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ドイツで製造業が大脱出のリスク、エネルギー価格高騰で悲鳴

  • ドイツの電力価格、2カ月で2倍余りに上昇
  • 「どこよりも急激」なエネルギー価格上昇、欧州の工業分布に変化も

ドイツでは毎日のように高値を更新する電力価格を吸収しようと、自動車部品や化学、鉄鋼メーカーが奮闘している。こうした製造業がエネルギー価格の高騰に音を上げ、国外に拠点を移すことを決断するリスクがある。

  ドイツの電気・ガス価格はわずか2カ月で2倍余りに上昇。欧州の指標である1年先の電力価格はメガワット時当たり540ユーロ(約7万4000円)を超えた。2年前の同価格は40ユーロに過ぎなかった。

  自動車や航空宇宙、家電業界向けにシリコーン部品を製造するBIWイゾリアーシュトッフェのラルフ・シュトッフェルズ最高経営責任者(CEO)は、「ドイツのエネルギーインフレは、他のどこよりもはるかに急激だ」と指摘。「ドイツ経済で段階的に脱工業化が進むのではないかと懸念している」と述べた。

A Bold Bet on Germany’s Industrial Future
ドイツ・マールの化学工業団地(2019年3月)
Photographer: Wolfram Schroll/Bloomberg

  ドイツは発電や製造業の燃料としてロシアの天然ガスに依存していたが、ロシアが供給を絞ったため前例のない困難に直面している。需給ひっ迫の深刻化でエネルギー価格は持続的に上昇する様相を一層強めている。欧州のガス先物は18日、期近物の清算値が過去最高のメガワット時当たり241ユーロで決まった。これは例年のこの時期に比べ、約11倍高い水準だ。

  ドイツ政府は家計に対する値上がりをある程度抑えているものの、企業に保護はなく、多くはコスト上昇を顧客に転嫁するか、操業を止めることになる見通しだ。

  27カ国に工場を持つ世界2位の化学メーカー、エボニック・インダストリーズの広報担当者、マティアス・ルーシュ氏は「国際的に競争する多くのエネルギー集約型企業にとって、価格が重い負担となっている」と述べた。

  エボニックはドイツ工場で使用する天然ガスの最大40%を液化石油ガスと石炭で代替する準備を進め、コスト上昇分の一部は顧客に転嫁する予定だ。

  同社はドイツ国外に移転する計画はないと広報担当者は説明。だが、産業分野でのドイツの地位低下を示す証拠は見られ始めている。オックスフォード・エコノミクスが分析した政府データによると、今年1-6月の同国の化学品輸入量は前年同期比で約27%増加。一方で6月の化学品生産は昨年12月に比べおよそ8%減少した。

Germany's benchmark price passed 500 euros this week for the first time
 
 

 

原題:

Germany Risks a Factory Exodus as Energy Prices Bite Hard(抜粋)

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