンのようなクールな街だと聞いています。
リック:コレクション期間中、渋谷の交差点に7つのスクリーンを設置して、私たちが制作したビデオが上映される予定なので、それも楽しみのひとつです。
ピーター:そうそう。コンビニにも昨日の夜に行きました。サンドウィッチが素晴らしいですね。2日酔いの朝に食べましたが、本当においしかった。ヨーロッパであのクオリティのサンドイッチを食べようと思ったら、もっと高いお金を払わなければなりませんから(笑)。あとは日本食といったら、ラーメンが大好きなんです。おいしいラーメン屋のベスト5を教えてください!
Poggy:このあと、リストアップして送りますね(笑)。
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