Glam Dialogue──YOSHIKIと小木"Poggy"基史が語るファッションと音楽シーンの関係

日本を代表するアーティストYOSHIKIと、ファッション・キュレーターの小木"Poggy"基史の対談が実現。壁を壊すことによって世界へと突き進んだYOSHIKIの目に、現在の日本のファッション&ユースカルチャーはどう映るのだろうか。

YOSHIKIさんがプロデュースするHuluのオーディション番組『YOSHIKI SUPERSTAR PROJECT X』に、Poggyさんはゲスト審査員として出演。

studio iF katsuhiro iwahashi

小木〝Poggy 基史(以下Poggy) まず音楽シーンについてお訊きします。カニエ・ウェストは、いわゆる〝ダボダボ〟なスタイルをスタイリッシュに変えたり、ダフト・パンクをサンプリングするなど、楽曲にエレクトロミュージックを取り入れたりして、ヒップホップを大衆化したと思うんです。YOSHIKIさんは80年代から90年代、いわゆるヴィジュアル系と呼ばれるヘヴィメタ的なロッカーとして活躍されていましたが、当時そうしたジャンルは一般の人には馴染みにくいコアなものでした。しかし、今では市民権を獲得しています。最初こそアンダーグラウンドな存在だったけれども、今はトレンドにさえなっているという点で、ヒップホップの変化に通ずるものがあると思うんです。

YOSHIKI 僕がいつも思っているのは、音楽やファッションの「トレンド」の定義ってなんだろう?ということです。僕が若いころ、ヘヴィメタルは世間的にはマイナーでしたが、僕のなかではパンクロックと並ぶ教科書的なものでした。トレンドとはつまり、ひとつのレールが敷かれていて、そこをみんなで進むようなことなのでしょうけど、当時の僕はそのレールから脱線して、レール自体をなくそうとしていたのかもしれません。僕の音楽への興味はそういったパンク精神から始まったのですが、そこからさらに、デヴィッド・ボウイやセックス・ピストルズなどの音楽とファッションにも影響を受けました。そうやって、いろんな要素がごちゃ混ぜになって、「ヴィジュアル系」と呼ばれるものになっていったのかなと思います。だから、ヴィジュアル系というのは音楽のジャンルというよりも、カルチャーに近いのかもしれません。そういったカルチャーがなんとなく自分のなかに存在していて、そこにいろんな人が集まって今の形になったのではないでしょうか。

Poggy 当時、YOSHIKIさんがされていたような中性的な格好はすごく珍しかったと思います。いまでは男性のメイクもネイルも当たり前になりました。

YOSHIKI 僕が10代の時は、金髪でメイクをしていると白い目で見られましたが、僕的にはそれが快感でもあったんです。快感でしたし、こういう〝壁〟があるんだったら、それをぶち壊してやろうと楽しんでもいました。自分の場合、超ポジティブ思考なので、そういったネガティビティを常に前向きな力に変えることができました。現在はそういった壁が昔と比べたら低くなっていると思うのですが、それがいいことなのか悪いことなのかはわからない。壁が低くなったことで、今度は何に向かって戦えばいいんだろう、と悩んでしまうこともあるのかもしれません。

Poggy 日本はファッションに関してはすごく充実していて、たとえばシュプリームは、本国アメリカには5店舗で、日本には6店舗ある。それに、日本に貴重なヴィンテージが集まる傾向もあります。国内で成功できそうな土壌があるぶん、海外で戦おうとするデザイナーがなかなか生まれないのかもしれません。ファッションと音楽で畑は違いますが、YOSHIKIさんは日本で成功したにもかかわらずいち早く海外に移って、いまも挑戦をし続けていますよね。

YOSHIKI 僕にとっていちばん大事なことは、「音楽が好き」という気持ちでした。だから、楽曲を作って演奏をする以上は多くの人に聴いてもらいたい。そうなると必然的にマーケットは世界が基準になるわけです。だから、日本で色々やって成功した時に「海外へ行こう」と思ったのは、僕にとって自然な流れでした。

Poggy ご自身がプロデューサーを務められているオーディション番組『YOSHIKI SUPERSTAR PROJECT X』は、毎回強烈なキャラクターが次々と登場して話題になっています。若い世代と接して、何か感じるものはありますか?

YOSHIKI 刺激は受けていますね。時おり、審査をしている側というよりも、自分が審査をされているような気持ちになるんです。でもこれは、彼らがジェネレーションZだから特別な才能をもっていて、それで特別な才能をもっているから刺激を受けている、というわけではありません。人って、職業やジャンル、世代、国籍などの壁を作って、そこに相手のイメージを当てはめがちじゃないですか。でもその壁を取り払って考えた時に、同じ人間同士なわけですから、当然いろんな刺激を受けていることに気がつくわけです。これは僕にとってもすごく貴重な経験になっています。

YOSHIKI 's Produce!

YOSHIKI SUPERSTAR PROJECT X

「音楽界のカリスマYOSHIKI×世界基準のスペシャリスト」がワールドスターを発掘する、音楽史に残る前代未聞の無敵ボーイズグループ・オーディション番組。

YOSHIKIMONO

日本の伝統文化である着物を世界に紹介したいという強い信念のもと、約10年前にスタート。YOSHIKIが表現する唯一無二の世界観に、世界中が注目している。

Y by YOSHIKI

「Y by YOSHIKI」はYOSHIKIと、米カリフォルニア・ナパ・ヴァレーのワイン醸造家の4代目、ロブ・モンダヴィJr.とのコラボから生まれたワイン。ポメリー社との協業による初のシャンパーニュもリリース。

studio iF katsuhiro iwahashi

YOSHIKI

作詞家、作曲家

「X JAPAN」のリーダーとしてピアノ、ドラムを担当。これまでに天皇陛下御即位十年記念式典の奉祝曲、愛知万博公式イメージソング、ハリウッド映画のテーマソング、そして世界最高峰の米ゴールデングローブ賞の公式テーマソングを作曲するなどグローバルに活動している。

小木"Poggy"基史

ファッション・キュレーター

1976年生まれ、北海道札幌市出身。1997年、ユナイテッドアローズに入社。2006年にリカー、ウーマン&ティアーズ、2010年にユナイテッドアローズ&サンズを立ち上げる。2018年に独立。渋谷パルコ内の2Gのファッションディレクターなどを務めている。

PHOTOGRAPHS BY TAKUYA SHIRASAWA

WORDS BY KEI OSAWA

お詫びと訂正

『GQ JAPAN』10月号の39ページにてシュプリームの店舗数に誤りがありました。誌面では3店舗と記載しましたが、正しくは5店舗です。読者の皆様ならびに関係各位にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びして訂正いたします。