FASHION / TREND & STORY

JULES TEN VALDE──白昼夢の世界へと誘う、21世紀のロマンティックスタイル【次世代ブランドを探せ!】

オランダ発のジュールス テン ヴェルデ(JULES TEN VERDE)のデビューコレクションが、3月18日(土)に東京のコム デ ギャルソン青山店で独占販売される。弱冠28歳のデザイナーが追いかける、ノスタルジックかつドリーミーなロマンスの世界にクローズアップした。
Photo: Courtesy of Jules ten Velde

ワードローブの中で最も働き者なアイテムというと、どこへでも羽織れるバイカージャケットや、長年履き込んだデニムを挙げる人が多いかもしれない。しかし、ここではあえてエプロンドレスに注目したい。13世紀以来、エプロンは主婦や商人、職人たちの衣服を、さまざまな汚れから守ってきた。一方、この機能的なアイテムにはフェティッシュな側面もあり、白いドイリーレースのそれを着たエロティックなフレンチメイドがその例だ。

アムステルダム・ファッション・インスティテュートで学んだ28歳のオランダ人デザイナー、ジュールス・テン・ヴェルデは、このエプロンが気に入っていると言う。「とても純粋で、家庭的な印象があります。料理や庭仕事など、私が好きなピュアな日常を連想させます」と話す彼は、シャイと言うわりには不敵な笑みを浮かべている。フリルで縁取られた真っ白なコットンエプロンは、自身の名を冠したジュールス テン ヴェルデ(JULES TEN VERDE)のデビューコレクションにも登場し、3月18日(土)に東京コム デ ギャルソン青山店で独占販売される。このカプセルコレクションは、デザイナーが長年興味を持っていたというイギリスの摂政時代からインスピレーションを得ており、「野原や宮殿を漂うような、私が夢見るような人物像、私がノスタルジーとロマンスを堪能できる場所」を思い描いたという。

Photo: Courtesy of Jules ten Velde
Photo: Courtesy of Jules ten Velde

ロックダウン中のアムステルダムを観察したことから始まったこのコレクションは、ボリューミーなドレスやボウタイシャツ、そしてふんわりとしたスカートと可憐なノースリーブトップを中心に構成されている。すべてのアイテムが白で統一されているのは、テン・ヴァルデがいつも完成服よりも仮縫いのトワルが好きだから。「もちろん、白はある種の無邪気さを象徴します。花嫁やデビュタントなど、ロマンティックな女性の典型を思い浮かべると、白いドレスにたどり着くのです」

ジェイン・オースティンやブロンテ姉妹の文学ファンにはたまらないネーミングも秀逸だ。ブロケード織りのボールガウンは『嵐が丘』(1939)に登場する上流階級の家族にちなんで「リントン」、肩に膨みを持たせたAラインのタフタドレスは、ギュスターヴ・フローベールによる代表作のヒロインにちなんで「ボヴァリー」と名付けられた。

Photo: Courtesy of Jules ten Velde
Photo: Courtesy of Jules ten Velde

足首にかかるほどの長さの「ベネット」ドレスは、ネックラインにゴムが入っていて、肩の部分にあしらわれた2本のストラップはそのまま後ろに垂らしたり、ホルターネックに結んだり、ウエストを引き締めたりできるようにデザインされている。「私はウエストバンドが大好きです」とテン・ヴェルデ。「なぜなら、ボリュームが生まれ、ドラマティックに仕上げられるから。それでいて、とても快適な着心地も実現できるんです」。また、シャツには紐がついており、首もとやウエストで結んだり、ルーズにしてシルエットを変えたりすることができる。

インクルーシブなサイジングは、テン・ヴェルデがデザイナーを務めるエクストリーム カシミア(EXTREME CASHMERE)に大きな影響を受けているという。サスキア・ダイクストラが2016年に設立したこのニットウェアレーベルでは、豊富なカラーバリエーションと時にセクシーなフィット、そしてワンサイズのアイテムを展開し、カシミアのフォーマルなイメージを刷新してきた。

ダイクストラは、20人いるメンバーの一人が自分と異なるスタイルを持っていることに気づいたときのことを振り返る。テン・ヴェルデはその同僚のために超ロングスリーブのクルーネックセーターを作り、彼女の名前をとって「ジュナ」と名付け、新しいベストセラーを生み出したそうだ。「彼は夢見るデザイナーですが、とてもはっきりとした方向性のある人です」とダイクストラ。「カラーカードを作るとき、ほとんど会話をしないんです。(テン・ヴァルデと仕事をするのは)すごく楽しいです。直感的に感じたことをそのまま形にするから」

Photo: Courtesy of Jules ten Velde

クオリティに徹底してこだわるダイクストラの姿勢は、テン・ヴェルデを奮い立たせるものだ。「私がエクストリーム カシミアから学んだ最大の価値観のひとつは、はっきりとしたヴィジョンがあるのなら、マーケットや業界に媚びることなく、そのヴィジョンを貫くことです。もし自分自身のために何かをやるのなら、ラディカルにやること」と彼は言う。「エクストリーム カシミアでのサスキアは、一切の妥協を許しません。私自身も、そうしたいと思っています」

そう語る彼は今、自身のブランドを小さなスケールでコンパクトに展開しながら、特別な日のためのカスタムデザインのオーダーメイドビジネスを構築していくつもりだという。「私の作品が人々に着用され、私と同じロマンスの世界を描きたいと思っている顧客を見つけたい。でも、一番大切なのは、創作を続けること。そして、自分自身に忠実であるために、責任ある現実的な方法でそれを行うことです」

Text: Ellie Pithers Adaptation: Motoko Fujita
From VOGUE.COM