NBAコーチに学ぶ「燃え尽きない」ためにできること

成功への道の最大の壁となるバーンアウト。
Westend61

ゴールに到達するためには、設定した課題をクリアしていくのはもちろんだが、燃え尽きないようにするマインドセットも重要となる。燃え尽きてしてしまうと、パフォーマンスに影響するだけでなく、クリエイティビティも失われ、問題を解決する能力も落ちてしまう。バーンアウト(燃え尽き症候群)は目標到達の最大の壁と言っていい。

NBAパフォーマンスコーチのアラン・ステインは、長年、プロアスリートたちのストレスやバーンアウト問題を支えてきた人物で、NBA業界ではバーンアウト指導者として知られている。ケビン・デュラント、ステフィン・カリー、カイリー・アービングなど、NBAのトップ選手たちもステインの指導を受けたことがある。

ステインのメソッドは、メンタルや感情の回復に軸をおいており、スポーツだけでなく仕事や日常生活にも当てはめて活用できるものだ。ステインはMel Magazineでのインタビューで「レブロンが試合やシーズンに向けて準備するのと、一般の人が何かに向かって気持ちを整えるのには、じつはいくつも共通点がある」と語っている。自身のコーチングメソッドをまとめた本『Sustain Your Game(未邦訳)』も出版しているステインによる、バーンアウト対策をみていこう。

レブロン・ジェームズ(右)とケビン・デュラント

Getty Images

まずは地道に基礎を作る

ステインが最初に頭に叩き込むべきだというのが、ゴールは一朝一夕でたどり着けるものではない、という事実だ。目標達成には、まず基礎を作り、その上に地道にブロックを積んでいくプロセスが必要であり、それを理解し受け入れることがスタート地点だという。時間がかかっても、各ステップを飛ばすことはできない。

スポーツでも日常でも、日々の練習、健康的な食事、十分な睡眠など、体を作るために必要不可欠な基本を忘れてはいけない。

ゴール以外にも目を向ける

過程は結果と同等に重要とよく言われるが、これはゴールだけでなく今の状況を見つめるべきということだ。今いる場所、こなしているステップの必要性と利点をしっかりと理解することによって、ゴール達成時の満足感が大きくなるのはもちろん、たとえ思い通りにいかないことがあっても、フラストレーションを軽減できる。

ゴールのヴィジョンを明確に持つのは素晴らしいが、そのためには何が必要かを理解、実行しないと達成はない。成功のヴィジョンに囚われ、今のプロセスを見失うと、不満ばかりがつのりパフォーマンスの邪魔になってしまう。

他者からは見えない時間も重要

他者からは見えない時間、NBA選手でいうと、コートの外での過ごし方も考えてみること。表舞台での成功は、裏での努力=見えない時間があってこそだ。読書や熱中できる趣味、ジムでのワークアウトの時間など、オフの時間も心と体が健やかでいるためにできることを心がけよう。

謙遜と自信をバランスよく

自信をもつことは、アイディアを広げたり、何かを売り込んだりするうえで非常に役に立つ。いっぽうで、謙虚さも忘れてはいけない。他者からの指摘やフィードバックを受け入れることで、自分のミスに気づくことができ、結果、自信が失われることもない。自信と謙虚はセットで考えよう。

気持ちを切り替える

ステインは、インタビューの中で「CEOにはオフシーズンがない」と語っている。つねにCEOでいることを求められるため、気持ちを仕事から解放する時間をもてず、バーンアウトのリスクが高まってしまうのだという。バケーションを楽しむ時間、頭を休めリカバリーさせる時間など、計画的にオフを作るようにしよう。

問題と自分の状況を認識する

難題であればあるほどやりがいがあるという人もいるが、バーンアウトを見ないふりして進んでも状況は悪くなるだけだ。難題に立ち向かうことによって、ゴールに早くたどりつけるわけではない。

自分の状況(体やメンタルの不調)を見極め、それを認めること。不調を弱さと考えてはいけない。体は正直なので、「休め」「助けを求めろ」という体からのメッセージを無視するのは危険だ。耳を傾けてこそ、すべてのコントロールを失う前に舵を取り直すことができるのだ。

FROM: GQ.MX Adapted by Soko


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