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好きな仕事が鬱の元凶に?心をヘルシーに保つ、3つの仕事の流儀とは【ヴォーグなメンタルヘルス塾】

大好きな仕事が、いつの間にかメンタル不調の元凶になっていた。そんなときは、仕事の量と質、人間関係に改善点があるか順番にチェックをしてみよう。自分自身を振り返れる3つのポイントを伝授。

心が鬱っぽい、仕事に行きたくないと思った時に今日からできることとは?

Photo: #THURSDAYSCHILD x TRUNK ARCHIVE / ANNIE LAI

休日は元気なのに、仕事となると急に気分が塞ぐ……。仕事を主な原因とするメンタル不調を疑ったら、仕事の量、質、人間関係を見直してみて、と尾林先生はアドバイス。「この3つを総合的に判断して、工夫や改善の余地があったり、周囲のサポートが得られそうなら、状況は好転する可能性があります。もし改善が望めないなら、異動や転職も視野に入れて。そして、専門家の診察を受けて心に症状が出ているなら、まずは休むことも必須です」

会社を辞めたくなる原因で多いのが職場の人間関係、といわれる。3つのなかでも、特に人間関係を原因にメンタルが壊れそう、という読者は多いのではないだろうか。異動や転職をすれば解決するかもしれないけれど、現実はそんなに簡単にいかないし、一刻も早く何とかしたい! 「 苦手な人となるべく接点を持たないようにするのが鉄則」と尾林先生は話すが、上司や部下がモンスター社員の場合はどうすればいい? 

「 まずは、一対一で戦うのを避けること。モンスターといわれている人たちって、こちらからの抵抗や切り返しが大好物。倍返しをされるだけなので、どうしても戦う必要があるときは、信頼できる上司や人事、あるいは産業医などに相談するなどして、会社を巻きこみましょう。正論をぶつけるのも、心を割って話そうとする努力もNG。自分は変えられるけれど他人は変えられないというのが大前提で、そういう努力にはケチをつけられるだけです」。

そして、自分の心を守るために今すぐできることとして、“相手を拝み倒して見下す”という必殺技があるそう。「心の中でバカヤローと叫ぶのもいいのですが、そういう刃物を振り回すと、自分の気持ちが貧しくなりがち。『Aさん、また爆発いたしました。本当にもう手の施しようもない残念な方であります。誰からも愛されず、さぞ貧しい気持ちでいらっしゃることでしょう。心中お察し申し上げます』と、丁寧な言葉で見下すんです。そうすると、自分の人格を保ちながらディスれ、しかも拝んでいるうちに本当に相手が気の毒に思えてきたりしてスッキリしますよ」

1. 月に45時間、100時間の残業をベンチマークに

まずは、長時間労働に陥っていないかをチェック。「どのくらいの労働時間に耐えられるかは個人差があるので、何時間を超えたらメンタル不調になります、とはいえません」。とはいえ、基準にできる数字が2つあるという。1つ目は、労働基準法により定められている、時間外労働の上限“45時間”。「残業が月に45時間を超えると不調が出る人もいるので、1つの目安に。また、自分は問題なくても同僚や部下は体調不良になるというケースもあるので、周りに気を配ることを忘れずに」。2つ目は、“100時間”。「個人差があるとしても、100時間を超えるとほとんどの人は体調を崩します。今月は100時間以上残業してしまったというときは、翌月の残業時間を抑えて」

2. Will・Can・Mustでキャリアの棚卸しを

次は、仕事の質、つまりやりがいを持てているかを確認しよう。同じタスクでも、上司から押し付けられて仕方なくするのと、楽しんでするのでは、メンタルに及ぼす影響は大きく違う。また、楽しくない仕事でも、修業期間だと思って我慢できるケースもあるだろう。「Will──したいこと、Can──できること、Must──しなければならないことの3つに仕事を分けてみるのがおすすめ。特に、Will を見失わないこと、色褪せないようにすることがメンタルを保つためには大切です。Willと今の仕事がミスマッチなまま無理をすると、たとえ今は何とかやり過ごせても、どんどん辛くなります。場合によっては、異動や転職、起業、学び直しなど、キャリアを再構築することも考えてみましょう」

3. 人間関係の悩みをひとりで溜め込まない

最後は、上司や同僚、部下、取引先といった、人間関係がスムーズにいっているかどうかを見直そう。「自分が何か困ったときに、サポートしたり温かい言葉をかけてくれる人がいるか? 人とのやりとりのなかで摩耗していないか? をチェック。苦手な人が近くにいて配置換えが難しいなら、あと1年くらいは頑張って今の職場で得られる経験を最大限取り込み、異動や転職をする方法も。また、『上司にこんな嫌なことを言われて』と同僚に話すなど、言語化して自分の状況を客観視し、感情を出し切ることも忘れずに。『自分の状況は他の人から見ても良くない。自分は悪いストレスに晒されているんだ』と認識でき、ただ耐えることが対処法ではないと気づけます」

話を聞いたのは……
尾林誉史
精神科医・産業医、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷院長。マスコミ業界から産業医にキャリアチェンジ。産業医およびカウンセリング業務を務めるほか、メディアでも積極的に発信。東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。

Text: Kyoko Takahashi Editor: Kyoko Muramatsu