成るか野村証券の営業改革、資産コンサルティング業への転機に
谷口崇子、中道敬-
4-6月が証券業からの業態進化だったと振り返れるような改革進む
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リテールのストック収入4四半期連続で増加、顧客ニーズに合わせる
「証券業から資産コンサルティング業へ」。野村ホールディングス(HD)傘下の野村証券が、リテール営業改革を急ピッチで進めている。即効性はないものの、売買手数料(コミッション)にひもづかないストック資産・収入が2020年7-9月期以降、4四半期連続で伸びるなど明るい兆しも見える。
「後から振り返って、この4-6月期が業態進化の転機だったと言えるようにしたい」。改革仕掛け人の一人である、野村証の新井聡副社長は9日のブルームバーグとのインタビューでこう述べ、目下進めている取り組みに自信を示した。
同四半期のストック収入は過去最高水準の252億円だった。野村HDが今回のリテール改革にかじを切ったのは約2年半前。投資家向け説明会で、顧客と営業担当者のミスマッチ解消を目指し全国的な担当替えを行うと宣言した。
一口に顧客と言っても事業オーナーや富裕層、準富裕層など属性はさまざま。新井氏は「担当者の適性や能力を見極め、顧客ニーズに合わせる作業を行った」と振り返る。リテール口座のうち担当者付きの約250万口座を精査した結果、6割が担当替えとなった。21年4月からは多様なニーズを持つ事業オーナー向けに複数で担当するチーム制を導入するなど、新たな施策を始めた。
一方で、実績連動給が選択できるFA制度を3月末で廃止した。新井氏は、これまで本社が示した数値目標の達成に向け努力する歴史を繰り返してきたとし「上から降りてきた数字ではなく、目の前の顧客のニーズに合わせた商品を提供し、結果的に収入や預かり資産が増えることを目指す」と説明した。
「かなり難しいことを現場に要求している」と苦笑しつつも、顧客サービスの深化により「今までの延長線上にないストック収入の大幅な増加が見込めるのでは」と期待を示した。
ブルームバーグ・インテリジェンスの田村晋一アナリストは「日本ではストック資産の手数料が安く、残高を大きく積み上げてからの勝負となるが、非常に時間がかかる」と指摘。野村HDはこれまで何度も営業改革に挑戦したが、マーケットに左右される収益構造から脱却できていないとの見方を示した上で、「高い運用力を身に着けて高い手数料率を設定するなど、持続可能な体制を作っていけるのかに注目したい」と述べた。