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人気TikTokerのノア・ベックが、ジェンダーレスな下着ブランドを立ち上げた理由【若手デザイナー連載】

TikTokスターのノア・ベックが「すべての人のために」をコンセプトに掲げたジェンダーレスなアンダーウェアレーベル、アイフィス(IPHIS)をローンチ。ブランド立ち上げに至った経緯、これからのヴィジョンについて、本人に話を訊いた。
Photo: Courtesy of Iphis

人気TikTokerのノア・ベックは、3300万人を超えるフォロワーたちの前で半裸姿でいることに何ら抵抗はない。無論、彼をここまでのスターに押し上げたのは、鍛え上げられた上半身を映した動画の数々だと言っても過言ではないだろう。そして、そんな彼の腰パンからのぞく下着こそが、この6月にローンチしたジェンダーレスなアンダーウェアレーベル、アイフィス(IPHIS)のインスピレーション源だ。

「歩くカルバン クラインCALVIN KLEINの広告塔になるのをやめて、自分がデザインしたものを着たらどうだろう? と思うようになったんです」と話すベックは、「すべての人のために」をコンセプトに掲げたブリーフ、ボクサーブリーフ、タンガの3種類のアンダーウェアを発表する。この3つのスタイルは、豊富なカラーバリエーションとそれぞれ異なるロゴをフィーチャーした3種類のウエストバンド「Icon」「Heritage」「Classic」で展開し、価格は18ドルから22ドルとお手頃だ。ニューヨークを拠点とするReal Underwear社と提携し、彼はすべてのスタイルの製作を指揮した。

Photo: Courtesy of Iphis

ファッション界にしっかりと足を踏み入れ、フロントローの常連になっているベックにとって、自身のブランドをスタートするというのも、ジェンダーレスな下着をデザインするというのもごく自然な流れだった。男性用セクシーランジェリーを展開するリーク エヌワイシー(LEAK NYC)や、ジェンダーレスフレグランスを手がけるボーイ スメルズ(BOY SMELLS)、ユニセックス生理用下着を提案するピラミッド セブン(PYRAMID SEVEN)などのレーベルはインナーウェアに革命を起こし、さまざまな体型の人が着用できるスタイルをすでに生み出しているが、彼はこういった動きをもっと見ていきたいと考えているようだ。

「ジェンダーニュートラルな下着をデザインするのは難しいため、これまでにあまりなかったのだと思います」と振り返る彼は、数え切れないほどのフィッティングを行い、モデルたちに着心地やフィット感などのフィードバックをもらったという。こうして最高の履き心地を追求し、試行錯誤を繰り返しながら改良を加えていった。

Photo: Courtesy of Iphis

ジェンダーレスなアプローチはファッション界でも一般的になってきており、メンズとウィメンズに分けたランウェイショーを廃止し、両者を融合させたコレクションを発表するレーベルも増えている。ベック自身もまた、性別にとらわれることなくファッションを楽しんでいるそうで、それは下着にも応用できると彼は言う。

「服に性別は関係ないと思っています。その服を着ることで気分が上がるなら、着ればいい。僕たちが目指しているのは、みんなが自分らしく、好きなものを身につけることができるコミュニティを育むこと。僕たちがデザインした下着を身につけることで、新たな自信につなげてほしい」

Photo: Courtesy of Iphis

まずは下着からスタートし、今後はさらに多くのスタイルを拡大していく予定だというベック。この先の展開も視野に入れており、「これからがすごく楽しみ」と野心をのぞかせる。「今は下着だけですが、いずれはもっと手を広げたいですね。次は部屋着に挑戦してみたい」

また、彼は自分がこのブランドのヴィジョンに完全にコミットしていることをファンたちにも知ってもらいたいと考えており、「ただの(ファンたちに向けた)グッズのように感じてほしくない」とも続けた。「仕掛け人が僕だからとかいう理由ではなく、僕たちが作った製品、僕たちが築いたコミュニティに共感できる人たちに買ってほしいと思います」

Text: Christian Allaire Adaptation: Motoko Fujita
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