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サンフランシスコの「フロス消える」、高級住宅物件に買い手現れず

  • ローン金利上昇で住宅所有コストは上昇基調にある
  • 地元経済はハイテク業界人員削減や株安、暗号資産値下がりで揺らぐ

ステンドグラスの窓や手彫りのドアを備え、丘の中腹からサンフラシスコ市街中心部の素晴らしい景観を臨む宮殿のような住宅が4月、950万ドル(約12億8300万円)で売りに出された。しかし所有者は6月、700万ドルに値下げした。

  1932年に建てられた5ベッドルームのこの住宅は先週、450万ドルで競売にかけられたが、買い手は現れなかった。

San Francisco home
4月に950万ドルで売り出されたサンフランシスコの住宅
Source: Coldwell Banker

  こうした状況はハイテク産業に活気づけられ、以前から超富裕層や住宅価格のとめどない上昇の象徴だったサンフランシスコにとって顕著な変化だ。米住宅市場は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期の熱狂から冷めつつあり、サンフランシスコは最も打撃の大きい地域の一つだ。

急失速する米住宅市場、売り手に不意打ち-価格引き下げ「うんざり」

  ローン金利上昇で住宅所有コストは上昇基調にあり、全米で最も住宅価格の高いこの地域に住むために高い金額を支払っても構わない人や、それができる人が減っている。地元の豊かな経済はハイテク業界の人員削減や株安、暗号資産(仮想通貨)価格急落で揺らいでいる。

  不動産市場は既に痛手を受けている。不動産サイト運営レッドフィンによると、サンフランシスコ大都市圏の住宅価格中央値は6月に前年同月比0.5%下落し158万ドルだった。価格はなお全米で最高水準にあるが、全米100の大都市圏で唯一、住宅が値下がりしている。

  宮殿のような住宅の販売を担当したコールドウェル・バンカー・リアルティーのスティーブ・ギャラハー氏は「かつての活況は失われた」とし、「1000万ドルの住宅を現金で購入するような大口の買い手でさえ二の足を踏んでいる。経済や金利、株式市場、インフレが影を落としている」と指摘した。

Lone Loser

San Francisco was the only major US city where home prices fell in June

Source: Redfin Corp.

  リモートワークが普及し、ツイッターやセールスフォースなどIT企業がオフィス面積を縮小する中、サンフランシスコ経済はかねてコロナ禍からの回復に苦慮している。オフィスワーカーに頼っていたカフェやレストラン、ドラッグストアが閉店し、賃貸物件の張り紙が貼られている。ホームレスの存在や一部地域における屋外での薬物使用、治安への懸念は人々を呼び戻す助けにならない。

  今年に入るまで多くのサンフランシスコ市民は低金利に支えられた経済の資産効果を実感していた。レッドフィンによると、スタートアップが評価額10億ドルを超えるユニコーン入りする状況にあって、ハイテク分野の働き手流入で市内の大部分が様変わりし、住宅価格もこの10年で約120%上昇した。

  しかし一部の住民はパンデミック期にこうした高い価格から逃れ、ハイテク企業は国内の他地域での採用にオープンな方針または採用ペースを完全に落とす姿勢を示唆した。サンフランシスコの起業文化を資金面で支援したベンチャーキャピタリストはスタンフォード大学に近いサンドヒルロードに拠点を移したり、クラウドを利用した働き方に移行した。リセッション(景気後退)の見通しも閉塞(へいそく)感に拍車を掛けた。

  カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスのケン・ローゼン名誉教授は「大半の人は現金化しなかったが、気分は上向いた」とし、「フロス(小さな泡)は消え、今は気分が沈んでいる」と語った。

原題:

San Francisco’s ‘Froth Is Gone’ as Wealth Fades, Housing Slumps(抜粋)

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