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宇宙ロボットスタートアップのGITAI、米国事業拡大へ40億円調達

  • GITAIは、ロボットアームやローバーで人件費削減を目指す
  • 日本の宇宙産業市場限定的なため米国に進出、現地で雇用拡充へ

宇宙ロボット開発を手掛ける日本のスタートアップ、GITAIの中ノ瀬翔最高経営責任者(CEO)は、世界最大の宇宙産業市場が集積する米国での事業拡大に軸足を移し、宇宙空間で作業する汎用ロボットの運用コスト削減を目指す意向を明らかにした。米国でエンジニアらを採用して開発・製造体制を拡充、一段と安価で安全なロボットの開発・製造を急ぐ。

  中ノ瀬氏は29日のインタビューで、米国で事業を拡大する理由について、日本の宇宙産業市場が限られていることや、米国が世界最大の宇宙産業市場の一つであることを挙げた。

  米資産家のイーロン・マスク氏やジェフ・ベゾス氏が宇宙開発に取り組む中、中ノ瀬氏は人件費に着目している。人間が宇宙空間で機械を組み立てたり検査したりするのは、リスクが高過ぎるほか、現在使用されている機材の価格は非常に高いと中ノ瀬氏は考えている。

  米スペースXとブルーオリジンが宇宙での輸送に関する課題を急速に解決しつつあることで、「ボトルネックは輸送コストから運用コストに変わった」と、中ノ瀬氏は指摘。GITAIのロボットアームとローバーは、安全で安価な労働力を提供し、運用コストを「100倍」削減することができると語った。

  GITAIのロボットアームとローバーは、ソーラーパネルの設置から溶接まで、日常的な建設作業を遠隔操作で行うことができるほか、機器の点検やメンテナンス、組み立て作業も可能。宇宙で成功するためには、放射線被ばくに耐え、できるだけ効率的に作業できることも必要だ。

  米航空宇宙局(NASA)が民間企業への業務委託を進める中、世界中の宇宙関連企業が米国に集まってきている。NASAは、将来的には宇宙船が人間や科学機器を月面に運び、希少金属などのデータを収集することを期待している。

  GITAIは、宇宙での建設作業や機器の維持活動が増える中で、より能力が高く価格が安いロボットシステムを開発するため、中ノ瀬氏が2016年に創業。21年には国際宇宙ステーション(ISS)内でロボットによる技術実証実験に成功した。今年中にISS船外での技術実証を予定している。22年には米国法人GITAI USAが同国でのロボット開発・製造を行う拠点としてロサンゼルスにオフィスを開設した。

  今月24日には、第三者割当増資で40億円を調達したと発表。第三者割当増資はグローバル・ブレインやDCIベンチャー・グロース・ファンド、第一生命保険などが引き受けた。調達した資金は、月面ロボットローバーやロボットアームの技術成熟度向上や米国での製造施設の拡大、雇用の拡充に充てる。

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